学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ30P107

理由で解く 柔道整復師

QJ30P107 柔道整復理論

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午後 問107
問題
32歳の女性。百日咳のため咳が数週間続いている。激しい咳をしたとき右側胸部に激痛を自覚した。患部に腫脹はないが右第7肋骨に限局性圧痛がみられた。他に考えられる症状はどれか。
選択肢
1 軋轢音
2 屈曲変形
3 皮下出血斑
4 上肢運動時痛
解答
正解4(上肢運動時痛)
解説

数週間続く咳が肋骨に繰り返し牽引力を加えて起こった肋骨の疲労骨折(介達外力による骨折)。肋骨には上肢や体幹を動かす筋が付着するため、上肢を動かすと骨折部が引かれて痛む。

激しい咳の反復は、外腹斜筋・腹直筋・前鋸筋などが肋骨を繰り返し引っ張る形になり、第5〜9肋骨の側方(前腋窩線〜中腋窩線あたり)に疲労骨折を生じさせる。骨折は骨膜下の亀裂にとどまることが多く、直達外力による骨折と違って腫脹や皮下出血ははっきりしない。所見の中心は限局性圧痛と介達痛(骨折部から離れた胸郭を前後や側方から圧迫すると骨折部が痛む)、そして深呼吸・咳・体幹回旋での疼痛である。第7肋骨には前鋸筋・大胸筋・外腹斜筋などが付着するので、上肢を挙上したり水平内転させたりするとこれらの筋が肋骨を引き、疼痛が誘発される。対応は、呼吸を妨げない程度のテーピングや固定帯で胸郭の動揺を抑えることと、咳そのものの治療(百日咳の管理)を医師に委ねること。呼吸困難、血痰、皮下気腫があれば気胸・血胸を疑って直ちに紹介する。

✓ 4. 正しい
上肢運動時痛
第7肋骨には前鋸筋・大胸筋・外腹斜筋などが付着しており、上肢の挙上や水平内転でこれらが肋骨を牽引するため骨折部に疼痛が生じる。深呼吸・咳・体幹回旋でも同様に痛むので、日常動作のどれで痛むかを聞き取ると診断の助けになる。
✗ 1. 誤り
軋轢音
軋轢音は骨片が互いにこすれて生じるもので、転位のある完全骨折でみられる。本例は腫脹もない亀裂骨折であり、通常は触れない。加えて、確かめようと胸郭を動かせば転位の増大や肺・胸膜の損傷を招くため、あえて誘発しないのが原則である。
✗ 2. 誤り
屈曲変形
肋骨はもともと弯曲した扁平骨で、周囲を肋間筋や広い胸壁の筋に覆われている。そのため骨折しても外見上の屈曲変形として現れることはまずなく、腫脹のない本例では特に当てはまらない。
✗ 3. 誤り
皮下出血斑
皮下出血斑は打撲など直達外力で軟部組織が損傷されたときに現れる。本例は咳という介達外力による骨折で、患部に腫脹もないと明記されており、皮下出血斑は考えにくい。
ポイント
  • 咳の反復による肋骨疲労骨折は介達外力。腫脹・皮下出血・変形は目立たない。
  • 所見の中心は限局性圧痛、介達痛、深呼吸・咳・体幹回旋時痛、そして上肢運動時痛。
  • 第7肋骨には前鋸筋・大胸筋・外腹斜筋などが付着するため上肢の運動で痛む。
  • 軋轢音は転位のある骨折の所見。確認操作は損傷を広げるので行わない。
  • 呼吸を妨げない範囲で胸郭を支持し、呼吸困難・血痰・皮下気腫があれば直ちに医師へ紹介する。
比較表
項目介達外力(咳・体幹の捻転)直達外力(打撲)
骨折部位第5〜9肋骨の側方外力が当たった部位
骨片の転位少ない(亀裂・不全骨折)内方へ転位しやすい
腫脹・皮下出血斑目立たないみられる
軋轢音通常触れない触れることがある
合併症少ない気胸・血胸・肺損傷に注意
この問題の解説の修正を依頼する

解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。