学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ31P117

理由で解く 柔道整復師

QJ31P117 柔道整復理論

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午後 問117
問題
24歳の男性。バレーボール選手である。2か月前からスパイク時、・右肩後方に痛みを自覚し軽減しないため来所した。図の楕円部に圧痛と筋萎縮があり、MMT で右肩関節外旋筋力のみが4と低下していた。肩関節の他動的可動域、腱反射、感覚に左右差はなく、スパーリングテストは陰性であった。考えられるのはどれか。
図
選択肢
1 C7 神経根症
2 長胸神経損傷
3 腋窩神経損傷
4 肩甲上神経損傷
解答
正解4(肩甲上神経損傷)
解説

外旋筋力だけが選択的に落ち、同部に圧痛と筋萎縮があり、感覚障害も神経根症状もない。これは肩甲上神経の障害で、棘窩切痕部で絞扼されると棘下筋だけが麻痺する。

肩甲上神経は肩甲切痕を通ってまず棘上筋を支配し、続いて肩甲棘の外側を回り込む棘窩切痕を通って棘下筋に達する。バレーボールのスパイクや野球の投球のように、肩を挙上・外転して繰り返し強くひねる動作では、この棘窩切痕部で神経が牽引・絞扼されやすい。肩甲切痕より遠位で障害されると棘上筋は温存され棘下筋だけが麻痺するため、外転筋力は保たれたまま外旋筋力のみが低下し、棘下窩に筋萎縮が現れるという特徴的な組み合わせになる。肩甲上神経は皮膚感覚を担当しないので感覚障害を伴わない点も手がかり。頸椎由来を除外するにはスパーリングテスト、腱反射、感覚の左右差を確認するが、本例はいずれも陰性・差なしで神経根症は考えにくい。ガングリオンによる圧迫が原因のこともあるため、症状が続くときは画像評価につなぐ。

✓ 4. これが答え
肩甲上神経損傷
棘窩切痕部での絞扼により棘下筋のみが麻痺し、肩関節外旋筋力の低下と棘下窩の筋萎縮を生じる。皮膚感覚を担当しない神経なので感覚障害を伴わず、オーバーヘッド動作を反復するバレーボール選手という背景にも合致する。
✗ 1. 答えではない
C7 神経根症
神経根症であればスパーリングテストが陽性となり、C7領域(中指)の感覚障害や上腕三頭筋反射の低下を伴うのが典型。本例はスパーリング陰性、腱反射・感覚に左右差なしであり、いずれも合わない。
✗ 2. 答えではない
長胸神経損傷
前鋸筋が麻痺して翼状肩甲と挙上障害を生じる病態。肩関節外旋筋力の選択的な低下と棘下窩の筋萎縮は、この神経の支配領域では説明できない。
✗ 3. 答えではない
腋窩神経損傷
三角筋の麻痺により肩外転筋力が低下し、上腕外側上部に感覚障害を伴うのが典型。外旋筋力のみの低下で感覚障害がないという本例の所見とは一致しない。
ポイント
  • 肩甲上神経は肩甲切痕→棘上筋、棘窩切痕→棘下筋の順に支配する。障害部位で症状が変わる。
  • 棘窩切痕部の障害では棘下筋のみが麻痺し、外旋筋力低下+棘下窩の萎縮となる。
  • 皮膚感覚を担当しないため、感覚障害を伴わないことが手がかりになる。
  • オーバーヘッドスポーツ(バレーボール、野球)の反復動作が誘因。ガングリオンによる圧迫例もある。
  • 頸椎由来の除外にはスパーリングテスト、腱反射、感覚の左右差を確認する。
比較表
神経(障害部位)麻痺する筋低下する動作感覚障害
肩甲上神経(棘窩切痕部)棘下筋肩関節外旋なし
腋窩神経三角筋・小円筋肩関節外転あり(上腕外側上部)
長胸神経前鋸筋肩甲骨の固定(翼状肩甲)なし
C7神経根上腕三頭筋など肘関節伸展あり(中指)
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