学習トップ理由で解く 柔道整復師病理学概論 ▸ §7 炎症 / QJ31A123

理由で解く 柔道整復師

QJ31A123 病理学概論

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午前 問123
問題
炎症の分類と疾患の組合せで正しいのはどれか。
選択肢
1 肉芽腫性炎-野兎病
2 増殖性炎-梅毒
3 滲出性炎 -膿胸
4 出血性炎-アレルギー性鼻炎
解答
正解1(肉芽腫性炎-野兎病) または 3(滲出性炎 -膿胸) 〈複数正答:いずれも正解〉
解説

※本問は複数正答(厚生労働省が複数の選択肢を正解と認定)。選択肢 1/3 のいずれを選んでも正解。

炎症の分類は「その場で何がいちばん目立っているか」で決まる。実質細胞の変性・壊死が主役なら変質性炎、血管から滲み出た成分が主役なら滲出性炎、細胞の増殖が主役なら増殖性炎である。増殖性炎のうち、類上皮細胞のかたまり(肉芽腫)をつくる一群を肉芽腫性炎(特異性炎)と呼ぶ。ただしこの肉芽腫性炎の置き場所には流派があり、増殖性炎の一型(下位分類)として記載する教科書と、増殖性炎と並列の独立カテゴリーとして扱う教科書の両方がある。本問の出題者は後者、すなわち肉芽腫性炎と増殖性炎を別枠として書き分ける立場に立っている(肢1「肉芽腫性炎」と肢2「増殖性炎」を別々に立てていることから読み取れる)。以下の解説はこの出題者の分類軸に沿って読んでほしい。

本問は1と3のどちらも成立する組合せと判断され、正答表記は「1又は3」、採点上は複数正解として扱われた。どちらを選んでも正解になるため、実質的には残る2と4を確実に切れるかが得点の分かれ目になる。野兎病はFrancisella tularensisによる人獣共通感染症で、リンパ節などに類上皮細胞と多核巨細胞からなる肉芽腫(しばしば中心に乾酪壊死を伴う)を形成する。膿胸は胸腔内に膿がたまった状態で、好中球と融解した組織が液性成分とともに滲み出す化膿性炎、すなわち滲出性炎の一型である。分類名を丸暗記するより、「滲み出ているものは漿液か、フィブリンか、膿か、血液か」「増えているのは線維芽細胞か、類上皮細胞か」と中身から逆算して分類名にたどり着く練習をしておくと、初見の疾患名にも対応できる。

✓ 1. 正しい
肉芽腫性炎-野兎病
野兎病では病原体がマクロファージ内で生き残るため、マクロファージが類上皮細胞へ変化して病原体を取り囲み、多核巨細胞を交えた肉芽腫をつくる。結核・サルコイドーシス・ハンセン病・猫ひっかき病などと同じ肉芽腫性炎(特異性炎)の仲間として整理しておくとよい。
✓ 3. 正しい
滲出性炎 -膿胸
膿胸は胸腔に膿(好中球・壊死組織・細菌の混合物)が貯留したもので、化膿性炎に当たる。化膿性炎は漿液性炎・線維素性炎・出血性炎などと並ぶ滲出性炎の一型なので、この組合せも正しい。膿がたまる病名(膿胸・膿瘍・蓄膿症・蜂窩織炎)を見たら滲出性炎(化膿性炎)と結びつけて覚えるとよい。
✗ 2. 誤り
増殖性炎-梅毒
梅毒は第3期にゴム腫(ゴム様の弾力をもつ腫瘤で、正体は類上皮細胞と多核巨細胞からなる肉芽腫)をつくる、結核と並ぶ肉芽腫性炎(特異性炎)の代表である。この肢は「分類名の対応がずれている」ために誤りとされるのだが、事情がやや込み入っているので、①出題者の分類軸、②教科書による差、③公式の受理範囲、の3つに分けて整理する。
① 出題者の分類軸:本問は肢1で「肉芽腫性炎-野兎病」を独立に立てており、肉芽腫性炎と増殖性炎を別カテゴリーとして書き分けている。この軸に立つ限り、肉芽腫をつくる梅毒に対応させるべき分類名は肉芽腫性炎であって、増殖性炎ではない。同じ軸の上では「肉芽腫をつくらない細胞増生」が増殖性炎の担当範囲になるからである。
② 教科書による差:一方、柔整・鍼灸系を含む多くの病理学教科書は、特異性炎(肉芽腫性炎)を増殖性炎の一亜型として記載している。その枠組みをそのまま当てはめれば「増殖性炎-梅毒」も理屈のうえでは誤りとは言い切れない。つまりこの肢の当否は、解答者がどちらの分類体系で読むかに依存しており、分類軸の揺れが問題そのものに内在している(本問に複数正解措置がとられた背景も、この炎症分類の扱いの揺れと無関係ではない)。
③ 公式の受理範囲:とはいえ実際に受理されたのは1と3のみで、2は受理されていない。したがって試験対策としては、体系論に踏み込まず「梅毒=肉芽腫性炎(特異性炎)」の1対1対応で固定して覚えるのが安全である。
取るべき判別の指針:選択肢に「増殖性炎」という語が単独で出てきたら、肉芽腫をつくらない線維芽細胞増生型(肝硬変、間質性肺炎、慢性糸球体腎炎など)を指していると読む。逆に肉芽腫をつくる疾患(結核・梅毒・ハンセン病・サルコイドーシス・野兎病・猫ひっかき病)は、選択肢に「肉芽腫性炎」「特異性炎」の枠が用意されていればそちらへ寄せる。この読み方をしておけば、本問のように両方の枠が並んだときに迷わない。
✗ 4. 誤り
出血性炎-アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎はI型アレルギーで、肥満細胞から放出されたヒスタミンにより血管透過性が亢進し、透明でサラサラした鼻汁が大量に出る。滲出物の主体は血漿由来の漿液なので、滲出物の中身で分ければ漿液性炎に分類される(鼻粘膜という粘膜面に起こる滲出性炎なので、起こる場所に着目した呼び方では漿液性カタルとも呼ばれる)。なお「カタル性炎」は粘膜に起こる滲出性炎の総称という部位基準の呼称であり、漿液性カタル・粘液性カタル・膿性カタルを含む。漿液性炎と同義ではなく、分類の軸そのものが違う点に注意したい。出血性炎は血管壁の傷害が強く赤血球まで漏れ出るもので、インフルエンザ・ペスト・炭疽・ワイル病などが代表。鼻汁が透明か血性かという「見た目」から分類を判断する習慣をつけると取り違えにくい。
ポイント
  • 炎症の分類の柱は変質性炎・滲出性炎・増殖性炎の3つ(+増殖性炎の一型としての肉芽腫性炎=特異性炎)。「変性壊死が主役/滲み出しが主役/細胞増殖が主役」で振り分け、細胞増殖のうち類上皮細胞肉芽腫をつくるものを肉芽腫性炎として切り出す、と一本の枠組みで覚える。
  • ただし本問の出題者は肉芽腫性炎を増殖性炎と別枠に立てている(肢1と肢2の書き分け)。選択肢に両方の枠が並んでいたら、肉芽腫をつくる疾患は肉芽腫性炎へ、肉芽腫をつくらない線維芽細胞増生型は増殖性炎へ寄せる。
  • 滲出性炎は滲出物の中身で細分する。漿液性(熱傷の水疱・アレルギー性鼻炎)、線維素性(絨毛心・ジフテリア)、化膿性(膿胸・膿瘍・蜂窩織炎)、出血性(インフルエンザ・ペスト・炭疽)、壊疽性。
  • カタル性炎は軸が違う。「粘膜に起こる滲出性炎」という部位基準の総称で、漿液性カタル・粘液性カタル・膿性カタルを含む。漿液性炎と同義ではなく、アレルギー性鼻炎は「中身で言えば漿液性炎、場所で言えば漿液性カタル」と二重に表現できる。
  • 肉芽腫性炎=特異性炎は類上皮細胞と多核巨細胞が主役。結核・梅毒・ハンセン病・サルコイドーシス・野兎病・猫ひっかき病・クローン病をセットで暗記する。増殖性炎の典型例は肝硬変・間質性肺炎(線維芽細胞と膠原線維の増生)。
  • 本問は「1又は3」で複数正解の措置。1と3のどちらを選んでも正解となった。2が受理されなかった理由は上記の分類軸の取り方による。
  • 疾患名から分類を答えるときは、まず「そこに何がたまっているか・何が増えているか」を思い浮かべると迷わない。
比較表
分類主役になるもの代表疾患
変質性炎実質細胞の変性・壊死劇症肝炎、ウイルス性心筋炎
滲出性炎(漿液性)漿液熱傷の水疱、アレルギー性鼻炎、漿液性胸膜炎
滲出性炎(線維素性)フィブリン線維素性心膜炎(絨毛心)、ジフテリアの偽膜
滲出性炎(化膿性)好中球=膿膿胸、膿瘍、蓄膿症、蜂窩織炎
滲出性炎(出血性)赤血球インフルエンザ、ペスト、炭疽、ワイル病
滲出性炎(カタル性)
※中身ではなく部位に着目した呼称
粘膜面に出る滲出液
粘膜に起こる滲出性炎の総称で、漿液性カタル/粘液性カタル/膿性カタルを含む
かぜの鼻炎、急性気管支炎
アレルギー性鼻炎は中身で言えば漿液性炎、場所で言えば漿液性カタル)
増殖性炎線維芽細胞・膠原線維の増生
(肉芽腫はつくらない型)
肝硬変、間質性肺炎、慢性糸球体腎炎
 └ 肉芽腫性炎(特異性炎)
=増殖性炎の一型
類上皮細胞・多核巨細胞(肉芽腫)結核、梅毒、ハンセン病、サルコイドーシス、野兎病、猫ひっかき病、クローン病

※上表は肉芽腫性炎を増殖性炎の一型(下位分類)として字下げ表記した。多くの教科書もこの体系をとる。ただし本問の出題者は肉芽腫性炎と増殖性炎を別枠として扱っており(肢1と肢2の書き分け)、その軸では「増殖性炎」の担当範囲は上表の増殖性炎の行、すなわち肉芽腫をつくらない線維芽細胞増生型に限られる。梅毒は下段の肉芽腫性炎に対応させる。

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