学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §22 各論(軟部組織損傷) 上肢 / QJ29P101

理由で解く 柔道整復師

QJ29P101 柔道整復理論

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問101
問題
ステナー(Stener) 損傷に関与するのはどれか。
選択肢
1 長母指伸筋腱
2 短母指外転筋腱
3 母指対立筋腱
4 母指内転筋腱
解答
正解4(母指内転筋腱)
解説

ステナー損傷は、断裂した母指MP関節尺側側副靱帯の断端が母指内転筋の腱膜の上に乗り上げてしまう状態。関与するのは母指内転筋腱(腱膜)。

スキーのストックやボールなどで母指が橈側へ強く開かれると、母指MP関節の尺側側副靱帯が基節骨付着部で断裂する(スキーヤー母指、ゲームキーパー母指)。母指内転筋は腱膜となってMP関節の尺側背側を覆っており、靱帯が完全に断裂して近位へ引き戻されると、その断端が腱膜の表層へ滑り出て引っかかったまま戻らなくなる。こうなると靱帯断端と本来の付着部との間に腱膜が挟まって接触できず、固定して待っても癒合しない。母指の側方不安定性が強く、つまみ動作で痛みと力の入らなさを訴える場合はこの状態を念頭に置き、無理な徒手操作を繰り返さず、画像評価と手術適応の判断ができる医療機関へつなぐことが大切になる。

✓ 4. 正しい
母指内転筋腱
母指内転筋の腱膜がMP関節の尺側背側を覆っており、断裂した尺側側副靱帯の断端がその上に乗り上げて介在するのがステナー損傷。腱膜が間に挟まるため自然癒合が望めず、手術的な修復が選ばれる。
✗ 1. 誤り
長母指伸筋腱
母指のIP関節を伸展させる腱で、橈骨のリスター結節を回って走行する。橈骨遠位端骨折後の遅発性断裂で知られるが、MP関節尺側側副靱帯の介在には関与しない。
✗ 2. 誤り
短母指外転筋腱
母指球の橈側にあって母指の外転に働く筋。関節の尺側を覆う構造ではないため、靱帯断端の乗り上げには関わらない。
✗ 3. 誤り
母指対立筋腱
第1中手骨に停止して母指の対立運動を担う筋で、MP関節尺側の被覆には関与しない。ステナー損傷の成り立ちとは無関係。
ポイント
  • ステナー損傷=母指MP関節尺側側副靱帯の断端が母指内転筋腱膜の上に乗り上げて介在した状態。
  • 腱膜が間に挟まるため自然癒合しない。保存療法では治らず手術適応となる。
  • 受傷機転は母指の橈側への強制外転(スキーヤー母指、ゲームキーパー母指)。
  • 所見は母指MP関節尺側の圧痛・腫脹と側方不安定性、つまみ力の低下。
  • 不安定性が強い母指の捻挫は「ただの突き指」で済ませず、画像評価のできる医療機関へつなぐ。
比較表
名称内容治療の方向
スキーヤー母指ストックによる急性の母指MP関節尺側側副靱帯損傷不全断裂なら固定で保存的に
ゲームキーパー母指繰り返す外力による同靱帯の慢性的な弛緩程度に応じて保存的または手術
ステナー損傷断裂した靱帯断端が母指内転筋腱膜上に乗り上げて介在癒合が望めず手術的修復
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