学習トップ理由で解く 柔道整復師生理学 ▸ §12 神経 / QJ31A082

理由で解く 柔道整復師

QJ31A082 生理学

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午前 問82
問題
神経細胞の活動電位で膜電位の急激な上昇に寄与するのはどれか。
選択肢
1 K+の細胞内への流入
2 K+の細胞外への流出
3 Na+の細胞内への流入
4 Na+の細胞外への流出
解答
正解3(Na+の細胞内への流入)
解説

活動電位の急激な上昇(脱分極相)をつくるのは、電位依存性Na+チャネルが開いて起こるNa+の細胞内への流入です。正答は3。

静止している神経細胞の膜ではK+漏洩チャネルが開いており、K+が濃度勾配に従って細胞外へ出ようとする力と、それによって細胞内に残る負電荷がK+を引き止める力とがつり合う−70mV前後(細胞内が負)で膜電位は安定します。この前提となるイオン分布(Na+は細胞外に多い/K+は細胞内に多い)を維持しているのがNa+/K+ポンプで、ポンプ自体が膜電位に直接与える寄与は数mV程度です。刺激で膜電位が閾値(−55mV前後)まで上がると、電位依存性Na+チャネルが一斉に開きます。Na+にとっては「細胞外に多い」という濃度勾配と「細胞内が負」という電気的勾配の両方が内向きに働くため、Na+が一気に細胞内へ流入します。この内向き電流がさらに脱分極を進める正のフィードバックとなり、膜電位は0mVを超えてオーバーシュートします。その直後にNa+チャネルは不活性化し、遅れて開いた電位依存性K+チャネルからK+が細胞外へ流出することで再分極が起こります。「上がるときは陽イオンが入る、下がるときは陽イオンが出る」と、電荷の出入りの向きから考えると迷いません。

✓ 3. 正しい
Na+の細胞内への流入
陽イオンであるNa+が細胞内へ入ると、細胞内の正電荷が増えて膜電位は一気にプラス方向へ振れます。これが脱分極相(上昇相)の実体です。Na+は細胞外に多く細胞内が負に帯電しているため、チャネルさえ開けば強い駆動力で流入します。
✗ 1. 誤り
K+の細胞内への流入
K+は細胞内の濃度が細胞外よりはるかに高く、化学的な勾配は「外へ出る」向きです。活動電位の際にK+が細胞内へ流れ込むことはありません。K+の動きは膜電位を負の方向へ戻す役割と結びつけて覚えましょう。
✗ 2. 誤り
K+の細胞外への流出
これは実際に起こる現象ですが、担うのは上昇相ではなく再分極相(下降相)と後過分極です。陽イオンが細胞外へ出れば細胞内は負に戻るので、膜電位は下がります。上昇に寄与するイオン流ではないため、この設問の答えにはなりません。
✗ 4. 誤り
Na+の細胞外への流出
Na+は細胞外の濃度が高いため、チャネルを通って受動的に外へ出ることはありません。Na+を細胞外へ運ぶのはATPを使うNa+/K+ポンプで、これは活動電位のたびに崩れたイオン勾配を長期的に立て直す装置です。上昇相を直接つくるものではないと整理してください。
ポイント
  • 脱分極相(急上昇)=Na+の細胞内流入。電位依存性Na+チャネルが閾値で一斉に開く。
  • 再分極相(下降)=K+の細胞外流出。Na+チャネルの不活性化と、遅れて開くK+チャネルが担う。
  • 静止膜電位(−70mV前後)はK+漏洩チャネルを通るK+流出で決まり、K+平衡電位に近い値になる。
  • イオン分布は「Na+は外に多い/K+は内に多い」。この勾配を維持するのがNa+/K+ポンプ(3Na+を出し2K+を入れる、ATP依存)で、膜電位への直接の寄与は数mVにとどまる。
  • 陽イオンが入れば膜電位は上がり、出れば下がる。この一点で4択をふるい分けられる。
  • 活動電位は閾値を超えると大きさが一定になる(全か無かの法則)。刺激の強さは発火頻度で表現される。
比較表
主に働くチャネルイオンの動き膜電位の変化
静止時K+漏洩チャネルK+がわずかに流出−70mV前後で安定
脱分極相(上昇)電位依存性Na+チャネルNa+が細胞内へ流入急上昇し+方向へオーバーシュート
再分極相(下降)電位依存性K+チャネルK+が細胞外へ流出負の方向へ戻る
後過分極K+チャネルの閉鎖の遅れK+流出が続く静止電位より一時的に低下
回復(相間を通じて)Na+/K+ポンプNa+を汲み出しK+を取り込む濃度勾配を再構築(膜電位への直接寄与は数mV)
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