学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ29P122

理由で解く 柔道整復師

QJ29P122 柔道整復理論

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問122
問題
48歳の女性。バレーボールの練習中、ボールを追いかけて、左中指を床に引っ掛け過伸展・尺側強制され受傷した。来所時、左手を握らせた時の写真(別冊 No. 4)を別に示す。損傷部位はどれか。
図
選択肢
1 中手骨
2 基節骨
3 中節骨
4 末節骨
解答
正解2(基節骨)
解説

指を床に引っ掛けて過伸展と尺側への強制を受けた受傷機転で、手を握らせた肢位の写真が提示されています。この肢位は指の回旋転位を確かめるためのもので、損傷部位は基節骨と考えられます。

手指を軽く握り込むと、それぞれの指の指軸は扇のように収束し、いずれも手根部の舟状骨結節のあたりに向かいます。この収束は健常な手ではきれいにそろうため、骨折によってわずかでも回旋転位が生じると収束が崩れ、隣の指と重なって見えます(オーバーラッピングフィンガー)。だから手指骨折を診るとき、握り込ませた肢位で指軸を確認するのは回旋転位を見逃さないための基本手順です。基節骨は手指の骨折のなかでも頻度が高く、しかも転位を残しやすい部位です。近位骨片は骨間筋に引かれて屈曲し、遠位骨片は伸筋腱の中央索に引かれて伸展するため、掌側に凸の変形と回旋転位が生じます。指を引っ掛けて過伸展と側方(尺側)への強制が加わるという本症例の機転は、この部位に骨折を生じる典型的な力の入り方です。回旋変形はわずか数度でも指尖では大きなずれとなって握り動作を妨げるため、必ず矯正します。整復後は隣接指とそろえて指軸の収束を確認し、MP関節を70〜90度屈曲位、IP関節を伸展位(0〜ごく軽度屈曲)とするintrinsic plus肢位(=安全肢位)で固定します。関節ごとに角度が違うのには理由があります。MP関節の側副靱帯は屈曲位で最も伸張されるため、屈曲位で固定しておけば靱帯が短縮せず伸展拘縮を防げますが、MP関節を伸展位で固定すると側副靱帯が弛緩したまま短縮して拘縮を招きます。IP関節は逆に伸展位で側副靱帯・掌側板が伸張されるので、伸展位で固定してPIP関節の屈曲拘縮を防ぎます(IP関節を屈曲位で固定するのは、むしろ拘縮をつくる肢位です)。整復位が保てない、あるいは関節内に及ぶ骨折が疑われる場合は医師の診察につなぎます。

✓ 2. 正しい
基節骨
別冊No.4に示された「左手を握らせた時」の写真は、指軸の収束が崩れていないか、すなわち回旋転位の有無をみるための肢位です。指を引っ掛けての過伸展・尺側強制という機転、そして骨間筋と中央索の牽引によって掌側凸変形と回旋転位を残しやすい解剖学的条件が、基節骨骨折をよく説明します。
✗ 1. 誤り
中手骨
中手骨骨折は拳での殴打による頸部骨折(ボクサー骨折)や直達外力で生じるのが典型で、握らせたときには該当する中手骨頭の隆起(ナックル)が消失する所見をみます。指先を引っ掛けて過伸展・尺側強制されるという本症例の力の加わり方とは異なります。
✗ 3. 誤り
中節骨
中節骨の骨折はPIP関節周囲の脱臼骨折などに伴って生じますが、指節骨のなかでの頻度は基節骨に及びません。骨に付着する腱の働きも基節骨とは異なり、本症例で想定される変形の主座とは合致しません。
✗ 4. 誤り
末節骨
末節骨は圧挫による粉砕骨折や、突き指による裂離骨折(DIP関節を自動伸展できないマレット指、深指屈筋腱の裂離であるジャージーフィンガー)が代表です。いずれも遠位の一関節の伸展・屈曲障害として現れ、握り込みで指軸が交差するような回旋変形は生じにくい部位です。
ポイント
  • 手を握らせて指軸が舟状骨結節へ収束するかを見るのが、回旋転位のチェック法。崩れると隣の指と重なる。
  • 基節骨骨折は、近位骨片=骨間筋で屈曲、遠位骨片=中央索で伸展 → 掌側凸変形と回旋転位を残しやすい。
  • 回旋変形は数度でも指尖では大きなずれになるため、必ず矯正してから固定する。
  • 固定肢位はintrinsic plus(安全肢位)。MP関節は70〜90度屈曲IP関節は伸展位(0〜ごく軽度屈曲)と、関節ごとに角度が逆になる点が最重要。
  • 理由:MP関節の側副靱帯は屈曲位で伸張されるため、MP関節を伸展位で固定すると側副靱帯が短縮して拘縮を招く。IP関節は伸展位で固定してPIP屈曲拘縮を防ぐ(IP屈曲位固定は拘縮のもと)。
  • 中手骨頸部骨折はナックルの消失、末節骨はマレット指、と部位ごとの「見た目のサイン」で覚える。
比較表
部位代表的な受傷機転変形をつくる牽引力特徴的な所見
中手骨(頸部)拳での殴打、直達外力骨間筋による骨頭の掌側転位ナックル(中手骨頭の隆起)の消失
基節骨指の引っ掛け、過伸展・側方強制近位=骨間筋で屈曲/遠位=中央索で伸展掌側凸変形、握り込みでの回旋転位
中節骨PIP関節への軸圧・過伸展浅指屈筋・中央索の付着位置で変形が変わるPIP関節周囲の腫脹・脱臼骨折を伴うことがある
末節骨圧挫、突き指伸筋腱終止腱・深指屈筋腱の裂離マレット指(DIP自動伸展不能)、爪下血腫
関節安全肢位(intrinsic plus)の角度その角度にする理由避けるべき固定肢位
MP関節70〜90度屈曲側副靱帯が最も伸張される肢位で、靱帯の短縮を防げる伸展位(側副靱帯が短縮し拘縮を招く)
PIP・DIP(IP)関節伸展位(0〜ごく軽度屈曲)側副靱帯・掌側板が伸張され、屈曲拘縮を防げる屈曲位(PIP屈曲拘縮を残す)
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