学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ30P110

理由で解く 柔道整復師

QJ30P110 柔道整復理論

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午後 問110
問題
65歳の女性。足を滑らせ右肩関節外転・伸展で手を衝き負傷した。来所時、右肩関節が水平位で弾発性固定し上腕は短縮して見えた。考えられるのはどれか。
選択肢
1 腋窩脱臼
2 鎖骨下脱臼
3 肩峰下脱臼
4 烏口下脱臼
解答
正解2(鎖骨下脱臼)
解説

肩関節前方脱臼の亜型は「上腕がどの角度で固定されるか」と「見かけの長さ」で見分ける。水平位での弾発性固定+上腕の短縮は鎖骨下脱臼の像である。

外転・伸展位で手を衝くと、上腕骨頭は関節包の前下方を破って前方へ逸脱する。骨頭が落ち着く位置によって烏口下・鎖骨下・腋窩(関節窩下)脱臼に分けられ、上腕の肢位と見かけの長さは「骨頭がどこへ行ったか」で型ごとに決まる。烏口下脱臼では骨頭が烏口突起の下にとどまるため、上腕は軽度外転・内旋位にとどまり、やや延長して見える。鎖骨下脱臼では骨頭が烏口突起を越えて鎖骨の下方、すなわち内上方まで転位するため、上腕はほぼ水平位まで外転した位置で弾発性に固定され、健側と比べて短縮して見える。腋窩脱臼では骨頭が関節窩の下方(腋窩)へ落ち込むため、上腕は水平位を越える著明な外転〜挙上位をとり、延長して見える。三型のうち短縮するのは鎖骨下脱臼だけであり、そこが本問の決め手になる。高齢者では関節包や腱板の脆弱化により転位が大きくなりやすい。いずれの型でも肩峰の突出(肩峰下の空虚)、三角筋部の膨隆消失、モーレンハイム窩の膨隆を確認し、あわせて腋窩神経(三角筋部外側の感覚)と橈骨動脈拍動を必ずチェックしてから整復・搬送の判断を行う。

✓ 2. 正しい
鎖骨下脱臼
骨頭が鎖骨の下方(烏口突起よりさらに内上方)へ転位するため、上腕は水平位に近い外転位で固定され、健側と比べて短縮して見える。設問の「水平位で弾発性固定」「上腕は短縮して見えた」という二つの所見がそのまま当てはまる。
✗ 1. 誤り
腋窩脱臼
骨頭が関節窩の下方、腋窩へ落ち込む型。上腕は著明な外転位(水平位を越えて挙上位に近い)で固定され、上腕は短縮ではなく延長して見える。腋窩神経損傷の合併にも注意が必要な型である。
✗ 3. 誤り
肩峰下脱臼
後方脱臼の代表型で、骨頭が肩峰の下・後方へ転位する。上腕は内転・内旋位で固定され、外旋がほとんどできなくなるのが特徴。受傷機転も内転内旋位への後方からの外力で、外転・伸展位で手を衝いた本症例とは異なる。
✗ 4. 誤り
烏口下脱臼
前方脱臼で最も頻度が高い型(烏口下脱臼)だが、骨頭が烏口突起の下にとどまるため上腕は軽度外転・内旋位にとどまり、見かけの長さはやや延長する。水平位固定・短縮という所見の組み合わせは説明できない。
ポイント
  • 前方脱臼の三型は「上腕の外転角」で並ぶ:烏口下(軽度外転)<鎖骨下(ほぼ水平位)<腋窩(水平位を越える挙上位)
  • 見かけの長さは型ごとに覚える。烏口下=やや延長、鎖骨下=短縮、腋窩=延長。短縮するのは鎖骨下脱臼だけ
  • 腋窩脱臼は骨頭が関節窩の下方へ落ちる型なので、外転角は最も大きく、長さは延長する
  • 肩峰下脱臼は後方脱臼。内転・内旋位固定で外旋不能というまったく別の像になる
  • 共通所見は肩峰の突出、三角筋部の膨隆消失、弾発性固定、モーレンハイム窩の膨隆
  • 整復前後で腋窩神経(三角筋部外側の感覚)と末梢循環を必ず確認し、記録に残す
比較表
脱臼型骨頭の位置上腕の肢位見かけの長さ
烏口下脱臼(前方)烏口突起の下軽度外転・内旋やや延長
鎖骨下脱臼(前方)鎖骨の下(内上方)ほぼ水平位の外転短縮
腋窩脱臼(前方)関節窩下方・腋窩著明な外転〜挙上位延長
肩峰下脱臼(後方)肩峰の下・後方内転・内旋位(外旋不能)変化に乏しい
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