学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ31P110

理由で解く 柔道整復師

QJ31P110 柔道整復理論

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午後 問110
問題
41歳の男性。ランニング中、段差につまずいて右手掌を衝き、前腕を回内強制された。右肘関節前外側に疼痛、腫脹、変形がみられる。また、感覚障害はみられなかったが、運動障害はみられた。肘関節側面の単純エックス線写真(別冊 No. 3)を別に示す。この場合の運動障害はどれか。
図
選択肢
1 手関節背屈
2 手関節掌屈
3 MP 関節伸展
4 MP関節屈曲
解答
正解3(MP 関節伸展)
解説

感覚障害がなく運動障害だけがみられる肘外側の外傷では、純運動枝である後骨間神経(橈骨神経深枝)の麻痺を考える。この場合に障害されるのは手指MP関節の伸展であり、正しいのは3である。

橈骨神経は肘の前外側で浅枝(感覚枝)と深枝に分かれ、深枝は回外筋を貫いた後に後骨間神経となって総指伸筋・示指伸筋・小指伸筋・尺側手根伸筋・長母指外転筋・長母指伸筋などを支配する。後骨間神経は運動線維のみで構成されるため、麻痺しても手背の感覚は保たれる。本例のように「感覚障害なし・運動障害あり」という組合せは、この神経の障害を強く示唆する所見である。また長橈側手根伸筋は深枝が分かれる前の橈骨神経本幹から枝を受けるため、手関節の背屈自体は保たれ、伸展できないのは手指のMP関節(下垂指)となる。橈骨頭は肘前外側で回外筋入口のすぐ近くを走る神経と接するため、この部位の骨折・脱臼では側面像で橈骨頭と上腕骨小頭の位置関係を確認し、神経所見と併せて医療機関へつなぐ。

✓ 3. 正しい
MP 関節伸展
MP関節の伸展を担う総指伸筋・示指伸筋・小指伸筋はいずれも後骨間神経支配である。麻痺すると手関節は背屈できるのに手指が垂れたままとなる下垂指(drop finger)を呈する。感覚障害を伴わない点が、橈骨神経本幹の麻痺(下垂手)との決定的な違いになる。
✗ 1. 誤り
手関節背屈
長橈側手根伸筋は深枝が分岐する前の橈骨神経本幹から神経支配を受けるため、後骨間神経麻痺でも働きが残る。したがって手関節の背屈は可能である(尺側手根伸筋が麻痺するため橈屈を伴いやすい)。背屈もできなくなるのは、より近位の橈骨神経本幹が障害された場合である。
✗ 2. 誤り
手関節掌屈
手関節掌屈は橈側手根屈筋(正中神経)・尺側手根屈筋(尺骨神経)・長掌筋が担い、橈骨神経系の支配ではない。橈骨神経・後骨間神経の障害では掌屈は保たれる。
✗ 4. 誤り
MP関節屈曲
MP関節の屈曲は虫様筋・骨間筋(正中神経・尺骨神経)が主に担う。後骨間神経の支配下にないため障害されない。伸筋群が麻痺している状態では、むしろMP関節は屈曲位に落ち込んで見える。
ポイント
  • 後骨間神経(橈骨神経深枝)は純運動枝。麻痺しても感覚障害を伴わない。
  • 「感覚障害なし+運動障害あり」の肘外側外傷では後骨間神経麻痺を疑う。
  • 症状は下垂指(MP関節伸展不能)。手関節背屈は長橈側手根伸筋が残るため可能。
  • 橈骨神経本幹の麻痺は下垂手+手背橈側の感覚障害。両者を対で覚える。
  • 肘前外側の変形・腫脹では、側面像で橈骨頭と上腕骨小頭の位置関係を確認し、神経所見と併せて医療機関へつなぐ。
比較表
橈骨神経本幹の麻痺後骨間神経(深枝)の麻痺
代表的な原因上腕骨骨幹部骨折、上腕への持続圧迫橈骨頭の骨折・脱臼、回外筋入口(フローセの腱弓)での絞扼
感覚障害あり(手背橈側)なし
手関節背屈不能(下垂手)可能(橈屈を伴いやすい)
MP関節伸展不能不能(下垂指)
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