学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ30P108

理由で解く 柔道整復師

QJ30P108 柔道整復理論

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午後 問108
問題
20歳の男性。サッカーの練習中転倒し左手掌を強く衝いた。翌日、疼痛が強くなり来所した。母指・示指に軸圧を加えたり手関節橈背屈で疼痛の増悪がみられた。考えられないのはどれか。
選択肢
1 有鈎骨骨折
2 手根中央関節脱臼
3 月状骨脱臼
4 舟状骨骨折
解答
正解1(有鈎骨骨折)
解説

母指・示指の軸圧痛と手関節橈背屈での疼痛増悪は、手関節の橈側〜中央(舟状骨を中心とする列)に力が集まったことを示す所見。尺側にある有鈎骨の骨折はこの所見からは考えにくい。

手掌をついて手関節が強く背屈されると、外力は母指列・示指列から大菱形骨・小菱形骨を経て舟状骨へ、そして橈骨へ抜ける。したがって母指や示指に軸圧を加えて痛むときは、その線上にある舟状骨とその周囲を疑うのが筋道である。手関節の橈背屈で痛むのも、舟状骨が橈骨茎状突起と衝突する位置関係から説明できる。舟状骨骨折はスナッフボックス(解剖学的嗅ぎたばこ入れ)の圧痛が加われば可能性が高く、受傷直後のエックス線では骨折線が写らないことがあるため、疑った段階で固定したうえで2週後の再検査を含めた医師の評価を求める。近位骨片は血流が乏しく偽関節や阻血性壊死に至りやすいので、見逃しの代償が大きい。同じ背屈強制では月状骨脱臼や手根中央関節脱臼も起こり得る。一方、有鈎骨(特に有鈎骨鉤)の骨折は、バットやクラブのグリップが小指球に当たって折れる型が典型で、環指・小指側の軸圧痛や小指球部の圧痛、尺骨神経症状が手がかりとなり、本例の所見の局在と一致しない。

✓ 1. これが答え(考えられない)
有鈎骨骨折
有鈎骨は手根骨の尺側遠位列にあり、その鉤はギヨン管の外側壁をなす。骨折すると小指球部の圧痛、環指・小指の軸圧痛、尺骨神経症状が出る。母指・示指の軸圧痛と橈背屈時痛という本例の局在からは考えにくい。
✗ 2. 答えではない(考えられる)
手根中央関節脱臼
近位手根列と遠位手根列の間が、手掌をついた過伸展外力でずれるもの。手関節全体の腫脹と変形、可動域制限、軸圧痛を示し、受傷機転が本例と一致するため鑑別に残る。
✗ 3. 答えではない(考えられる)
月状骨脱臼
手関節の強い背屈で月状骨が掌側へ押し出される脱臼。手関節の背屈制限、指の軸圧痛、掌側の膨隆に加え、手根管内で正中神経が圧迫されてしびれが出ることがある。同じ受傷機転で起こるので考えられる。
✗ 4. 答えではない(考えられる)
舟状骨骨折
母指・示指の軸圧痛、手関節橈背屈時痛、スナッフボックスの圧痛がそろう最も典型的な候補。初回のエックス線で写らないことがあるため、疑ったら固定して再検査につなげる姿勢が重要である。
ポイント
  • 母指・示指の軸圧痛+手関節橈背屈時痛=橈側手根列(舟状骨)の損傷を示す。
  • 舟状骨骨折は初回エックス線で写らないことがある。疑ったら固定し再検査を求める。
  • 近位骨片は血流に乏しく、偽関節・阻血性壊死のリスクが高い。
  • 月状骨脱臼・手根中央関節脱臼も手掌をついた過伸展外力で起こる。
  • 有鈎骨鉤骨折は尺側の障害。環指・小指の軸圧痛、小指球部圧痛、尺骨神経症状が手がかり。
比較表
損傷圧痛・軸圧痛の局在典型的な受傷機転
舟状骨骨折スナッフボックス、母指・示指の軸圧手掌をついた手関節背屈・橈屈強制
月状骨脱臼手関節中央掌側、示指・中指の軸圧強い背屈強制
手根中央関節脱臼手関節全体、変形と腫脹手掌をついた過伸展
有鈎骨鉤骨折小指球部、環指・小指の軸圧グリップが小指球に当たる(野球・ゴルフ)
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