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理由で解く 柔道整復師

QJ32A122 病理学概論

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午前 問122
問題
高血圧の合併症で誤っているのはどれか。
選択肢
1 脳出血
2 心筋過形成
3 腎糸球体硬化
4 動脈硬化進行
解答
正解2(心筋過形成)
解説

高血圧で心臓に起こるのは、心筋細胞が一つひとつ太くなる「肥大」であって、細胞の数が増える「過形成」ではない。したがって心筋過形成が誤りである。

細胞は増殖能によって分類され、心筋細胞・骨格筋細胞・神経細胞は分裂能をほとんど持たない永久細胞である。負荷がかかっても数を増やせないので、個々の細胞が太く大きくなる肥大という形で適応する。高血圧では左室が高い後負荷に逆らって血液を送り出すため求心性肥大を起こし、はじめは代償できても、やがて壁が硬くなって拡張障害を生じ、冠血流の需給バランスも崩れて心不全へ進む。血管側では細動脈硬化と粥状硬化が促進され、脳では被殻や視床を灌流する細い穿通枝が破れて脳出血を起こし、腎では細動脈硬化から糸球体が硬化して腎硬化症となる。眼底の高血圧性変化や大動脈解離も同じ流れで理解できる。血圧を下げることがこれらの合併症を減らす最も確実な手段であり、受療と生活習慣の見直しを促すことが実践面での要点となる。

✓ 2. 誤り(これが答え)
心筋過形成
心筋細胞は永久細胞であり分裂して数を増やすことがほとんどできないため、高血圧に対する適応は過形成ではなく肥大である。実際に高血圧で生じるのは左室求心性肥大で、心電図の左室高電位や心エコーでの壁厚増加として現れる。この用語の取り違えが本問の狙いである。
✗ 1. 正しい(答えではない)
脳出血
高血圧は脳出血の最大の危険因子である。長期の高血圧で脳内の細い穿通枝に細動脈硬化や微小動脈瘤が生じ、これが破綻して出血する。被殻・視床・小脳・橋が好発部位で、片麻痺や意識障害を突然きたす。
✗ 3. 正しい(答えではない)
腎糸球体硬化
高血圧が続くと腎の輸入細動脈に硝子様の細動脈硬化が起こり、糸球体が虚血に陥って硬化する。良性腎硬化症と呼ばれ、腎は表面が細顆粒状に萎縮し、蛋白尿と腎機能低下が徐々に進む。
✗ 4. 正しい(答えではない)
動脈硬化進行
高い血圧は血管内皮に持続的な機械的ストレスを与え、内皮障害を介して脂質の沈着とプラーク形成を促す。喫煙・脂質異常症・糖尿病と並ぶ動脈硬化の主要危険因子であり、虚血性心疾患や脳梗塞、大動脈瘤・解離につながる。
ポイント
  • 肥大=細胞ひとつの体積が増える。過形成=細胞の数が増える。永久細胞は肥大しかできない。
  • 永久細胞:心筋細胞、骨格筋細胞、神経細胞。高血圧の心臓は「心筋肥大」であって過形成ではない。
  • 高血圧性心疾患は左室求心性肥大 → 拡張障害 → 心不全という経過をたどる。
  • 高血圧の合併症:脳出血・脳梗塞、腎硬化症、動脈硬化の進展、高血圧性網膜症、大動脈解離。
  • 脳出血の好発部位は被殻・視床・小脳・橋。細い穿通枝の破綻が原因。
比較表
肥大過形成
変化の中身細胞1個が大きくなる(数は不変)細胞の数が増える
起こりうる細胞永久細胞でも可(心筋・骨格筋・神経)分裂能をもつ細胞に限る
高血圧による心筋肥大、トレーニングによる骨格筋肥大前立腺肥大症、甲状腺腫、子宮内膜増殖症
実質臓器での組合せ単独で起こることが多い肥大と同時に起こることも多い
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