学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ31P105

理由で解く 柔道整復師

QJ31P105 柔道整復理論

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午後 問105
問題
21歳の男性。柔道の乱取り中、背負い投げをかけられた際に左手を強く衝いた。稽古後、手関節部に疼痛を自覚したため来所した。医科での単純エックス線写真(別冊 No. 2)を別に示す。誤っているのはどれか。
図
選択肢
1 長期間の固定が必要である。
2 近位部が骨壊死になりやすい。
3 手関節橈屈位で患部を触知しやすい。
4 長母指伸筋腱と短母指伸筋腱に囲まれた部位に圧痛がみられる。
解答
正解3(手関節橈屈位で患部を触知しやすい。)
解説

手をついて受傷し、解剖学的嗅ぎタバコ入れの圧痛と近位骨片の骨壊死が問題になる本例は、手根舟状骨骨折を扱ったものである。舟状骨は手関節尺屈位で触知しやすくなるため、「橈屈位で触知しやすい」とする3が誤りであり、これが答えとなる。

舟状骨は近位手根列と遠位手根列にまたがって斜めに位置し、手関節を尺屈すると背側・橈側へ押し出されるように立ち上がるため、解剖学的嗅ぎタバコ入れの底で触れやすくなる。逆に橈屈すると舟状骨は掌屈・短縮して橈骨茎状突起の陰に入り、触知しにくい。栄養血管は主に遠位背側から入り、骨内を逆行性に近位へ向かうため、腰部より近位で折れると近位骨片が阻血性壊死に陥りやすい。さらに舟状骨のほとんどが関節軟骨に覆われて骨膜性の仮骨が期待しにくく、癒合には長い固定期間を要する。受傷直後は単純エックス線で骨折線が写らないことがあり、嗅ぎタバコ入れに圧痛があれば骨折に準じて固定し、医療機関での再検査(追加撮影やCT・MRI)につなぐ姿勢が重要である。

✓ 3. これが答え(記述が誤り)
手関節橈屈位で患部を触知しやすい。
橈屈すると舟状骨は掌屈して橈骨茎状突起の下に隠れ、触知しにくくなる。触診は尺屈位で行い、舟状骨が背橈側へ押し出された状態で解剖学的嗅ぎタバコ入れの底を圧迫する。肢位が逆になっている点でこの記述は誤りであり、設問の答えとなる。
✗ 1. 記述は正しい(答えではない)
長期間の固定が必要である。
舟状骨は表面の大部分が関節軟骨で覆われ、骨膜性仮骨がほとんど期待できないうえ血行にも恵まれない。そのため癒合には数か月単位の長い固定を要することが多く、自己判断で固定を外さないよう説明することが治療成績に直結する。
✗ 2. 記述は正しい(答えではない)
近位部が骨壊死になりやすい。
舟状骨の栄養血管は主に遠位背側から進入し、骨内を逆行性に近位へ向かう。骨折線がこの血行を断つと近位骨片が阻血状態となり、遷延治癒・偽関節・阻血性骨壊死に至る。近位骨折ほど予後が悪いのはこのためである。
✗ 4. 記述は正しい(答えではない)
長母指伸筋腱と短母指伸筋腱に囲まれた部位に圧痛がみられる。
母指を伸展・外転させたときに手関節橈背側にできる陥凹が解剖学的嗅ぎタバコ入れで、尺側縁を長母指伸筋腱、橈側縁を短母指伸筋腱・長母指外転筋腱が作る。その底に舟状骨があるため、ここの限局性圧痛は舟状骨骨折を示唆する重要な所見である。
ポイント
  • 手をついて受傷+解剖学的嗅ぎタバコ入れの圧痛=舟状骨骨折をまず疑う。
  • 触診は尺屈位で行う。尺屈で舟状骨が背橈側へ押し出され触れやすくなる。
  • 栄養血管は遠位背側から逆行性に入るため、近位骨片が阻血性壊死・偽関節になりやすい。
  • 関節軟骨に覆われ骨膜性仮骨が乏しく、癒合に長期の固定を要する。
  • 受傷直後は単純エックス線で写らないことがある。圧痛があれば骨折に準じて固定し、医療機関での再評価につなぐ。
比較表
手関節の肢位舟状骨の動き触診のしやすさ
尺屈位伸展して背橈側へ押し出される嗅ぎタバコ入れの底で触知しやすい(触診に適する)
橈屈位掌屈・短縮し橈骨茎状突起の下に入る触知しにくい
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