学習トップ理由で解く 柔道整復師解剖学 ▸ §11 体表解剖 / QJ31A080

理由で解く 柔道整復師

QJ31A080 解剖学

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午前 問80
問題
肩、殿部における筋肉注射で正しいのはどれか。
選択肢
1 尺骨神経損傷に注意する。
2 肩峰より5横指下に注射する。
3 下殿動脈損傷に注意する。
4 殿部の下外側 1/4に注射する。
解答
正解3(下殿動脈損傷に注意する。)
解説

殿部の筋肉注射では、坐骨神経とともに下殿動脈を傷つけない部位選びが要点で、正しいのは選択肢3である。

殿部で避けたいのは下内側の領域で、ここには梨状筋下孔から出た坐骨神経・下殿神経・下殿動静脈・陰部神経・内陰部動脈などが集まって下行している。そのため注射部位は、殿部を四分した上外側1/4、あるいは中殿筋をねらうクラーク点(上前腸骨棘と上後腸骨棘を結ぶ線の外側1/3)やホッホシュテッター法を選ぶのが基本である。肩では三角筋の最も厚い中央部が的で、目安は肩峰の下およそ3横指。それより下げると、三角筋の深層を後方から前方へ回る腋窩神経や後上腕回旋動脈、さらに下方では上腕骨橈骨神経溝を走る橈骨神経に近づくため、骨指標を触って位置を決めることが安全につながる。

✓ 3. 正しい
下殿動脈損傷に注意する。
下殿動脈は内腸骨動脈の枝で、梨状筋下孔を通って大殿筋の深層に分布する。坐骨神経・下殿神経と同じ血管神経束をなすため、殿部の下内側に針を進めると同時に傷つける恐れがある。上外側1/4やクラーク点を選べばこの束を確実に避けられる。
✗ 1. 誤り
尺骨神経損傷に注意する。
尺骨神経は上腕の内側を下って肘部管をくぐり前腕内側へ向かう神経で、三角筋の注射部位とは離れている。肩の筋肉注射で気をつけるのは、三角筋の深層を回る腋窩神経と後上腕回旋動脈、そして刺入点が下がりすぎた場合の橈骨神経である。
✗ 2. 誤り
肩峰より5横指下に注射する。
5横指も下げると三角筋の厚みが乏しい下端に近づき、腋窩神経や橈骨神経の走行域に入り込む。肩峰を触知し、その約3横指下(およそ5cm)にある三角筋中央部を刺入点として選ぶ。
✗ 4. 誤り
殿部の下外側 1/4に注射する。
四分法で選ぶのは上外側1/4である。下側の区画は坐骨神経・下殿動脈・下殿神経が走る危険域にかかるため、上前腸骨棘・腸骨稜・上後腸骨棘といった骨指標を確かめたうえで上外側を選ぶ。
ポイント
  • 殿部の筋肉注射は四分法の上外側1/4、またはクラーク点(上前腸骨棘と上後腸骨棘を結ぶ線の外側1/3)を選ぶ。
  • 避けるべき下内側には、梨状筋下孔から出る坐骨神経・下殿神経・下殿動静脈・陰部神経・内陰部動脈が走る。
  • 上殿神経・上殿動脈は梨状筋上孔から出て中殿筋・小殿筋・大腿筋膜張筋へ向かう。
  • 三角筋への注射は肩峰の約3横指下、筋の最も厚い中央部。腋窩神経と後上腕回旋動脈が深層を回る。
  • 腋窩神経は上腕骨外科頸を後ろから回るため、外科頸骨折や肩関節前方脱臼で麻痺しやすい(三角筋の萎縮・肩外側の感覚障害)。
  • 柔道整復師の業務に注射は含まれないが、この局所解剖は施術時の圧迫部位の判断や神経・血管損傷の把握に直結する。
比較表
部位刺入点の目安近くにあり避けたい構造
三角筋肩峰の約3横指下、筋の中央部腋窩神経・後上腕回旋動脈、(下方で)橈骨神経
殿部(四分法)上外側1/4下内側の坐骨神経・下殿動静脈・下殿神経
殿部(クラーク点)上前腸骨棘と上後腸骨棘を結ぶ線の外側1/3同上(中殿筋をねらう)
梨状筋上孔上殿神経・上殿動静脈
梨状筋下孔坐骨神経・下殿神経・下殿動静脈・陰部神経
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