学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §22 各論(軟部組織損傷) 上肢 / QJ31P080

理由で解く 柔道整復師

QJ31P080 柔道整復理論

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午後 問80
問題
尺骨神経管での絞扼によってみられる感覚障害部位はどれか。
選択肢
1 手掌尺側
2 手掌橈側
3 手背尺側
4 手背橈側
解答
正解1(手掌尺側)
解説

尺骨神経管(ギヨン管)は豆状骨と有鉤骨鉤の間にあり、ここで絞扼されると手掌の尺側(小指と環指尺側の掌側)に感覚障害が出る。手背尺側の感覚は保たれるのが最大の特徴である。

尺骨神経は手関節より約5cm近位で「背側手枝(手背枝)」を分岐させ、これが手背の尺側の皮膚感覚を担う。この分岐はギヨン管よりも手前で起こるため、ギヨン管内での絞扼では手背尺側の感覚が残る。一方、ギヨン管を通過した尺骨神経は浅枝(掌側の感覚+短掌筋)と深枝(骨間筋・母指内転筋などの運動)に分かれるため、障害されるのは手掌尺側の感覚と手内在筋の運動である。同じ尺骨神経障害でも、より近位の肘部管症候群では背側手枝も巻き込まれるため手背尺側にも感覚障害が及ぶ。したがって「手背尺側の感覚が保たれているか」は、絞扼部位が手関節か肘かを見分ける決め手になる。しびれが持続する場合は自己判断で経過をみず、医療機関での神経伝導検査や画像評価につなぐ。

✓ 1. 正しい
手掌尺側
ギヨン管を出た尺骨神経浅枝が、小指と環指尺側半の掌側および手掌尺側の皮膚感覚を支配する。絞扼はこの浅枝の走行より近位で起こるため、感覚障害はまさにこの領域に一致して現れる。深枝も同時に障害されれば、骨間筋の萎縮やフローマン徴候といった運動障害を伴う。
✗ 2. 誤り
手掌橈側
手掌橈側から母指・示指・中指の掌側は正中神経の支配領域である。ここのしびれは手根管症候群を疑う所見であり、尺骨神経管とは通り道も支配領域も異なる。
✗ 3. 誤り
手背尺側
手背尺側は尺骨神経の背側手枝が支配するが、この枝は手関節の約5cm近位ですでに分かれてギヨン管を通らない。そのためギヨン管での絞扼では感覚が保たれる。ここに感覚障害があるなら、肘部管など、より近位での障害を考える。
✗ 4. 誤り
手背橈側
手背橈側は橈骨神経浅枝の支配領域である。この部位の感覚障害は、上腕骨骨幹部骨折後や前腕遠位でのきつい固定・時計バンドなどによる橈骨神経浅枝の障害で問題になるもので、尺骨神経とは無関係である。
ポイント
  • ギヨン管=豆状骨と有鉤骨鉤の間の尺骨神経の通り道。出口で浅枝(感覚)と深枝(運動)に分かれる。
  • 感覚障害は手掌尺側と小指・環指尺側の掌側に限局する。
  • 尺骨神経背側手枝は手関節の約5cm近位で分岐するため、ギヨン管障害では手背尺側の感覚が残る。
  • 手背尺側にも感覚障害があれば肘部管症候群など、より近位の障害を考える。
  • 手掌橈側は正中神経、手背橈側は橈骨神経浅枝。支配領域を掌背・橈尺の4区分で整理する。
比較表
ギヨン管症候群(尺骨神経管)肘部管症候群
絞扼部位豆状骨と有鉤骨鉤の間内側上顆後方の尺骨神経溝〜オズボーン靱帯下
手掌尺側の感覚障害される障害される
手背尺側の感覚保たれる(背側手枝は通らない)障害される
運動障害深枝が巻き込まれれば手内在筋(骨間筋など)手内在筋+尺側手根屈筋・深指屈筋尺側
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