学習トップ理由で解く 柔道整復師解剖学 ▸ §9 神経系 / QJ32A076

理由で解く 柔道整復師

QJ32A076 解剖学

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午前 問76
問題
障害されると猿手を起こすのはどれか。
選択肢
1 腋窩神経
2 尺骨神経
3 正中神経
4 橈骨神経
解答
正解3(正中神経)
解説

猿手を起こすのは正中神経の障害です。母指球筋が萎縮して母指の対立ができなくなり、手が平たくサルの手のように見えます。

正中神経は母指球筋のうち短母指外転筋・母指対立筋・短母指屈筋浅頭と、第1・第2虫様筋を支配します。麻痺すると母指球が痩せて母指が手掌と同じ平面に落ち込み、他指と向かい合わせる対立運動ができなくなります。これが猿手(ape hand)です。手根管症候群のように手関節部で圧迫されても起こり、この場合は母指から環指橈側にかけての知覚障害を伴います。前腕近位での高位麻痺では長母指屈筋と深指屈筋の橈側半も麻痺するため、母指と示指できれいな輪をつくれない「涙のしずくサイン(ティアドロップサイン)」が加わります。上肢の神経麻痺は「猿手=正中、鷲手=尺骨、下垂手=橈骨」と変形名で対にして覚え、実際の評価では変形の観察と知覚領域の確認を組み合わせて障害神経を絞り込みましょう。

✓ 3. 正しい
正中神経
母指球筋(短母指外転筋・母指対立筋・短母指屈筋浅頭)の麻痺と萎縮によって母指が外転・対立できなくなり、猿手を呈します。
✗ 1. 誤り
腋窩神経
三角筋と小円筋を支配します。麻痺では肩関節の外転が困難になり、肩外側(上外側上腕皮神経領域)の知覚が低下しますが、手の変形は生じません。
✗ 2. 誤り
尺骨神経
骨間筋・第3および第4虫様筋・小指球筋を支配します。麻痺では中手指節関節が過伸展し指節間関節が屈曲する鷲手(claw hand)となります。
✗ 4. 誤り
橈骨神経
前腕伸筋群を支配します。上腕骨骨幹部骨折などで麻痺すると手関節と手指の伸展ができず、下垂手(drop hand)を呈します。
ポイント
  • 猿手=正中神経麻痺。母指球筋の萎縮と母指対立不能が特徴。
  • 正中神経支配の母指球筋:短母指外転筋・母指対立筋・短母指屈筋浅頭(+第1・2虫様筋)。
  • 手根管症候群では母指〜環指橈側の知覚障害を伴い、夜間・明け方のしびれが多い。
  • 高位(前腕近位)麻痺ではティアドロップサイン(母指と示指で丸をつくれない)が加わる。
  • 変形で対比:猿手=正中、鷲手=尺骨、下垂手=橈骨
比較表
神経特徴的な変形主な麻痺筋知覚障害の部位
正中神経猿手母指球筋(短母指外転筋・母指対立筋ほか)、前腕屈筋群の大部分手掌橈側〜母指・示指・中指・環指橈側
尺骨神経鷲手骨間筋、第3・4虫様筋、小指球筋、母指内転筋手の尺側、小指と環指尺側
橈骨神経下垂手上腕三頭筋、前腕伸筋群上腕・前腕後面、手背橈側(第1・2指間背側)
腋窩神経(手の変形なし)三角筋、小円筋肩外側
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