学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ31P116

理由で解く 柔道整復師

QJ31P116 柔道整復理論

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午後 問116
問題
65歳の女性。1か月前、自宅の整理をしていて崩れそうになった重い荷物を支えようとしたとき、右上肢痛を自覚した。約1週で疼痛が軽減し、上肢もあまり不自由なく使えるようになったので放置していたが、肘屈曲時に上腕部の腫れが目立ってきたので来所した。右上腕前面に握りこぶし大の軟部腫瘤を触知する。誤っているのはどれか。
選択肢
1 腱の変性が背景にある。
2 最大筋力は正常である。
3 保存療法が第一選択である。
4 超音波観察が有用である。
解答
正解2(最大筋力は正常である。)
解説

この設問は「誤っているのはどれか」を問うている。中高年が力を入れた瞬間に上腕前面を痛め、後から肘屈曲時に「こぶ」が目立つのは上腕二頭筋長頭腱断裂(ポパイ変形)。筋腹が下がるだけでなく屈曲力・回外力は低下するので、「最大筋力は正常」が誤りである。

上腕二頭筋長頭腱は結節間溝を通って関節内に入る走行のため摩耗を受けやすく、中高年では腱の変性を背景に軽微な負荷でも断裂する。断裂すると筋腹が遠位へ落ち込み、肘を曲げたときに上腕前面に握りこぶし大の膨隆(ポパイ変形/ポパイサイン)が現れる。痛みは数日から1週ほどで軽減し、短頭と上腕筋が代償するため日常生活動作は保たれることが多い。しかし肘屈曲力と前腕回外力は健側より低下し、とくに回外力の低下が残りやすい。腱の連続性の途絶や筋腹の位置は超音波で健側と比較しながら確認でき、評価に有用である。中高年で機能障害が軽い例では保存療法が第一選択となり、若年者や上肢に強い力を要する人では手術が検討される。

✓ 2. 誤り(これが答え)
最大筋力は正常である。
短頭と上腕筋の代償によって日常動作はこなせるようになるが、肘屈曲力と前腕回外力は健側と比べて低下する。とくに回外力の低下は自覚されやすく、ドライバーを回すような動作で残る。「支障が少ない」ことと「筋力が正常」であることは別であり、ここが誤り。
✗ 1. 正しい(答えではない)
腱の変性が背景にある。
結節間溝での慢性的な摩耗によって腱が変性しており、そこに軽微な外力が加わって断裂するのが中高年例の典型。本例のように「重い荷物を支えようとした」程度の負荷で切れるのは、この背景があるため。
✗ 3. 正しい(答えではない)
保存療法が第一選択である。
中高年で機能障害が軽度にとどまる例では保存療法が第一選択となる。若年者、重労働者、上肢の力を要する競技者では手術が検討されるという使い分けを押さえておく。
✗ 4. 正しい(答えではない)
超音波観察が有用である。
結節間溝での腱の連続性の途絶や筋腹の遠位偏位をリアルタイムに描出でき、健側との左右比較も容易。被曝がなく反復して観察できる点でも有用である。
ポイント
  • 上腕二頭筋長頭腱断裂は中高年に多く、結節間溝での腱の変性が背景。軽い力で断裂する。
  • 肘屈曲時に上腕前面が膨隆するポパイ変形が特徴。痛みは早期に軽減するため放置されやすい。
  • 短頭・上腕筋の代償で日常動作は保たれるが、肘屈曲力と前腕回外力は低下する。
  • 超音波で腱の連続性と筋腹の位置を確認できる。健側との比較が有効。
  • 中高年では保存療法が第一選択。若年・重労働・競技者では手術を検討する。
比較表
項目上腕二頭筋長頭腱断裂腱板(棘上筋腱)断裂
外観肘屈曲時に上腕前面が膨隆(ポパイ変形)外観の変化は乏しい(慢性例で棘上筋の萎縮)
圧痛部位結節間溝肩峰下部
主な機能低下肘屈曲力・前腕回外力肩外転の開始・保持
代表的な徒手検査ヤーガソンテスト、スピードテストドロップアームサイン、有痛弧徴候
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