学習トップ理由で解く 柔道整復師リハビリテーション医学 ▸ §7 リハビリテーションの実際 / QJ30P018

理由で解く 柔道整復師

QJ30P018 リハビリテーション医学

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午後 問18
問題
脳卒中のリハビリテーション治療で積極的な練習を行ってよいのはどれか。
選択肢
1 安静時収縮期血圧 160 mmHg
2 安静時拡張期血圧 130 mmHg
3 安静時脈拍 130 回/分
4 体温39.0°C
解答
正解1(安静時収縮期血圧 160 mmHg)
解説

安静時拡張期血圧130 mmHg(基準120以上)、安静時脈拍130回/分(基準120以上)はアンダーソン・土肥の基準で「運動を行わないほうがよい」に該当し、体温39.0℃も別系統のガイドラインで積極的なリハビリテーションを見合わせる目安です。これに対し収縮期血圧160 mmHgは中止基準の200 mmHgに達しておらず、積極的な練習を進めてよい状態です。

アンダーソン・土肥の基準は「Ⅰ 運動を行わないほうがよい場合」「Ⅱ 途中で中止する場合」「Ⅲ 途中で休ませて様子をみる場合」の3段階に分かれます。このうちⅠ項は、(1)安静時脈拍120回/分以上、(2)拡張期血圧120 mmHg以上、(3)収縮期血圧200 mmHg以上、(4)労作性狭心症を現在有するもの、(5)新鮮心筋梗塞1か月以内、(6)うっ血性心不全の所見が明らかなもの、(7)心房細動以外の著しい不整脈、(8)運動前すでに動悸・息切れのあるもの——の8項目で、体温(発熱)の項目は含まれません。発熱については、日本リハビリテーション医学会の「リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン」など別系統の基準が、38℃以上の発熱を積極的なリハビリテーションを行わない目安として挙げています。国家試験では両者をまとめて「中止基準」として問われますが、数値の出どころが別であることは区別して覚えてください。脳卒中では血圧の急激な変動が再出血や梗塞巣の拡大につながるため、開始前・実施中・終了後のバイタル確認が欠かせません。中止基準に触れる場合は、練習を延期して原因を評価し主治医に報告したうえで、良肢位保持・ポジショニング・他動運動・呼吸練習など負荷の小さい介入は続ける——これが実際の運びです。

✓ 1. 正しい
安静時収縮期血圧 160 mmHg
アンダーソン・土肥の基準Ⅰ項が挙げる収縮期200 mmHgを下回っており、練習開始を見合わせる水準ではありません。運動前後の血圧・脈拍・自覚症状を確認しながら、負荷を段階的に上げて積極的に練習を進めてよい状態です。
✗ 2. 誤り
安静時拡張期血圧 130 mmHg
拡張期120 mmHg以上はアンダーソン・土肥の基準Ⅰ項「運動を行わないほうがよい」に明記された項目です。この日は積極的な練習を延期し、測定を繰り返して主治医に報告、降圧が得られてから再開します。その間もポジショニングや愛護的な他動運動は継続します。
✗ 3. 誤り
安静時脈拍 130 回/分
安静時脈拍120回/分以上も同じくⅠ項の項目で、開始を見合わせます。頻脈の背景(脱水、感染、心不全、疼痛、不整脈)を評価し、原因への対応が済んでから練習量を組み直します。なお不整脈についてⅠ項が挙げるのは「心房細動以外の著しい不整脈」であり、心房細動そのものが直ちに運動禁止となるわけではありません(ただし本例のように心拍数が120回/分以上であれば、脈拍の項目で見合わせとなります)。
✗ 4. 誤り
体温39.0°C
38℃以上の発熱は積極的な練習を見合わせる目安です。ただしこれはアンダーソン・土肥の基準そのものには含まれず、日本リハビリテーション医学会のガイドラインなど別系統の基準による項目です。脳卒中急性期の発熱は誤嚥性肺炎や尿路感染が背景にあることが多いため、感染源の検索と治療を優先し、解熱を確認してから離床・歩行練習を段階的に再開します。
ポイント
  • アンダーソン・土肥の基準Ⅰ「運動を行わないほうがよい場合」=8項目:安静時脈拍120回/分以上、拡張期血圧120 mmHg以上、収縮期血圧200 mmHg以上、労作性狭心症を現在有するもの、新鮮心筋梗塞1か月以内、うっ血性心不全の所見が明らかなもの、心房細動以外の著しい不整脈、運動前すでに動悸・息切れのあるもの。発熱(体温)の項目は含まれない
  • 38℃以上の発熱は、アンダーソン・土肥の基準ではなく、日本リハビリテーション医学会「リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン」など別系統の基準で積極的なリハを行わない項目とされる。試験ではまとめて「中止基準」として出題されるが、出どころを区別して覚える。
  • アンダーソン・土肥Ⅱ「途中で中止」:中等度以上の呼吸困難・めまい・嘔気・狭心痛、脈拍140回/分超、運動中の収縮期血圧40 mmHg以上または拡張期血圧20 mmHg以上の上昇。
  • アンダーソン・土肥Ⅲ「休ませて様子をみる」:脈拍が運動前の30%を超えて増えた場合など。
  • 数字の覚え方:アンダーソン・土肥は「収縮期200/拡張期120/脈拍120」の3つでひとまとめ。「発熱38℃は別基準」として分けて上乗せする。
  • 中止基準に該当したら延期して原因を評価・報告し、負荷の小さい介入(良肢位保持、他動運動、呼吸練習)は継続する。
比較表
指標見合わせの目安根拠となる基準本問の値判断
収縮期血圧200 mmHg以上アンダーソン・土肥 Ⅰ項160 mmHg実施可
拡張期血圧120 mmHg以上アンダーソン・土肥 Ⅰ項130 mmHg延期
脈拍120回/分以上アンダーソン・土肥 Ⅰ項130回/分延期
体温38℃以上リハ医学会ガイドライン等(アンダーソン・土肥の基準には含まれない39.0℃延期
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