学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §23 各論(軟部組織損傷) 下肢 / QJ30P098

理由で解く 柔道整復師

QJ30P098 柔道整復理論

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午後 問98
問題
鼡径部痛症候群で誤っているのはどれか。
選択肢
1 スポーツに関連して発生する。
2 股関節唇の損傷である。
3 内転筋近位部に痛みが生じる。
4 保存療法が基本である。
解答
正解2(股関節唇の損傷である。)
解説

鼡径部痛症候群は特定の一組織の損傷名ではなく、鼠径周辺の複数の要因が絡む症候群です。「股関節唇の損傷である」と限定した2が誤りです。

鼡径部痛症候群(グロインペイン症候群)は、サッカーなど下肢の切り返しやキック動作を繰り返す競技で多くみられる、鼠径部周辺の慢性疼痛の総称です。長内転筋など内転筋群の近位付着部、恥骨結合とその周囲、腸腰筋、腹直筋下部付着部、鼠径管周囲などが複合的に関与し、単一の病巣に還元できないことがこの症候群の本質です。背景には体幹・骨盤の安定性低下、股関節の可動域制限、内転筋と腹筋群の筋力バランスの崩れがあり、そのため治療も局所への処置だけでなく、体幹と股関節周囲の機能を立て直す運動療法が中心となります。なお股関節唇損傷は、大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)などに伴って生じる関節内病変で、鼠径部痛の鑑別疾患ではあっても、鼡径部痛症候群と同一のものではありません。

✓ 2. これが誤り(=正答)
股関節唇の損傷である。
鼡径部痛症候群は内転筋付着部・恥骨結合周囲・腸腰筋・鼠径部の腹壁など複数の要因が関与する症候群であり、股関節唇損傷という単一の関節内病変と同義ではありません。股関節唇損傷はFAIなどに伴う鑑別疾患として位置づけられます。
✗ 1. 正しい記述(=答えではない)
スポーツに関連して発生する。
キック動作、方向転換、ダッシュとストップの反復といった競技動作の繰り返しが誘因となります。サッカー選手に多いことで知られています。
✗ 3. 正しい記述(=答えではない)
内転筋近位部に痛みが生じる。
長内転筋の恥骨付着部付近は最も頻度の高い疼痛部位です。抵抗下の股関節内転で痛みが誘発されるかを確認します。
✗ 4. 正しい記述(=答えではない)
保存療法が基本である。
競技負荷の調整に加え、体幹・骨盤の安定化訓練、股関節可動域の改善、内転筋と腹筋群のバランス改善を軸とした運動療法を段階的に進めます。難治例に限って手術が検討されます。
ポイント
  • 鼡径部痛症候群=鼠径部周辺の慢性疼痛の総称。単一疾患名ではない。
  • 関与する部位は内転筋群近位付着部、恥骨結合周囲、腸腰筋、腹直筋下部、鼠径管周囲など。
  • サッカーなどキック・切り返しの多い競技に好発。
  • 治療は保存療法が基本。局所の安静だけでなく、体幹・骨盤の安定性と股関節可動域の改善を並行して行う。
  • 鑑別すべきは股関節唇損傷・FAI、恥骨結合炎、鼠径ヘルニア、大腿骨頸部疲労骨折。安静時痛や夜間痛、荷重時痛が強い場合は医師の画像評価につなぐ。
比較表
項目鼡径部痛症候群股関節唇損傷(FAI関連)
病巣複数(内転筋付着部・恥骨結合・腸腰筋・腹壁など)関節内の関節唇
疼痛の場所鼠径部から内転筋近位にかけて広がる鼠径部深部。Cサインで示されることが多い
誘発抵抗下の内転、体幹の屈曲・回旋股関節屈曲・内転・内旋(インピンジメントテスト)
治療運動療法中心の保存療法保存療法で難治なら鏡視下手術
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