学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §19 各論(脱臼) 上肢 / QJ30P091

理由で解く 柔道整復師

QJ30P091 柔道整復理論

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午後 問91
問題
末梢牽引の禁忌はどれか。
選択肢
1 PIP 関節背側脱臼
2 CM 関節脱臼
3 月状骨脱臼
4 遠位橈尺関節脱臼
解答
正解1(PIP 関節背側脱臼)
解説

PIP関節背側脱臼にそのまま末梢牽引を加えると、めくれ上がった掌側板が関節内に引き込まれて嵌頓し、徒手整復のできない複雑脱臼になる。ここでは牽引ではなく、過伸展を加えてから基節骨頭に沿わせて押し込む。

PIP関節背側脱臼は、指に過伸展が強制されて中節骨基部が基節骨頭の背側へ乗り上げるもので、このとき掌側板は基節骨頭側の付着部で剥がれ、背側にめくれた状態になっている。長軸方向に引っ張ると関節の隙間が開き、その隙間に掌側板や側副靱帯が滑り込む。いったん挟まると関節面の間で噛み込んで、どれだけ牽引しても戻らず観血的整復を要する。正しい手順は、まず脱臼位(過伸展位)をわずかに強めて中節骨基部を基節骨頭の背側に確実に乗せ、そこから基節骨頭の輪郭に沿わせるように中節骨基部を滑らせて押し込むこと。整復後は側副靱帯と掌側板の損傷程度を確かめ、軽度屈曲位で短期間固定したうえで、隣接指と組むテーピング(buddy taping)に移して早期から可動域を保つ。同じ理由で母指・示指のMP関節背側脱臼でも単純牽引は避ける。

✓ 1. これが答え(末梢牽引が禁忌)
PIP 関節背側脱臼
牽引で関節裂隙が開くと、背側にめくれた掌側板が関節内へ引き込まれて嵌頓し、複雑脱臼となって徒手整復が不可能になる。過伸展位を保ったまま基節骨頭に中節骨基部を沿わせて押し込むのが原則である。
✗ 2. 答えではない(牽引を用いる)
CM 関節脱臼
母指CM関節脱臼などでは、長軸方向の牽引をかけながら中手骨基部を押し戻し、外転・伸展位へ導いて整復する。牽引が整復操作の中心となる脱臼である。
✗ 3. 答えではない(牽引を用いる)
月状骨脱臼
手関節を背屈位として十分に牽引し、隙間をつくったところで掌側に転位した月状骨を母指で押し戻しながら手関節を掌屈させて整復する。牽引なしでは月状骨の戻る空間が得られない。
✗ 4. 答えではない(牽引を用いる)
遠位橈尺関節脱臼
前腕の回内外を調整しながら牽引を加え、転位した尺骨頭に直圧を加えて整復する。背側脱臼なら回外位、掌側脱臼なら回内位で保持するのが基本である。
ポイント
  • PIP関節背側脱臼の単純牽引は掌側板を関節内に引き込み、複雑脱臼(整復不能)を招く。
  • 整復は過伸展を加えて中節骨基部を基節骨頭の背側に乗せ、骨頭に沿わせて押し込む。
  • 同じ理由で母指・示指のMP関節背側脱臼でも単純牽引は避ける。
  • CM関節脱臼・月状骨脱臼・遠位橈尺関節脱臼は、いずれも牽引が整復操作の一部。
  • 整復後は軽度屈曲位で短期固定し、buddy tapingで早期に可動域訓練へ移す。
比較表
損傷末梢牽引整復の要点
PIP関節背側脱臼禁忌過伸展位から基節骨頭に沿わせて押し込む
母指CM関節脱臼用いる牽引+中手骨基部を押し戻し外転・伸展位へ
月状骨脱臼用いる背屈位で牽引→月状骨を押し戻しつつ掌屈
遠位橈尺関節脱臼用いる回内外を調整して牽引+尺骨頭に直圧
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