学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ31P106

理由で解く 柔道整復師

QJ31P106 柔道整復理論

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午後 問106
問題
25歳の男性。草野球でボールを打った瞬間から手のひらに強い痛みを自覚し、その後バットが握れなくなったため翌日来所した。図の部位に強い圧痛と腫脹があり、握り動作によって痛みが増強した。考えられるのはどれか。
図
選択肢
1 有頭骨骨折
2 月状骨骨折
3 三角線維軟骨複合体損傷
4 有鈎骨鈎骨折
解答
正解4(有鈎骨鈎骨折)
解説

バットのグリップエンドが手掌尺側にあたって折れる有鈎骨鈎骨折である。握ると痛みが強まり、バットやクラブが握れなくなる。

有鈎骨の鈎は手掌尺側、豆状骨のやや遠位橈側に突出する小さな骨性隆起で、屈筋支帯の付着部でありギヨン管の橈側壁を形づくる。バッティングやゴルフのスイングでグリップエンドが直接この部にあたる、あるいはスイングを止めた際の急激な力によって骨折する。単純エックス線の正面像では手根骨と重なって写らず見逃されやすいため、手掌の限局性圧痛と握り動作での疼痛増強があれば本骨折を疑い、専用の撮影方向やCTでの評価につなげる。ギヨン管は有鈎骨鈎と豆状骨の間、すなわち鈎のすぐ尺側を走り尺骨神経が通るので、小指側のしびれや骨間筋の筋力低下も併せて確認する。

✗ 1. 誤り
有頭骨骨折
有頭骨は手根中央(第3中手骨の近位)に位置し、骨折は直達外力や高エネルギー損傷でまれに生じる。圧痛は手背中央に出るのが普通で、手掌の痛みと握り動作痛が主体の本症例とは合わない。
✗ 2. 誤り
月状骨骨折
月状骨は手根中央列にあり、圧痛は手関節背側中央に出る。骨折自体まれで、関連するキーンベック病(月状骨軟化症)は徐々に進行する手関節痛が特徴であり、急にバットが握れなくなる経過とは異なる。
✗ 3. 誤り
三角線維軟骨複合体損傷
手関節尺側の遠位橈尺関節部の障害で、圧痛は尺骨頭の遠位(手背尺側)に出る。回内回外や手関節尺屈で疼痛が誘発される点が特徴である。本症例は手掌の痛みと握り動作痛が主体であり、圧痛部位も誘発動作も異なる。
✓ 4. 正しい
有鈎骨鈎骨折
バットのグリップエンドが手掌尺側の有鈎骨鈎に直接あたって折れる典型例である。握り動作で屈筋腱や周囲組織が骨折部を刺激するため疼痛が増強し、バットが握れなくなる。
ポイント
  • 有鈎骨鈎骨折はバット・ゴルフクラブ・ラケットのグリップエンドによる直達外力が典型。
  • 有鈎骨鈎は手掌尺側(豆状骨の遠位橈側)にある。同部の限局性圧痛と握り動作痛が手がかりになる。
  • 通常の正面エックス線像では写りにくい。見逃さないため専用撮影やCTでの評価を勧める。
  • 鈎は豆状骨との間でギヨン管を構成する(管は鈎の尺側)。尺骨神経が通るため、小指側のしびれや骨間筋の萎縮を確認する。
  • 偽関節になりやすく、放置すると小指・環指の深指屈筋腱断裂を招くことがあるので、疑ったら医療機関につなぐ。
比較表
損傷圧痛部位典型的な経過・誘発動作
有鈎骨鈎骨折手掌尺側(豆状骨の遠位橈側)グリップエンドの直達外力、握り動作で増悪
有頭骨骨折手背中央高エネルギー直達外力、まれ
月状骨骨折手関節背側中央まれ。キーンベック病は緩徐進行
三角線維軟骨複合体損傷手背尺側(尺骨頭の遠位)回内回外・尺屈で疼痛誘発
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