学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ31P108

理由で解く 柔道整復師

QJ31P108 柔道整復理論

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午後 問108
問題
74歳の女性。階段を踏み外して転倒した。次第に痛みが強くなったので翌日歩いて来所した。医科での単純エックス線検査で大腿骨頸部の骨折と診断された。正しいのはどれか。
選択肢
1 大転子高位が著明である。
2 大腿近位に軽度の腫脹がある。
3 スカルパ三角部に軽度の圧痛がある。
4 観血療法の絶対的な適応となる。
解答
正解2(大腿近位に軽度の腫脹がある。)
解説

翌日に自力で歩いて来所できた大腿骨頸部骨折は、転位の小さい外転型(嵌入型)を想定する。頸部内側は関節包の中にあるため、外から見える腫脹は軽くとどまるのが特徴で、これが正解の根拠になる。

大腿骨頸部内側骨折は関節包内骨折であり、出血が関節包内にとどまって関節液に希釈されるため、大腿近位の腫脹や皮下出血は関節包外の転子部骨折ほど目立たない。ここは分けて覚える必要があり、同じ大腿骨近位部でも頸部外側(基部)骨折や転子部骨折は関節包外に位置するため、腫脹・皮下出血はむしろ著明になる。本例のように「歩いて来所できた」場合は、関節包内にとどまる転位の小さい外転型を第一に考える。転位の小さい外転型では下肢の外旋変形・短縮・大転子高位も乏しく、痛みをこらえて歩けてしまう例がある。一方で、スカルパ三角部(大腿三角=鼠径部中央)の圧痛と、患肢の軸圧痛・荷重時痛は比較的はっきり現れる。つまり「見た目は軽いのに、体重をかけると痛い」というギャップが本症のかたちであり、これが見落としを生む原因でもある。高齢者の転倒後の股関節痛は、歩けていても骨折を否定せず、医科での画像診断につなぐ。

✓ 2. 正しい
大腿近位に軽度の腫脹がある。
頸部内側は関節包内にあり、骨折による出血が包内にとどまるため外表に出にくい。したがって腫脹・皮下出血は軽度で、関節包外にあたる頸部外側(基部)骨折・転子部骨折で見られる著明な腫脹とは対照的になる。この「腫脹が軽い」ことこそ頸部内側骨折らしさであり、症状が軽く見えることが受診の遅れにつながる。
✗ 1. 誤り
大転子高位が著明である。
大転子高位(大転子がローゼル・ネラトン線を越えて上方に位置する)は、骨片や大腿骨全体が上方へ転位したときに現れる所見で、転位の大きい内転型骨折・転子部骨折・股関節後方脱臼で目立つ。翌日に歩いて来所できた本例は転位の小さい外転型が想定され、「著明」という程度づけは当てはまらない。
✗ 3. 誤り
スカルパ三角部に軽度の圧痛がある。
スカルパ三角部(大腿三角)の圧痛は大腿骨頸部骨折の中心的な所見で、外表の腫脹が乏しくてもこの部位ははっきりと痛む。むしろ「腫脹は軽いのに大腿三角の圧痛と軸圧痛は明らか」という組み合わせが診断の手がかりになるため、圧痛を軽度とする程度づけは実際の所見と合わない。
✗ 4. 誤り
観血療法の絶対的な適応となる。
頸部内側骨折は骨頭への血行が乏しく、骨癒合不全や大腿骨頭壊死のリスクが高いため手術が選ばれることが多い。しかし転位のない外転型嵌入骨折では保存療法が選択されることもあり、「絶対的適応」とは言い切れない。柔道整復師としては応急手当を行ったうえで、速やかに医科の診察につなぐ判断が求められる。
ポイント
  • 大腿骨頸部内側骨折は関節包内骨折。出血が包内にとどまるため腫脹・皮下出血は軽度で、外見だけでは軽症に見える。
  • 同じ大腿骨近位部でも、頸部外側(基部)・転子部骨折は関節包外。腫脹・皮下出血が著明になる点で対照的。
  • 外転型(嵌入型)は転位が小さく、歩行できてしまうことがある。高齢者の転倒後の股関節痛は歩けていても画像評価につなぐ。
  • スカルパ三角部の圧痛、患肢の軸圧痛・荷重時痛が診断の手がかり。
  • 大転子高位が著明になるのは転位の大きい骨折や股関節脱臼のとき。
  • 頸部内側骨折は骨頭への血行が乏しいため、骨癒合不全・大腿骨頭壊死が治療上の焦点になる。
比較表
項目大腿骨頸部(内側)骨折大腿骨転子部(外側)骨折
骨折線の位置関節包内関節包外
腫脹・皮下出血軽度でわかりにくい著明
転位・外旋変形外転型では乏しい著明なことが多い
受傷後の歩行外転型では可能なことがある通常は不能
骨癒合・血行不良。骨頭壊死のリスクあり良好
この問題の解説の修正を依頼する

解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。