学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ31P103

理由で解く 柔道整復師

QJ31P103 柔道整復理論

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午後 問103
問題
15歳の男子。柔道の試合中投げられ右手掌を衝き、肘関節外反強制で上腕遠位端部を負傷した。肘関節内側に著明な腫脹と限局性圧痛および軋轢音がみられた。損傷される可能性が高い神経はどれか。
選択肢
1 橈骨神経
2 筋皮神経
3 正中神経
4 尺骨神経
解答
正解4(尺骨神経)
解説

肘外反が強制されて上腕骨遠位端内側に限局性圧痛と軋轢音がみられる本例は、上腕骨内側上顆骨折(裂離骨折)が想定される。内側上顆の後方には尺骨神経溝が走るため、損傷される可能性が最も高いのは尺骨神経である。

手掌を衝いて肘に外反力が加わると、内側では内側側副靱帯と前腕屈筋・回内筋群が強く牽引される。15歳前後は内側上顆の骨端核がまだ癒合していないため、靱帯・筋が切れる前に付着部の骨が引き剥がされ、裂離骨折となりやすい。骨折部のすぐ後方、内側上顆と肘頭の間の尺骨神経溝を尺骨神経が走っているため、骨片の転位や腫脹によって直接圧迫・牽引を受ける。したがって初期評価では、骨折の局所所見だけでなく、小指・環指尺側のしびれ、骨間筋の筋力(指の開閉)を必ず確認する。軋轢音や限局性圧痛のように骨折を疑う所見がある場合は、無理な自動運動を求めず患肢を安静に保ったまま医療機関での画像診断につなぐ。

✓ 4. 正しい
尺骨神経
尺骨神経は上腕内側を下降し、内側上顆の後方にある尺骨神経溝を通って前腕へ入る。骨折部と接して走行するため、内側上顆骨折では骨片転位や血腫による圧迫で尺骨神経麻痺を合併しうる。小指・環指尺側のしびれや手内在筋の筋力低下を早期に確認する必要がある。
✗ 1. 誤り
橈骨神経
橈骨神経は上腕骨後面の橈骨神経溝から外側へ回り込み、肘では外側を通る。損傷が問題になるのは上腕骨骨幹部(中央〜遠位1/3)骨折や外側の外傷であり、内側上顆に限局した本例の損傷部位とは反対側になる。
✗ 2. 誤り
筋皮神経
筋皮神経は上腕二頭筋と上腕筋の間を走り、肘の外側で前腕外側皮神経となって皮下に出る。筋腹に守られた走行で骨に密着しないため、肘内側の裂離骨折で損傷される可能性は低い。
✗ 3. 誤り
正中神経
正中神経は上腕動脈とともに肘窩の内側前面を通る。損傷が問題になるのは上腕骨顆上骨折の伸展型で、遠位骨片が後上方へ転位した結果、前方に残った近位骨片の骨折端が上腕動脈・正中神経を前方から突き上げて圧迫する損傷である。内側上顆後方を走る尺骨神経に比べると、本例で真っ先に疑う神経ではない。
ポイント
  • 肘外反強制+肘内側の限局性圧痛・軋轢音=上腕骨内側上顆骨折(裂離)を疑う。
  • 骨端核が未癒合の10代では、靱帯・筋より先に付着部の骨が剥がれる。
  • 内側上顆の後方=尺骨神経溝。したがって合併しやすいのは尺骨神経麻痺。
  • 神経評価は小指・環指尺側の感覚と、骨間筋の筋力(指の開閉、フローマン徴候)で行う。
  • 骨折を疑う所見があれば無理な運動を避け、患肢を安静に保って医療機関の画像診断へつなぐ。
比較表
肘周辺の外傷損傷しやすい神経・血管理由
上腕骨内側上顆骨折尺骨神経内側上顆後方の尺骨神経溝を走行
上腕骨顆上骨折 伸展型正中神経・上腕動脈遠位骨片が後上方へ転位し、近位骨片の骨折端が前方の上腕動脈・正中神経を突き上げる
上腕骨骨幹部(中央〜遠位1/3)骨折橈骨神経後面の橈骨神経溝に密着して走行
橈骨頭・頸部の骨折/脱臼後骨間神経(橈骨神経深枝)回外筋入口(フローセの腱弓)付近を通過
上腕骨外顆骨折(遅発性)尺骨神経変形治癒による外反肘で牽引され遅発性麻痺
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