学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §22 各論(軟部組織損傷) 上肢 / QJ31P097

理由で解く 柔道整復師

QJ31P097 柔道整復理論

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午後 問97
問題
骨棘が生じるのはどれか。
選択肢
1 肩関節不安定症
2 ベネット (Bennett) 損傷
3 バンカート(Bankart)損傷
4 ヒル・サックス (Hill-Sachs)損傷
解答
正解2(ベネット (Bennett) 損傷)
解説

投球の繰り返しで関節窩の後下縁に骨のとげができるのがベネット損傷。ほかの3つは骨棘ではなく、関節唇の剥離や骨頭のへこみが本態である。

投球動作のフォロースルー期には、上腕三頭筋長頭や後方関節包を介して肩甲骨関節窩の後下縁へ繰り返し牽引・剪断力が加わる。この慢性ストレスに骨が反応して増殖したものがベネット損傷で、投球時の肩後方痛として現れる。これに対しバンカート損傷は肩関節前方脱臼で前下方の関節唇が関節窩から剥がれるもの、ヒル・サックス損傷は同じ脱臼で骨頭後外側が関節窩前縁に衝突してへこむ圧迫骨折であり、いずれも成り立ちが違う。骨棘は「繰り返しかかる牽引ストレスに対する骨の増殖反応」と理解すると区別しやすい。

✗ 1. 誤り
肩関節不安定症
反復する亜脱臼感や不安感を主症状とする状態で、本態は関節包・靱帯の弛緩や関節唇の破綻である。骨が増殖する骨棘は特徴的所見ではない。
✓ 2. 正しい
ベネット (Bennett) 損傷
投球動作の繰り返しにより関節窩後下縁に生じる骨棘(骨性増殖)である。フォロースルー期に後方組織へ加わる牽引ストレスが原因で、投球時の肩後方痛を訴える。
✗ 3. 誤り
バンカート(Bankart)損傷
肩関節前方脱臼に伴い、関節窩前下方の関節唇と関節包靱帯が剥離するものである。骨片を伴う骨性バンカートもあるが、これは剥離骨折であって骨棘とは異なる。
✗ 4. 誤り
ヒル・サックス (Hill-Sachs)損傷
前方脱臼の際に上腕骨頭後外側が関節窩前縁に衝突して生じる陥凹(圧迫骨折)である。骨がへこむ変化であり、骨が増える骨棘とは逆の所見である。
ポイント
  • 骨棘は繰り返す牽引ストレスに対する骨の増殖反応。ベネット損傷は関節窩後下縁に生じる。
  • バンカート損傷は関節窩前下方の関節唇剥離、ヒル・サックス損傷は骨頭後外側の陥凹。前方脱臼で対になって現れる。
  • ベネット損傷(肩の骨棘)とベネット骨折(第1中手骨基部の脱臼骨折)は全く別物。名前で混同しない。
  • 投球時の肩後方痛+反復投球歴でベネット損傷を疑う。
  • 対応は投球数の管理と後方タイトネスの改善、フォームの見直しを段階的に進める。
比較表
名称部位本態発生機序
ベネット損傷関節窩後下縁骨棘(骨増殖)投球の反復による牽引ストレス
バンカート損傷関節窩前下方関節唇の剥離肩関節前方脱臼
ヒル・サックス損傷上腕骨頭後外側陥凹(圧迫骨折)肩関節前方脱臼
ベネット骨折第1中手骨基部関節内脱臼骨折母指軸方向への外力
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