学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ30P117

理由で解く 柔道整復師

QJ30P117 柔道整復理論

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午後 問117
問題
52歳の男性。工事現場で仕事をしている。明らかな原因はないが数日前から下腿外側から足背にかけてしびれを自覚している。腰部に圧痛はないが、大殿筋の筋力低下がみられた。確認すべき圧痛部位はどれか。
選択肢
1 上前腸骨棘内側部
2 梨状筋部
3 内転筋管出口部
4 腓骨頭後方部
解答
正解2(梨状筋部)
解説

下腿外側から足背のしびれに加えて大殿筋の筋力低下がある。二つを同時に説明できるのは、下殿神経と坐骨神経がともに通る殿部=梨状筋部の高さの障害である。

下腿外側から足背にかけての感覚はおもに浅腓骨神経(L5領域)が担う。この範囲のしびれだけなら、腓骨頭での総腓骨神経絞扼でも説明できてしまう。しかし大殿筋を支配するのは下殿神経(L5〜S2)であり、これは骨盤内で仙骨神経叢から分かれ、梨状筋下孔を通って殿部へ出る神経である。腓骨頭という末梢のレベルでは大殿筋は決して弱らない。つまり「大殿筋の筋力低下がある」時点で、障害部位は下殿神経が分かれるより近位、すなわち坐骨神経と下殿神経が並んで梨状筋下孔を通過する高さに絞られる。腰部に圧痛がないことも、腰椎由来ではなく殿部の絞扼であることを支持する。確認すべきは梨状筋部(大転子と仙骨を結ぶ線の中央付近)の圧痛で、あわせてFAIR肢位(股関節屈曲・内転・内旋)での症状再現、SLRとの比較、下垂足の有無を診る。工事現場での長時間のしゃがみ込みや重量物運搬など、殿部を圧迫する作業姿勢の聴取も欠かせない。

✓ 2. 正しい
梨状筋部
坐骨神経と下殿神経がともに梨状筋下孔を通るため、この高さの絞扼なら下腿外側〜足背のしびれと大殿筋の筋力低下を一度に説明できる。梨状筋部の圧痛、FAIR肢位での症状再現を確認する。
✗ 1. 誤り
上前腸骨棘内側部
鼠径靱帯の下で外側大腿皮神経が絞扼される部位(外側大腿皮神経障害/知覚異常性大腿痛)。症状は大腿外側の感覚障害にとどまり、純粋な知覚神経なので運動麻痺は生じない。しびれの範囲も大殿筋の所見も説明できない。
✗ 3. 誤り
内転筋管出口部
大腿内側の内転筋管から伏在神経が出る部位。障害されると下腿内側から足内側の感覚障害が生じる。今回の下腿外側〜足背という範囲とは正反対であり、伏在神経も知覚枝のため筋力低下は伴わない。
✗ 4. 誤り
腓骨頭後方部
総腓骨神経が骨に接して走る絞扼好発部位で、下腿外側〜足背のしびれと下垂足を生じる。しびれの範囲だけなら合致するが、下殿神経はこれよりはるかに近位で分岐しているため、大殿筋の筋力低下は説明できない。ここも触診はするが、今回の所見の説明としては不十分。
ポイント
  • 症状の範囲だけでなく「どの筋が弱っているか」で障害の高さ(レベル)を決める
  • 大殿筋=下殿神経(L5〜S2)支配。梨状筋下孔を通るので、弱れば殿部より近位の障害
  • 下腿外側〜足背のしびれ=浅腓骨神経/L5領域。腓骨頭でも殿部でも同じ範囲に出る
  • 腰部に圧痛がない+殿部レベルの所見=梨状筋症候群を疑い、FAIR肢位で再現を確認する
  • 作業姿勢(長時間のしゃがみ込み、重量物運搬)の聴取と、下垂足の有無の確認をあわせて行う
比較表
圧痛部位絞扼される神経感覚障害の範囲運動障害
梨状筋部坐骨神経・下殿神経大腿後面〜下腿外側〜足背大殿筋、下腿の筋群
上前腸骨棘内側部外側大腿皮神経大腿外側なし(知覚枝)
内転筋管出口部伏在神経下腿内側〜足内側なし(知覚枝)
腓骨頭後方部総腓骨神経下腿外側〜足背下垂足(前脛骨筋など)
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