学習トップ理由で解く 柔道整復師運動学 ▸ §4 頭・頸部、四肢と体幹の運動(筋の作用および神経支配を含む) / QJ32A109

理由で解く 柔道整復師

QJ32A109 運動学

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午前 問109
問題
長掌筋で正しいのはどれか。
選択肢
1 手根管内を通る。
2 手関節の屈曲に関わる。
3 第5中手骨底に停止する。
4 橈骨神経の支配を受ける。
解答
正解2(手関節の屈曲に関わる。)
解説

長掌筋は前腕屈筋群の浅層にあり、正中神経の支配を受けて手関節の掌屈(屈曲)を補助する。腱は手根管の中ではなく屈筋支帯の浅層を越え、屈筋支帯と手掌腱膜に移行して終わる。

起始は上腕骨内側上顆の共同屈筋起始で、短い筋腹のあと細長い腱となり、前腕遠位では皮下に浮き上がって触れることが多い。手関節部でこの腱は屈筋支帯の「上(浅層)」を通過するため、手根管の内容には含まれない。手根管を通るのは浅指屈筋腱4本・深指屈筋腱4本・長母指屈筋腱1本の計9腱と正中神経であり、この9+1をひとまとまりで覚えておくと選択肢1が外せる。作用は手関節掌屈の補助と手掌腱膜の緊張で、単独の力源としては弱く、欠如していても機能障害が出にくいため腱移行・腱移植のドナーとして用いられる。判断のコツは、長掌筋について「走行する場所(屈筋支帯の浅層)」「停止(屈筋支帯・手掌腱膜)」「支配神経(正中神経)」「作用(掌屈の補助)」の4点をセットで想起し、選択肢を1つずつ照合することである。

✓ 2. 正しい
手関節の屈曲に関わる。
長掌筋は上腕骨内側上顆から起こり、手関節の掌側を越えて屈筋支帯・手掌腱膜に停止する。関節の掌側をまたいで走るため、収縮すれば手関節は掌屈(屈曲)する。掌屈の主力は橈側手根屈筋と尺側手根屈筋で、長掌筋はこれを補助しつつ手掌腱膜を緊張させ、物を握るときに手掌の皮膚がずれないよう安定させる。起始・停止と関節との位置関係を押さえれば、作用は暗記しなくても導ける。
✗ 1. 誤り
手根管内を通る。
長掌筋腱は屈筋支帯の浅層(表面)を越え、そのまま屈筋支帯と手掌腱膜へ移行する。手根管の内容は浅指屈筋腱4本・深指屈筋腱4本・長母指屈筋腱1本と正中神経であり、長掌筋腱はここに含まれない。手根管症候群で屈筋支帯を切開する際、長掌筋腱が体表からの目印になることと合わせて「支帯の上を通る筋」と結びつけて整理しておくとよい。
✗ 3. 誤り
第5中手骨底に停止する。
第5中手骨底(および豆状骨・有鉤骨鉤)に停止するのは尺側手根屈筋である。長掌筋の停止は屈筋支帯と手掌腱膜で、骨に付着しない点が大きな特徴になる。停止が腱膜であることが「手掌腱膜を緊張させる」という作用に直結するので、停止部と作用を一続きで覚えておくと、骨停止の筋(橈側手根屈筋=第2中手骨底、尺側手根屈筋=第5中手骨底)と混同しなくなる。
✗ 4. 誤り
橈骨神経の支配を受ける。
長掌筋は正中神経の支配を受ける。前腕屈筋群で尺骨神経が支配するのは尺側手根屈筋と深指屈筋の尺側半分だけで、それ以外は正中神経が担う。橈骨神経が支配するのは前腕伸筋群と腕橈骨筋である。「前腕屈側は正中神経が原則、例外は尺側の2つ(尺側手根屈筋・深指屈筋尺側半)」と唱えて整理しておくと、屈側の筋に橈骨神経を当ててしまう誤りを防げる。
ポイント
  • 長掌筋=起始:上腕骨内側上顆/停止:屈筋支帯・手掌腱膜/支配:正中神経/作用:手関節掌屈の補助と手掌腱膜の緊張。
  • 手根管の内容は「浅指屈筋腱4+深指屈筋腱4+長母指屈筋腱1=9腱」と正中神経。長掌筋腱は屈筋支帯の浅層を通るため含まれない。
  • 第5中手骨底・豆状骨・有鉤骨鉤に停止するのは尺側手根屈筋(尺骨神経支配)。第2中手骨底は橈側手根屈筋(正中神経支配)。
  • 前腕屈筋群で尺骨神経支配は尺側手根屈筋と深指屈筋尺側半のみ、残りは正中神経。橈骨神経は伸筋群と腕橈骨筋を支配する。
  • 長掌筋は欠如する変異が知られ、機能への影響が小さいため腱移植のドナーとして使われる。
比較表
手根管との関係停止支配神経
長掌筋通らない(屈筋支帯の浅層を越える)屈筋支帯・手掌腱膜正中神経
橈側手根屈筋通らない(手根管とは別の独立した溝・腱鞘を通る)第2中手骨底(一部第3中手骨底)正中神経
尺側手根屈筋通らない(屈筋支帯の尺側浅層を走る)豆状骨・有鉤骨鉤・第5中手骨底尺骨神経
浅指屈筋(4腱)通る第2〜5指中節骨底正中神経
深指屈筋(4腱)通る第2〜5指末節骨底橈側半:正中神経/尺側半:尺骨神経
長母指屈筋(1腱)通る母指末節骨底正中神経
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