学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ31P111

理由で解く 柔道整復師

QJ31P111 柔道整復理論

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午後 問111
問題
16歳の男子。フィギュアスケートでジャンプに失敗し、肘伸展位で左手を衝き受傷した。肘頭が後方に突出した外観を呈している。正しいのはどれか。
選択肢
1 肘関節屈伸運動で異常可動性を触知する。
2 上腕筋腱の索状隆起を触知する。
3 内側上顆骨折を合併しやすい。
4 顆上骨折屈曲型との鑑別を要する。
解答
正解3(内側上顆骨折を合併しやすい。)
解説

肘伸展位で手を衝き、肘頭が後方に突出した外観は肘関節後方脱臼の所見です。骨端線が残る成長期では内側上顆の裂離骨折を合併しやすく、正解は3です。

肘関節脱臼は四肢の脱臼のなかでも頻度が高く、その大部分が後方脱臼です。肘を伸ばして手を衝くと、肘頭が肘頭窩に突き当たっててこの支点となり、そこへ体重による過伸展・外反の力が加わって前腕が後方へ押し出されます。外観は肘の軽度屈曲位での弾発性固定、前腕の見かけ上の短縮、肘頭の後方かつ上方への突出で、後方に転位した肘頭の上に上腕三頭筋腱がテント状に張って索状に触れます。16歳という年齢がこの問題の鍵で、内側上顆はまだ骨端核が癒合しておらず力学的な弱点です。脱臼の瞬間、内側側副靱帯と前腕屈筋・回内筋群の起始部に引かれて内側上顆が裂離し、骨片が関節内に入り込むことがあります。そこで実際の対応は次の順序になります。まず変形と機能障害を確認し、神経・血行(橈骨動脈の拍動、正中・尺骨・橈骨神経の支配領域)を評価します。内側上顆のすぐ後ろを尺骨神経が走るため、小指側のしびれや骨間筋の筋力も必ず確認します。そのうえで、本例のように内側上顆骨折の合併が疑われる時点では無理な徒手整復は行わず、患肢を安静に保ったまま直ちに医師へ紹介し、エックス線で骨折の有無を確認してもらいます。柔道整復師が脱臼の患部に施術できるのは応急手当の範囲に限られ、それ以後の施術には医師の同意が必要です(柔道整復師法第17条)。応急手当として整復を行った場合には、整復後に肘の伸展が戻らない、整復位が保てないといったときに骨片の関節内嵌入を疑い、あらためて医師の診察につなぎます。

✓ 3. 正しい
内側上顆骨折を合併しやすい。
成長期は内側上顆の骨端核が癒合前で、ここが最も弱い部分になります。後方脱臼に伴う外反力と、内側側副靱帯・前腕屈筋回内筋群の牽引によって内側上顆が裂離するため、合併骨折として頻度が高くなります。ほかに鉤状突起骨折、橈骨頭・頸部骨折の合併も知られています。骨折の合併が疑われる時点で無理な整復操作は行わず、患肢を安静に保って直ちに医師へ紹介し、エックス線で確認してもらいます。
✗ 1. 誤り
肘関節屈伸運動で異常可動性を触知する。
異常可動性は骨の連続性が断たれたときに現れる骨折の固有症状です。脱臼では関節端どうしが噛み合った位置で止まっているため、他動的に動かそうとするとゴムのような抵抗があり、手を離すと元の肢位に戻る弾発性固定を示します。異常可動性ではなく弾発性固定が答えの根拠になります。
✗ 2. 誤り
上腕筋腱の索状隆起を触知する。
索状に触れるのは上腕三頭筋腱です。後方・上方へ転位した肘頭の上で腱が張るため、皮下に索状の隆起として触知できます。一方、上腕筋は上腕骨遠位前面から尺骨粗面に停止する深層の筋で、腱は短く扁平なうえ上腕二頭筋の深部にあるため、索状隆起として触れることはありません。
✗ 4. 誤り
顆上骨折屈曲型との鑑別を要する。
肘頭が後方に突出する外観をとるのは顆上骨折の伸展型で、鑑別を要するのはこちらです。屈曲型は遠位骨片が前方へ転位するため外観が異なります。鑑別にはヒューター三角(内側上顆・外側上顆・肘頭を結ぶ三角)を用い、後方脱臼では肘頭が上方に転位して三角が崩れるのに対し、顆上骨折では骨折線が上顆より近位にあり3点の位置関係が保たれます。
ポイント
  • 肘伸展位で手を衝く+肘頭の後方突出=肘関節後方脱臼。肘関節脱臼の大多数を占める。
  • 脱臼の固有症状は弾発性固定・変形・関節窩の空虚。異常可動性や軋轢音は骨折の固有症状で、脱臼にはみられない。
  • 後方脱臼では後方に転位した肘頭の上で上腕三頭筋腱が索状に触れる。上腕筋は深層で腱が短く、索状には触れない。
  • 成長期の後方脱臼は内側上顆の裂離骨折を合併しやすい。骨片の関節内嵌入と尺骨神経障害の確認を欠かさない。
  • 鑑別は顆上骨折伸展型。ヒューター三角が崩れれば脱臼、保たれていれば顆上骨折を考える。
  • 内側上顆骨折の合併が疑われる時点で無理な徒手整復は行わない。神経・血行を評価したうえで患肢を安静に保ち、直ちに医師へ紹介してエックス線で骨折の有無を確認してもらう。
  • 柔道整復師が脱臼の患部に施術できるのは応急手当の範囲まで。以後の施術には医師の同意が必要(柔道整復師法第17条)。応急手当として整復した場合は、整復後に伸展が戻らない・整復位が保てないときに骨片の関節内嵌入を疑い、再度医師の診察につなぐ。
比較表
比較項目肘関節後方脱臼顆上骨折 伸展型
好発年齢青年~成人(本問は16歳)学童期(5~10歳前後)に多い
受傷機転肘伸展位で手を衝き、過伸展・外反が加わる肘伸展位で手を衝く(機転は類似)
外観肘頭が後方かつ上方に突出、前腕は短縮してみえる遠位骨片が後方転位し、肘頭が後方に突出してみえる
ヒューター三角肘頭が上方転位して崩れる3点の位置関係は保たれる
固有症状弾発性固定・変形・関節窩の空虚異常可動性・軋轢音・転位
主な合併症内側上顆骨折、鉤状突起骨折、橈骨頭頸部骨折、尺骨神経障害上腕動脈・正中神経損傷、フォルクマン拘縮、内反肘
骨折合併を疑ったときの対応いずれも無理な徒手整復は行わず、患肢を安静に保って直ちに医師へ紹介し、エックス線で確認してもらう
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