学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ31P107

理由で解く 柔道整復師

QJ31P107 柔道整復理論

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午後 問107
問題
25歳の男性。交通事故で右大腿骨骨幹部骨折の診断を受け、即日入院となった。呼吸状態に異常はなかったが、翌日から急に息苦しさを訴え始めた。他に考えられる症状はどれか。
選択肢
1 発汗低下
2 血圧上昇
3 低体温
4 頻脈
解答
正解4(頻脈)
解説

大腿骨骨幹部骨折の翌日に急な息苦しさが出た経過は、脂肪塞栓症候群を強く疑わせます。低酸素と循環障害に対する代償として交感神経が緊張するため、頻脈がみられます。正答は4です。

脂肪塞栓症候群は、大腿骨や骨盤など髄腔の大きい骨が折れた際に、骨髄内の脂肪滴が破綻した静脈から血中に入り、肺の毛細血管に詰まって起こります。受傷直後ではなく12〜72時間後に発症するのが特徴で、本症例のように「入院時は呼吸に異常がなかったのに翌日から急に息苦しくなる」という時間経過が手がかりです。三徴は呼吸困難(低酸素血症)・意識障害(不穏、傾眠)・点状出血で、点状出血は前胸部、腋窩、頸部、眼球結膜、口腔粘膜に出ます。加えて38度前後の発熱、頻呼吸、頻脈を伴います。頻脈は、低酸素と肺血管閉塞による右心負荷、有効循環血液量の相対的減少を心拍数で補おうとする反応です。同時に交感神経が緊張するので皮膚は冷たく湿り、発汗はむしろ増えます。長管骨骨折後の患者が呼吸困難や様子の変化を訴えたら、致命的になりうる病態として直ちに医療機関へ連絡してください。

✓ 4. 正しい
頻脈
低酸素と肺血管の閉塞による右心負荷を代償するため心拍数が増えます。呼吸困難とならんで早期から現れる所見です。
✗ 1. 誤り
発汗低下
交感神経が緊張するため冷汗をかき、発汗はむしろ増加します。皮膚は冷たく湿った状態になります。
✗ 2. 誤り
血圧上昇
肺血管の閉塞による右心負荷とショック状態のため、血圧は上がらず低下する方向に向かいます。
✗ 3. 誤り
低体温
38度前後の発熱が特徴的な所見の一つです。低体温はこの病態の典型ではありません。
ポイント
  • 脂肪塞栓症候群は大腿骨・骨盤など大きな骨の骨折後、12〜72時間で発症する。「翌日から急に息苦しい」が手がかり。
  • 三徴=呼吸困難(低酸素)・意識障害・点状出血。点状出血は前胸部、腋窩、頸部、眼球結膜、口腔粘膜。
  • 随伴所見は頻脈・頻呼吸・38度前後の発熱・冷汗。血圧は低下方向。
  • 頻脈は低酸素と右心負荷を心拍数で補おうとする代償反応と理解する。
  • 長管骨骨折後に呼吸困難や意識の変化があれば、致命的になりうる病態として直ちに医療機関へつなぐ。
比較表
項目脂肪塞栓症候群での向き理由
脈拍頻脈(増加)低酸素と右心負荷の代償
発汗増加(冷汗)交感神経の緊張
血圧低下肺血管閉塞による循環不全
体温上昇(38度前後)炎症反応を伴う
意識不穏・傾眠低酸素と脳の微小塞栓
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