学習トップ理由で解く 柔道整復師病理学概論 ▸ §5 循環障害 / QJ32A121

理由で解く 柔道整復師

QJ32A121 病理学概論

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午前 問121
問題
うっ血で正しいのはどれか。
選択肢
1 肺うっ血は右心不全によって起こる。
2 下肢のうっ血では下肢静脈瘤が生じやすい。
3 門脈圧亢進症では腹水より胸水をきたしやすい。
4 うっ血肝では小葉中心部が黄色、辺縁部が暗赤色を呈する。
解答
正解2(下肢のうっ血では下肢静脈瘤が生じやすい。)
解説

うっ血は静脈血の流れ出しが妨げられて末梢に血液が滞る状態である。立位で静脈圧が高い下肢では、弁の機能不全と相まって静脈瘤が生じやすい。

充血が動脈側からの流入増加(鮮紅色で温かい)であるのに対し、うっ血は静脈側の還流障害であり、局所は暗赤色(チアノーゼ)を呈して冷たく、浮腫を伴う。原因は心不全、静脈の圧迫や血栓による閉塞、静脈弁の機能不全などである。心臓が原因の場合、どちら側のポンプが弱ったかで滞る場所が決まる。左心不全なら左房・肺静脈側に圧がかかって肺うっ血・肺水腫となり、右心不全なら体循環側が渋滞して頸静脈怒張、肝腫大、下腿浮腫、腹水を生じる。うっ血が長引くと、その臓器は低酸素と線維化により機能を落としていく。

✓ 2. 正しい
下肢のうっ血では下肢静脈瘤が生じやすい。
下肢は立位で静脈圧が最も高くなる部位であり、還流が妨げられて圧が上がると静脈弁が閉じきれなくなり、血液が逆流して表在静脈が拡張・蛇行する。長時間の立ち仕事、妊娠、肥満、加齢が誘因となる。だるさやこむら返り、うっ滞性皮膚炎、色素沈着、進行例では下腿潰瘍をきたす。対応としては、下肢挙上、弾性ストッキングの着用、足関節を反復して動かして下腿三頭筋のポンプ作用を働かせることを勧め、皮膚障害や急な片側の腫脹があれば医療機関受診につなげる。
✗ 1. 誤り
肺うっ血は右心不全によって起こる。
肺うっ血を起こすのは左心不全である。左室が血液を送り出せないと左房圧、続いて肺静脈圧が上がり、肺胞へ水がしみ出す。労作時呼吸困難、起坐呼吸、発作性夜間呼吸困難、泡沫状の血痰がみられ、喀痰中にはヘモジデリンを貪食したマクロファージ(心不全細胞)が出現する。右心不全では体循環側にうっ血が生じる。
✗ 3. 誤り
門脈圧亢進症では腹水より胸水をきたしやすい。
門脈圧亢進症では、腸間膜・腹膜の毛細血管圧上昇に肝硬変による低アルブミン血症が加わるため、まず腹水が主体となる。あわせて食道・胃静脈瘤、腹壁皮下静脈の怒張(メデューサの頭)、痔核といった側副血行路の発達と、脾腫による汎血球減少がみられる。胸水が主体になるという記述は当てはまらない。
✗ 4. 誤り
うっ血肝では小葉中心部が黄色、辺縁部が暗赤色を呈する。
色の配置が入れ替わっている。この選択肢は前半の記述で判断する。肝小葉では中心静脈の周囲(小葉中心部)に血液が滞るため、そこが暗赤色になり、酸素の届きやすい周辺部は相対的に淡く、しばしば脂肪変性を伴って黄色みを帯びる。この赤と黄色のまだら模様が香辛料のニクズクの割面に似ることから、ニクズク肝(肉荳蔲肝)と呼ばれる。主に右心不全に伴って生じる。
ポイント
  • うっ血=静脈血の流出障害。暗赤色・冷感・浮腫を伴う。充血(動脈側の流入増加、鮮紅色・熱感)と対で覚える。
  • 左心不全 → 肺うっ血・肺水腫(起坐呼吸、心不全細胞)。右心不全 → 頸静脈怒張、肝腫大、下腿浮腫、腹水。
  • うっ血肝=小葉中心部が暗赤色、周辺部が黄色調のニクズク肝。
  • 門脈圧亢進症では腹水が主体。食道・胃静脈瘤、メデューサの頭、脾腫を伴う。
  • 下肢静脈瘤は静脈弁不全による逆流が本態。弾性ストッキング、下肢挙上、足関節運動による筋ポンプの活用が対応の基本。
比較表
うっ血の部位主な原因特徴的な所見
左心不全、僧帽弁狭窄症起坐呼吸、発作性夜間呼吸困難、心不全細胞
右心不全ニクズク肝(中心部が暗赤色、周辺部が黄色)、肝腫大
門脈系肝硬変などの門脈圧亢進腹水、食道・胃静脈瘤、メデューサの頭、脾腫
下肢静脈弁不全、深部静脈血栓症、長時間の立位下肢静脈瘤、浮腫、色素沈着、うっ滞性潰瘍
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