学習トップ / 理由で解く 柔道整復師 / リハビリテーション医学 ▸ §7 リハビリテーションの実際 / QJ30P021
理由で解く 柔道整復師
肩手症候群は脳卒中発症後の亜急性期(おおむね発症1〜3か月)に成立する合併症で、急性期の病像には含まれない。排尿障害・嚥下障害・沈下性肺炎はいずれも発症直後から問題になる。
本問は時期による切り分けそのものが正誤の分かれ目なので、まず物差しを固定しておく。本解説では急性期=発症〜約2週、亜急性期=約2週〜3か月、慢性期=3か月以降とする。急性期の合併症は、「脳が損傷されたこと自体による機能障害」と「動けずに臥床していることによる二次的な障害」の2系統に分けて整理すると見通しがよい。前者の代表が排尿障害と嚥下障害で、いずれも発症直後から現れる。後者の代表が沈下性肺炎で、仰臥位が続くと重力で背側の肺が圧排されて換気が落ち、分泌物が排出されずに貯留することで起こる。これに対し肩手症候群は、麻痺側上肢を使わないこと、弛緩性麻痺による肩関節亜脱臼、不用意な牽引や外傷といった負荷が積み重なった結果として時間をかけて成立する複合性局所疼痛症候群(CRPS I型)であり、肩の疼痛と可動域制限に加え、手背の腫脹・発赤・熱感・発汗異常が出現し、放置すると手指の拘縮に進む。時期が後ろにずれるという点が本問の分かれ目である。なお痙縮・関節拘縮・廃用症候群も同じく「あとから効いてくる」問題で、いずれも亜急性期に出現し、慢性期にかけて固定化していく。とくに関節拘縮は不動による二次障害として急性期のうちから進行そのものは始まっているが、可動域制限として顕在化・固定化するのは亜急性期から慢性期であり、時期をまたいで連続的に進む現象として押さえておく。ただし「後から出るものだから急性期は関知しなくてよい」ということではなく、むしろ急性期からの良肢位保持、麻痺側肩の支持(アームスリング等)、愛護的な他動関節可動域運動、麻痺側上肢を引っ張らない介助手技こそが最良の予防になる。
| 時期 | 主な合併症 | 成り立ち | 対応の要点 |
|---|---|---|---|
| 急性期(発症〜約2週) | 意識障害、嚥下障害、排尿障害(脳ショック期の尿閉・溢流性尿失禁) | 脳損傷による機能障害が直接現れる/排尿は脳ショックで排尿筋が無収縮になる | 嚥下スクリーニング、残尿測定・導尿、全身状態の安定化 |
| 急性期(同上・臥床由来) | 沈下性肺炎、深部静脈血栓症、褥瘡、肩関節亜脱臼 | 安静臥床・不動と弛緩性麻痺による二次障害 | 体位変換、早期離床、排痰援助、口腔ケア、肩の支持 |
| 急性期を過ぎる頃から | 排尿筋過活動(無抑制膀胱)による頻尿・尿意切迫・切迫性尿失禁 | 大脳による排尿抑制が失われ、橋排尿中枢が脱抑制される | 時間排尿・排尿誘導、残尿確認、必要に応じ薬物療法 |
| 亜急性期(約2週〜3か月) | 肩手症候群(CRPS I型。とくに発症1〜3か月)、肩関節亜脱臼の疼痛化 | 上肢の不使用・亜脱臼・微小外傷の蓄積 | 良肢位保持、肩の支持、愛護的な他動ROM、牽引を避ける介助 |
| 亜急性期〜慢性期(3か月以降に固定化) | 痙縮、関節拘縮、廃用症候群 | 亜急性期から出現し、運動麻痺の残存と活動量低下により慢性期に固定化する | 装具・持続的ストレッチ、痙縮治療、生活動作の再構築 |
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