学習トップ理由で解く 柔道整復師生理学 ▸ §9 内分泌 / QJ32A101

理由で解く 柔道整復師

QJ32A101 生理学

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午前 問101
問題
バソプレッシン分泌を抑制するのはどれか。
選択肢
1 大量の発汗
2 塩分摂取の増加
3 循環血液量の減少
4 血漿浸透圧の低下
解答
正解4(血漿浸透圧の低下)
解説

バソプレッシン(抗利尿ホルモン, ADH)は「体液が濃くなった/減った」ときに水を体内へ引き止めるホルモンです。したがって分泌が抑えられるのは体液が薄まった状態で、正解は4の血漿浸透圧の低下です。

ADHは視床下部の視索上核・室傍核でつくられ、軸索を下って下垂体後葉から血中へ放出されます。最も鋭敏な調節因子は血漿浸透圧で、視床下部の浸透圧受容器がおよそ280〜290 mOsm/kgH2Oを基準に働き、わずか1〜2%の上昇でも分泌が増えます。第二の経路が体液量・血圧で、心房の容量受容器や頸動脈洞・大動脈弓の圧受容器からの抑制性入力が弱まる(=血液量・血圧が下がる)と分泌が増えます。放出されたADHは集合管主細胞のV2受容体に働き、アクアポリン2を管腔膜に並べて水を再吸収させ、少量の濃い尿をつくります。逆に浸透圧が下がるとこの一連が止まり、薄い尿が大量に出て余分な水が捨てられます。「濃い・少ない→出す/薄い・多い→止める」の一本の軸で4肢すべてを仕分けられます。

✓ 4. 正しい
血漿浸透圧の低下
水を多く飲んだときのように体液が薄まると、視床下部の浸透圧受容器の活動が下がり、ADH分泌が抑制されます。集合管のアクアポリン2が減って水が再吸収されなくなるため、低張の尿が大量に出て浸透圧が元に戻ります(水利尿)。これが唯一の「抑制」方向の選択肢です。
✗ 1. 誤り
大量の発汗
汗は血漿より低張なので、大量に汗をかくと水が優先的に失われて血漿浸透圧は上がり、同時に循環血液量も減ります。浸透圧刺激・容量刺激の両方が揃うためADH分泌はむしろ促進されます。発汗・下痢・嘔吐・出血はすべて「体液を失う→ADHを出す」側と覚え、脱水の問題では促進側に分類してください。
✗ 2. 誤り
塩分摂取の増加
NaClが吸収されると血漿浸透圧が上昇し、浸透圧受容器を介してADH分泌が促進されます。同時に口渇中枢も刺激されて飲水が起こり、薄めた水を体内に保持する方向に働きます。「しょっぱいものを食べると喉が渇き、尿が濃く少なくなる」という日常経験をそのまま機序として結びつけておくと確実です。
✗ 3. 誤り
循環血液量の減少
出血や脱水で循環血液量が減ると、心房の容量受容器や動脈圧受容器から視床下部へ届く抑制性の入力が弱まり、ADH分泌が促進されます。浸透圧に比べると感度は低い(おおむね5〜10%以上の減少で強く働く)ものの、いったん働くと分泌量は大きくなります。「量が減る→水を守る」と押さえ、浸透圧経路と容量経路の二本立てで整理しておきましょう。
ポイント
  • ADHは視床下部(視索上核・室傍核)で産生され、下垂体後葉から放出される。作用部位は集合管のV2受容体→アクアポリン2。
  • 促進:血漿浸透圧上昇、循環血液量・血圧低下、アンジオテンシンII、疼痛・ストレス・悪心、ニコチン。
  • 抑制:血漿浸透圧低下(水負荷)、循環血液量増加、心房性ナトリウム利尿ペプチド、アルコール。
  • 浸透圧受容器は1〜2%の変化を検出する高感度センサー、容量受容器は数%以上の大きな変化に反応する低感度センサー。
  • ADHが出れば「少量・濃縮尿」、抑えられれば「多量・希釈尿」。尿の様子から分泌状態を逆算できる。
比較表
体液の状態センサーADH分泌尿の変化
血漿浸透圧の上昇(塩分摂取・発汗)視床下部 浸透圧受容器促進少量・濃縮尿
血漿浸透圧の低下(水の多飲)視床下部 浸透圧受容器抑制多量・希釈尿
循環血液量・血圧の低下(出血・脱水)心房容量受容器/動脈圧受容器促進少量・濃縮尿
循環血液量の増加(輸液・過剰飲水)心房容量受容器(ANP分泌も増加)抑制多量・希釈尿
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