学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §22 各論(軟部組織損傷) 上肢 / QJ29P100

理由で解く 柔道整復師

QJ29P100 柔道整復理論

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問100
問題
上腕二頭筋長頭腱断裂で正しいのはどれか。
選択肢
1 小児に好発する。
2 筋力低下が生じる。
3 上腕近位に膨隆が生じる。
4 直達外力による発生が多い。
解答
正解2(筋力低下が生じる。)
解説

上腕二頭筋長頭腱断裂では肘屈曲と前腕回外の筋力が低下する。膨隆が出るのは上腕の遠位(肘寄り)なので、「近位」とする記述のほうが誤り。

上腕二頭筋長頭腱は結節間溝を通って関節内に入るという特異な走行のため、摩擦と加齢性の変性を受けやすい。そのため40歳以降の中高年に、重い物を持ち上げるなど収縮中の筋に急な伸張力が加わる介達外力(自家筋力)で断裂することが多い。断裂すると筋腹を上方へつなぎ止めるものがなくなり、筋腹は遠位へ滑り落ちて上腕の遠位部が膨らむ。これがポパイ徴候(ポパイサイン)で、近位側は逆に平坦化して見える。短頭が残るため筋力が完全に失われることはないが、肘屈曲力、とくに前腕回外力の低下と易疲労感が残る。断裂した瞬間に肩前面の痛みが軽くなることがあり、「痛みが消えたから治った」と受け取られやすいので、腱板損傷の合併も念頭に医療機関での評価を勧めるとよい。

✓ 2. 正しい
筋力低下が生じる。
上腕二頭筋は肘屈曲と前腕回外の主動筋。長頭が働かなくなると、短頭・上腕筋・腕橈骨筋が代償するため日常動作は保たれることが多いものの、回外力を中心とした筋力低下と疲れやすさが残る。
✗ 1. 誤り
小児に好発する。
結節間溝での摩擦による腱の変性が土台となるため、中高年に多い。小児では腱よりも骨端線や骨のほうが先に破綻しやすく、腱断裂そのものはまれ。
✗ 3. 誤り
上腕近位に膨隆が生じる。
上方の支えを失った筋腹は遠位へずり落ちるため、膨隆は上腕の遠位(肘寄り)に生じ、近位側は平坦化する。この特徴的な外観がポパイ徴候で、肘を屈曲させると明瞭になる。
✗ 4. 誤り
直達外力による発生が多い。
重量物の持ち上げなど、収縮している筋に急激な伸張力が加わる介達外力による発生が主体。素地には結節間溝での長年の摩擦による腱の変性がある。
ポイント
  • 好発は中高年。結節間溝での摩擦による腱の変性が土台にある。
  • 発生機転は介達外力(自家筋力)。重量物の持ち上げなどが典型。
  • 膨隆は上腕の遠位(肘寄り)=ポパイ徴候。近位は平坦化する。
  • 短頭が残るため筋力は完全には失われないが、肘屈曲・前腕回外の筋力低下と易疲労感が残る。
  • 断裂時に肩前面の痛みが軽くなることがあるが、腱板損傷の合併もあるため医療機関での評価につなげる。
比較表
長頭腱(近位)断裂遠位腱(橈骨粗面)断裂
断裂部位結節間溝部の長頭腱肘部、橈骨粗面付着部
筋腹の移動遠位へずり落ちる近位へ引き上げられる
膨隆の位置上腕の遠位(肘寄り)上腕の近位(肩寄り)
好発・機転中高年、変性を基盤に介達外力比較的若壮年、重量物の急な持ち上げ
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