学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §20 各論(脱臼) 下肢 / QJ30P092

理由で解く 柔道整復師

QJ30P092 柔道整復理論

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午後 問92
問題
股関節後方脱臼の症状で誤っているのはどれか。
選択肢
1 下肢長延長
2 弾発性固定
3 股関節部空虚
4 殿部膨隆
解答
正解1(下肢長延長)
解説

股関節後方脱臼では大腿骨頭が寛骨臼より後上方へ移動するため、患肢は延長ではなく短縮します。誤りは1です。

後方脱臼の典型は、股関節屈曲・内転位で膝を前方から強打される、いわゆるダッシュボード損傷です。大腿骨長軸方向の外力が骨頭を後方へ押し出し、腸骨脱臼(後上方)または坐骨脱臼(後下方)となります。骨頭が本来の位置より後上方へ移るため、患肢は屈曲・内転・内旋位をとって弾発性に固定され、下肢は短縮し、大転子は高位となります。前方のスカルパ三角は骨頭が抜けた分だけ空虚に触れ、後方の殿部には骨頭による膨隆を触知します。対比として押さえたい前方脱臼は、骨頭の落ち込む高さによって低位型(恥骨下脱臼=閉鎖孔脱臼)高位型(恥骨上脱臼)に分かれます。覚え方は「後方=屈曲・内転・内旋・短縮」「前方の低位型(恥骨下=閉鎖孔脱臼)=屈曲・外転・外旋・延長」とペアにするのが基本で、これに高位型(恥骨上脱臼)は股関節伸展・外旋位をとり、下肢は延長せず短縮〜不変という例外を一つ添えておくと、実際の病像とずれません。

✓ 1. これが誤り(=正答)
下肢長延長
骨頭が寛骨臼から後上方へ外れるため、下肢は短縮します。延長がみられるのは、骨頭が前下方へ落ち込む前方脱臼の低位型(恥骨下脱臼=閉鎖孔脱臼)です。なお同じ前方脱臼でも高位型(恥骨上脱臼)では伸展・外旋位となり、下肢は延長しません。
✗ 2. 正しい記述(=答えではない)
弾発性固定
股関節は屈曲・内転・内旋位で弾発性に固定されます。他動的に動かそうとするとゴムのような抵抗があり、力を抜くと元の肢位へ戻ります。これは脱臼に共通する所見です。
✗ 3. 正しい記述(=答えではない)
股関節部空虚
骨頭が後方へ抜けるため、前方のスカルパ三角(大腿三角)では骨頭が触れず空虚に感じられます。健側と左右で比べて確認します。
✗ 4. 正しい記述(=答えではない)
殿部膨隆
後上方へ移動した大腿骨頭を殿部で触れることができ、膨隆として観察されます。大転子も高位となり、ローゼル・ネラトン線より上方に位置します。
ポイント
  • 後方脱臼の受傷機転はダッシュボード損傷(股関節屈曲・内転位での大腿長軸方向の外力)。
  • 特有肢位は屈曲・内転・内旋位での弾発性固定。下肢は短縮し大転子は高位となる。
  • 前方は空虚(スカルパ三角)、後方は膨隆(殿部で骨頭を触知)。
  • 前方脱臼は低位型(恥骨下脱臼=閉鎖孔脱臼)と高位型(恥骨上脱臼)に分かれる。屈曲・外転・外旋位で下肢が延長するのは低位型で、高位型は伸展・外旋位をとり延長しない。
  • 坐骨神経麻痺(下垂足)と寛骨臼後壁骨折の合併に注意。整復前後で足関節背屈と足背の知覚を必ず確認する。
  • 整復の遅れは大腿骨頭壊死のリスクを高めるため、疑った時点で速やかに医療機関へ搬送する。
比較表
項目後方脱臼(腸骨・坐骨脱臼)前方脱臼・低位型(恥骨下脱臼=閉鎖孔脱臼)
肢位屈曲・内転・内旋屈曲・外転・外旋
下肢長短縮延長
骨頭の触知殿部で膨隆鼠径部・大腿内側で膨隆
空虚となる部位スカルパ三角(前方)殿部(後方)
合併症坐骨神経麻痺、寛骨臼後壁骨折、骨頭壊死大腿動静脈・大腿神経の圧迫
同じ前方脱臼でも高位型(恥骨上脱臼)は股関節伸展・外旋位。下肢は延長せず短縮〜不変
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