学習トップ理由で解く 柔道整復師病理学概論 ▸ §7 炎症 / QJ32A124

理由で解く 柔道整復師

QJ32A124 病理学概論

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午前 問124
問題
炎症の経過で正しいのはどれか。
選択肢
1 肉芽形成で炎症治癒は終結する。
2 線維化は細胞傷害直後にみられる反応である。
3 細胞傷害によって毛細血管の透過性亢進が起こる。
4 急性炎症ではリンパ球が血管外に遊出し、遅れて好中球が遊出する。
解答
正解3(細胞傷害によって毛細血管の透過性亢進が起こる。)
解説

組織が傷害されると、まず化学伝達物質が放出されて毛細血管・細静脈の透過性が高まり、血漿成分がしみ出す。これが炎症の出発点である。

急性炎症は決まった順序で進む。まず一過性の細動脈収縮に続いて血管が拡張し、局所の血流が増えて発赤と熱感が出る。次にヒスタミン、ブラジキニン、ロイコトリエンなどの化学伝達物質によって内皮細胞が収縮し、細胞間の隙間が開いて血管透過性が亢進する。ここから蛋白に富む滲出液が組織へ出て腫脹と浮腫を生じる。続いて白血球が血管壁に沿って流れ(辺縁趨向)、接着分子を介してくっつき、隙間から遊出して傷害部位へ集まる。この主役は最初の数時間から24時間程度が好中球で、その後に単球・マクロファージが加わり、慢性期にはリンパ球と形質細胞が中心となる。組織欠損が大きければ、毛細血管の新生と線維芽細胞の増殖からなる肉芽組織ができ、そこにコラーゲンが蓄積して線維化し、細胞や血管が減って瘢痕に変わることで治癒に至る。つまり線維化は傷害直後ではなく、数日から数週かけて進む修復期の現象である。

✓ 3. 正しい
細胞傷害によって毛細血管の透過性亢進が起こる。
傷害された細胞や肥満細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が放出され、これを受けた内皮細胞が収縮して細胞間隙が開く。その結果、蛋白と水分を含む血漿成分が血管外へ出る。炎症で生じるこの液は蛋白に富み比重が高い滲出液で、うっ血や低蛋白血症で生じる比重の低い漏出液とは区別される。
✗ 1. 誤り
肉芽形成で炎症治癒は終結する。
肉芽組織は修復の途中段階であって、ゴールではない。毛細血管と線維芽細胞に富む肉芽組織がコラーゲンを産生し、やがて細胞成分と血管が減って線維性の瘢痕に置き換わったところで治癒が完了する。肉芽ができた段階で終わりと考えると、その後の瘢痕拘縮などの経過を見誤る。
✗ 2. 誤り
線維化は細胞傷害直後にみられる反応である。
直後に起こるのは血管の拡張と透過性亢進、そして滲出である。線維芽細胞が増殖してコラーゲンを沈着させるのは、おおむね傷害の数日後から始まり、数週から数か月かけて成熟していく。時間軸を取り違えないことが本問の要点である。
✗ 4. 誤り
急性炎症ではリンパ球が血管外に遊出し、遅れて好中球が遊出する。
順序が逆である。急性炎症で最初に遊出するのは好中球で、遅れて単球・マクロファージが加わる。リンパ球や形質細胞が主体になるのは炎症が慢性に移行してからで、この細胞像の違いは組織診断で急性か慢性かを判断する手がかりにもなる。
ポイント
  • 炎症の五徴:発赤・熱感・腫脹・疼痛・機能障害。
  • 急性炎症の順序:細動脈収縮 → 血管拡張 → 透過性亢進 → 滲出 → 白血球遊出(好中球が先)。
  • 浸潤細胞の主役は時間とともに交代する。好中球 → マクロファージ → リンパ球・形質細胞。
  • 修復は肉芽組織 → 線維化 → 瘢痕の順に進む。線維化は数日以降の後期の変化。
  • 滲出液(炎症、蛋白多い、比重高い)と漏出液(うっ血・低蛋白、蛋白少ない、比重低い)を区別する。
比較表
おおよその時期主な出来事主役の細胞
血管反応直後〜数分細動脈収縮 → 血管拡張、発赤・熱感
滲出数分〜数時間透過性亢進、血漿成分の滲出、腫脹・浮腫—(化学伝達物質が主役)
白血球遊出(急性)数時間〜24時間辺縁趨向・接着・遊走、貪食好中球
亜急性24〜48時間以降壊死組織の処理、サイトカイン産生単球・マクロファージ
慢性・修復数日〜数週以降肉芽組織形成 → コラーゲン沈着 → 瘢痕リンパ球・形質細胞、線維芽細胞
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