学習トップ理由で解く 柔道整復師生理学 ▸ §5 消化と吸収 / QJ30A102

理由で解く 柔道整復師

QJ30A102 生理学

出典:第30回柔道整復師国家試験(2022)午前 問102
問題
図の血管A、Bで正しいのはどれか。
図
選択肢
1 Aには動脈血が流れる。
2 Bには動脈血が流れる。
3 消化管で吸収された栄養素はAに流れる。
4 肝臓で合成されたアルブミンはAに流れる。
解答
正解3(消化管で吸収された栄養素はAに流れる。)
解説

図は肝小葉の組織像で、肝細胞・類洞・小葉間胆管・肝動脈がラベルされている。左側の門脈域(グリソン鞘)に小葉間胆管・肝動脈と並んで描かれたAは門脈の枝である小葉間静脈、右側で類洞が扇状に集まって注ぎ込むBが中心静脈にあたる。小葉間静脈を流れるのは酸素の少ない静脈血だが、消化管で吸収された栄養素をたっぷり含んでいるので、正しいのは3。

肝小葉では、周辺の門脈域に小葉間静脈・小葉間動脈・小葉間胆管の三つ組がまとまって走り、ここから流れ出た門脈血と肝動脈血が肝細胞索のあいだの類洞で合流して、小葉の中心にある中心静脈へ向かう。つまり血液は「周辺(A)→ 類洞 → 中心(B)」の一方向に流れ、中心静脈からは小葉下静脈・肝静脈を経て下大静脈へ抜けていく。一方、肝細胞がつくる胆汁は肝細胞のあいだの毛細胆管を血流とは逆向き(中心 → 周辺)に流れ、門脈域の小葉間胆管に集まる。動脈血か静脈血かは「どの名前の血管を流れるか」ではなく「酸素をどれだけ含むか」で決まる。肝臓には入口が2本あり、肝動脈が酸素に富む動脈血を、門脈が消化管・脾臓を通過したあとの静脈血を運び込む。流量では門脈が肝血流の約7〜8割を占め、酸素の供給量では肝動脈と門脈がほぼ半分ずつ分担している。「Aは小葉に入る側、Bは小葉から出る側」という向きさえ押さえれば、4肢はまとめて片付く。

✗ 1. 誤り
Aには動脈血が流れる。
Aは門脈域を走る小葉間静脈、すなわち門脈の枝にあたる。門脈血は消化管の毛細血管をすでに通過し、そこで酸素を組織へ渡したあとの血液なので、静脈血に分類される。肝臓へ動脈血を届けるのは腹腔動脈から分かれる肝動脈(図でAのすぐ下にラベルされている血管で、小葉では小葉間動脈となって類洞へ注ぐ)のほうで、門脈とは別の入口である。血管名ではなく「直前にどの器官の毛細血管を通ってきたか」で判定する習慣をつけると、この種の問いを外さない。
✗ 2. 誤り
Bには動脈血が流れる。
Bは類洞が集まって注ぎ込む中心静脈である。類洞では小葉間動脈からの動脈血と小葉間静脈(A)からの門脈血が混ざり合い、肝細胞に酸素を渡したあとの血液が中心静脈へ集まってくるため、こちらも静脈血である。なお名前と中身が一致しない例として、肺動脈には静脈血が、肺静脈には動脈血が流れる。名称に引きずられず、血流の向きと通過してきた器官で読むようにしたい。
✓ 3. 正しい
消化管で吸収された栄養素はAに流れる。
小腸の毛細血管に取り込まれた単糖・アミノ酸・水溶性ビタミン・短鎖および中鎖脂肪酸は、まず上腸間膜静脈に集まる。この上腸間膜静脈が脾静脈(脾臓・膵臓と、下腸間膜静脈を介して下部大腸からの血液を運ぶ血管)と合流して門脈となり、肝門から肝臓に入って枝分かれし、門脈域の小葉間静脈(A)として類洞へ注ぐ。門脈は消化管の毛細血管と肝類洞という2つの毛細血管網にはさまれた血管で、こうした構造を門脈系という。栄養素をいったん肝臓に通す配置のおかげで、吸収された有害物質の解毒や、食後の血糖の平準化(グリコーゲン合成)が可能になる。ただし長鎖脂肪酸はカイロミクロンとなってリンパ管(乳び管→胸管)を通り、静脈角から血流に入るため門脈は経由しない点も併せて覚えておくとよい。
✗ 4. 誤り
肝臓で合成されたアルブミンはAに流れる。
アルブミンは肝細胞で合成されたのち類洞へ分泌され、類洞 → 中心静脈(B)→ 小葉下静脈 → 肝静脈 → 下大静脈という順路で全身へ配られる。Aは小葉へ血液が入っていく側の血管なので、向きが逆になる。フィブリノゲンやプロトロンビンなどの凝固因子、糖新生でつくられたグルコースも同じ出口側の流れに乗るので、「肝臓が作ったものは中心静脈(B)側へ出ていく」とまとめて整理しておくと迷わない。
ポイント
  • 動脈血・静脈血は酸素含有量による区別で、血管の名前では決まらない(肺動脈=静脈血、肺静脈=動脈血)。
  • 肝小葉の血流は「門脈域の三つ組(小葉間静脈・小葉間動脈・小葉間胆管)→ 類洞 → 中心静脈」。周辺から中心へ一方向に流れる。本問ではA=小葉間静脈(門脈の枝)、B=中心静脈。
  • 流出路は中心静脈 → 小葉下静脈 → 肝静脈 → 下大静脈 → 右心房。胆汁だけは血流と逆向きで、毛細胆管 → 小葉間胆管(中心 → 周辺)と流れる。
  • 肝臓は入口が2本(肝動脈・門脈)、出口が1本(肝静脈)。門脈血は静脈血だが栄養素に富み、肝血流の約7〜8割を占める。酸素供給は肝動脈とほぼ半々。
  • 水溶性の栄養素(単糖・アミノ酸・水溶性ビタミン)は上腸間膜静脈から門脈へ。長鎖脂肪酸はカイロミクロンとしてリンパ管(胸管)経由で、門脈を通らない。
  • 肝細胞が合成したアルブミン・凝固因子・グルコースは、類洞から中心静脈側へ出て全身に送り出される。
比較表
構造(図中の表示)血流・胆汁の向き動脈血/静脈血肝血流に占める割合主に運ぶもの
小葉間動脈=肝動脈の枝(図中「肝動脈」)肝門 → 小葉間動脈 → 類洞動脈血約20〜30%酸素(肝への酸素供給の約半分を担う)
小葉間静脈=門脈の枝(A)消化管・脾臓 → 門脈 → 小葉間静脈 → 類洞静脈血約70〜80%消化管で吸収された糖・アミノ酸・水溶性ビタミンなど
類洞(図中「類洞」)小葉の周辺 → 中心(A側 → B側)動脈血と門脈血の混合肝細胞との物質交換の場
中心静脈(B)類洞 → 中心静脈 → 小葉下静脈 → 肝静脈 → 下大静脈 → 右心房静脈血肝臓からの流出路アルブミン・凝固因子・グルコースなど肝細胞の産物
小葉間胆管(図中「小葉間胆管」)毛細胆管 → 小葉間胆管(血流と逆向き、中心 → 周辺)—(血管ではない)胆汁
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