学習トップ / 理由で解く 柔道整復師 / 一般臨床医学 ▸ §21 臨床実地問題 / QJ30P044
理由で解く 柔道整復師
高温多湿の環境での運動中に発症し、意識は保たれ、皮膚は熱く多量の発汗が続いている――典型的な熱中症(熱疲労の病像)です。大量の汗で失われたのは水と塩分(ナトリウム)の両方なので、ナトリウムを含んだ水分を補うのが正しい対応になります。
人は汗を蒸発させ、その気化熱で体温を下げています。ところが湿度80%という環境では汗が蒸発しにくく、汗をかいても放熱が進みません。気温32°Cはそれ自体で危険域とまでは言えなくても、湿度が高ければ体に熱がこもり、熱中症は容易に起こります(暑さの評価に気温だけでなくWBGT=湿球黒球温度を用いるのはこのためです)。大量発汗が続くと水分とともにナトリウムが失われ、循環血液量が減少して、頭痛・倦怠感・脱力・めまい・吐き気が現れます。本例のように意識が保たれ、発汗もあることは、体温調節がまだ働いている証拠であり、この時点で熱射病は否定されます。そのうえで頭痛・倦怠感という脱水・循環血液量減少による症状がそろっているので、熱疲労と判断します。これに対し、発汗が止まって皮膚が乾き、高体温と意識障害をきたした状態が熱射病(重症)で、直ちに救急要請と積極的冷却が必要です。現場での手順は、①涼しい風通しのよい場所へ移す、②衣服をゆるめる、③送風・霧吹き・頸部/腋窩/鼠径部の冷却で体温を下げる、④意識があり自力で飲めるならナトリウムを含む水分(経口補水液など)を飲ませる、⑤自力で飲めない・意識がおかしい・改善しないときはためらわず救急要請、の順です。
| 病型 | 主な機序 | 発汗 | 意識 | 体温 | 対応 |
|---|---|---|---|---|---|
| 熱失神 | 皮膚血管拡張による一過性の血圧低下・脳血流低下 | あり | 一過性に消失(すぐ回復) | ほぼ正常 | 涼所で仰臥・下肢挙上、水分補給 |
| 熱けいれん | 発汗で失った塩分を水分のみで補い低ナトリウム血症 | あり | 清明 | ほぼ正常 | 涼所へ移し、0.1〜0.2%食塩水/経口補水液を経口(重症・経口不能なら医療機関で0.9%生理食塩水の輸液) |
| 熱疲労(本症例) | 水と塩分の喪失による脱水・循環血液量減少 | 多量にあり | 清明 | やや上昇 | 涼所へ移動・冷却+ナトリウムを含む水分(0.1〜0.2%食塩水/経口補水液) |
| 熱射病 | 体温調節の破綻・中枢神経障害 | 停止し皮膚は乾燥 | 障害(意識混濁〜昏睡) | 著明に上昇(40°C前後以上) | 直ちに救急要請、全身の積極的冷却 |
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