学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ30P103

理由で解く 柔道整復師

QJ30P103 柔道整復理論

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午後 問103
問題
80歳の女性。玄関で転倒し手を衝き左手首が変形したため来所した。別に外観写真(別冊 No. 3a、b)と手関節背側より長軸方向を観察した超音波画像(別冊 No. 3c)を示す。施術する際の注意点で誤っているのはどれか。
図
選択肢
1 全身状態を確認する。
2 解剖学的治癒を主眼に置く。
3 尺骨茎状突起骨折の合併を疑う。
4 固定部以外の自動運動を早期より行う。
解答
正解2(解剖学的治癒を主眼に置く。)
解説

高齢者の橈骨遠位端骨折では、骨の形をどこまで元に戻すか(解剖学的治癒)よりも、手指・肘・肩を含めた日常生活動作をどれだけ保てるか(機能的治癒)を主眼に置く。

80歳の女性が転倒して手をつき、手首が変形したという経過である。別冊No.3a・bの外観写真では手関節部の背側が段状に隆起した、いわゆるフォーク状変形を呈し、No.3cの手関節背側からの超音波長軸像では、橈骨背側の皮質を表す高輝度な線の連続性が途切れて遠位側がプローブ側(背側)へ持ち上がる段差として描出されている。コーレス骨折(橈骨遠位端伸展型骨折)である。高齢者では骨粗鬆症のため骨幹端が粉砕しやすく、いったん整復しても保持が難しい。しかし多少の変形が残っても、日常生活での支障は比較的少ないことが多い。むしろ問題になるのは不動による害で、長期・広範囲の固定は手指のこわばり、肩関節の拘縮、肩手症候群や複合性局所疼痛症候群を招き、機能予後を大きく損なう。したがって固定は必要最小限の範囲・期間にとどめ、固定の外にある手指・肘・肩は初日から自動運動を行わせる。あわせて、転倒に至った背景(めまい、失神、薬剤、視力低下、住環境)や他部位の損傷、全身状態を確認する。合併しやすい尺骨茎状突起骨折の有無は触診と超音波観察で確かめ、関節内骨折が疑われる場合や整復位の判定が必要な場合は、エックス線評価を医師に依頼する(エックス線の撮影・読影は柔道整復師の業務範囲外である)。

✓ 2. これが答え(誤っている注意点)
解剖学的治癒を主眼に置く。
高齢者では解剖学的な完全復元にこだわると、強い整復操作や長期固定が必要になり、拘縮や複合性局所疼痛症候群という代償を払うことになる。主眼は機能的治癒、すなわち痛みなく手を使えて日常生活が自立している状態に置き、そのうえで可能な範囲で良好な整復位を目指す。
✗ 1. 答えではない(適切な注意点)
全身状態を確認する。
高齢者の転倒は、失神・不整脈・低血糖・薬剤の影響・視力低下など全身の問題が背景にあることが少なくない。手首だけを診て終わらせず、意識状態、他部位の疼痛、頭部打撲の有無、既往と内服を確認し、疑わしければ医師へつなぐ。
✗ 3. 答えではない(適切な注意点)
尺骨茎状突起骨折の合併を疑う。
コーレス骨折では尺骨茎状突起骨折の合併が高頻度にみられる。尺側の圧痛や遠位橈尺関節の不安定感を触診と超音波観察で確認し、合併があれば前腕回旋の管理を慎重に行う。
✗ 4. 答えではない(適切な注意点)
固定部以外の自動運動を早期より行う。
手指・肘・肩の自動運動を早期から行うことは、拘縮・浮腫・肩手症候群の予防に直結する。固定の外にある関節を動かしても整復位には影響しないので、初日から具体的な回数と方法を示して習慣づける。
ポイント
  • 高齢者の橈骨遠位端骨折は「解剖学的治癒」より「機能的治癒」を主眼に置く。
  • 長期・広範囲の固定は拘縮、肩手症候群、複合性局所疼痛症候群を招く。
  • 固定範囲外(手指・肘・肩)の自動運動は初日から。具体的な回数まで指導する。
  • コーレス骨折では尺骨茎状突起骨折の合併頻度が高い。触診と超音波観察で確認する。
  • 関節内骨折の評価や整復位の判定に必要なエックス線は医師へ依頼する(撮影・読影は柔道整復師の業務範囲外)。
  • 高齢者の転倒は全身疾患が背景にあり得る。転倒原因と他部位損傷を確認し、必要なら医師へ紹介する。
比較表
項目高齢者若年者
主眼機能的治癒(ADLの維持)解剖学的整復位の獲得を重視
骨の性状骨粗鬆症で粉砕しやすく整復位を保持しにくい強い外力で生じ、関節内骨折の評価が重要
最大の懸念拘縮・肩手症候群・複合性局所疼痛症候群変形治癒による可動域制限・遠位橈尺関節障害
固定の考え方必要最小限の範囲・期間、早期自動運動整復位保持を優先しつつ早期運動を併用
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