学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ30P118

理由で解く 柔道整復師

QJ30P118 柔道整復理論

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午後 問118
問題
18歳の男子。高校でハードルの選手である。2か月前にハムストリングス1度損傷を発症した。患者から「『肉離れはくせになる』とSNSで見たのですが、再発予防はどうしたらいいですか?」と質問があった。説明で誤っているのはどれか。
選択肢
1 筋の硬さとの関連を説明した。
2 持続的な負荷への注意を説明した。
3 ストレッチの重要性を説明した。
4 踵殿距離 (HBD)との関連を説明した。
解答
正解4(踵殿距離 (HBD)との関連を説明した。)
解説

踵殿距離(HBD)は腹臥位で膝を曲げ、踵と殿部の距離を測る大腿四頭筋(特に大腿直筋)の柔軟性の指標である。ハムストリングスの評価にはならないため、この症例の再発予防の説明としては当てはまらない。

ハムストリングス肉離れは、疾走時の遊脚後期に膝が伸びながら股関節が屈曲する局面で、筋が引き伸ばされつつ力を出す(遠心性収縮)ときに起こりやすい。ハードルは股関節の可動域を大きく使うため、その負荷が繰り返しかかる。再受傷の危険因子として、柔軟性の低下、疲労の蓄積と練習量の急増、左右差、遠心性筋力の不足、痛みが完全に取れないままの復帰が挙げられる。したがって指導は、ウォームアップと運動後のストレッチ、ノルディックハムストリングスなど遠心性収縮を用いた筋力強化、走行量・本数の管理、そして「痛みなく全力疾走できること」を含む復帰基準の確認という具体的な行動で組み立てる。ハムストリングスの柔軟性は、SLR(下肢伸展挙上)角度、膝関節伸展テスト、指床間距離(FFD)などで評価する。「くせになる」という不安には、条件を整えれば再発率は下げられると伝え、やるべきことを一緒に決めていくのがよい。

✓ 4. これが答え(誤っている説明)
踵殿距離 (HBD)との関連を説明した。
HBDは腹臥位で膝を屈曲させ、踵と殿部の距離から大腿四頭筋(大腿直筋)の伸張性をみる指標である。評価している筋が違うため、ハムストリングス肉離れの再発予防の説明としては的外れになる。ここではSLR角度や指床間距離(FFD)といったハムストリングスの柔軟性指標を用いる。
✗ 1. 答えではない(適切な説明)
筋の硬さとの関連を説明した。
柔軟性の低下した筋は伸張時に張力を逃がせず、遠心性収縮の局面で筋線維が損傷しやすい。左右差の確認も含めて、筋の硬さと再発の関連を伝えることは妥当である。
✗ 2. 答えではない(適切な説明)
持続的な負荷への注意を説明した。
疲労が蓄積した筋は力の発揮も衝撃の吸収も落ち、再受傷につながる。練習量や強度の急な増加を避け、休養日を確保するという負荷管理の説明は再発予防の柱である。
✗ 3. 答えではない(適切な説明)
ストレッチの重要性を説明した。
ウォームアップでの動的ストレッチと運動後の静的ストレッチは、柔軟性の維持と筋の状態の把握に役立つ。痛みの出ない範囲で継続することを、時間や回数まで具体的に示して指導する。
ポイント
  • HBD(踵殿距離)=大腿四頭筋(大腿直筋)の柔軟性指標。ハムストリングスの評価ではない。
  • ハムストリングスの柔軟性はSLR角度、膝関節伸展テスト、指床間距離(FFD)で評価する。
  • 受傷は疾走の遊脚後期、伸ばされながら力を出す遠心性収縮の局面で起こりやすい。
  • 再発の危険因子は柔軟性低下、疲労蓄積・練習量の急増、左右差、遠心性筋力不足、早すぎる復帰。
  • 予防はストレッチ+遠心性トレーニング(ノルディックハムストリングス等)+負荷管理+復帰基準の確認。
比較表
検査肢位評価する筋
踵殿距離(HBD)腹臥位で膝屈曲大腿四頭筋(大腿直筋)
SLR(下肢伸展挙上)背臥位で膝伸展位のまま股関節屈曲ハムストリングス
膝関節伸展テスト背臥位で股関節90度屈曲位から膝を伸展ハムストリングス
指床間距離(FFD)立位体前屈ハムストリングス・体幹後面
トーマステスト背臥位で対側股関節を屈曲腸腰筋(股関節屈筋の拘縮)
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