学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §20 各論(脱臼) 下肢 / QJ29P094

理由で解く 柔道整復師

QJ29P094 柔道整復理論

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問94
問題
膝関節前方脱臼受傷時にトリアージ先行する所見はどれか。
選択肢
1 膝関節の不安定性
2 足関節の運動障害
3 足背部の感覚障害
4 末梢側の循環障害
解答
正解4(末梢側の循環障害)
解説

膝関節前方脱臼は膝窩動脈損傷を伴いうる。肢の存続にかかわるため、末梢の循環障害の確認が何よりも先に来る。

膝窩動脈は上方の内転筋腱裂孔と下方のヒラメ筋腱弓の二か所で固定されており、逃げ場がない。膝が過伸展されて脛骨が前方へ抜けると動脈が一気に引き伸ばされ、内膜損傷や完全断裂を起こす。前方脱臼は膝関節脱臼のなかでも血管損傷の合併が多い型で、阻血が数時間続けば筋と神経は不可逆的な壊死に陥り、下肢切断に至ることさえある。したがって脱臼を認めたら、まず足背動脈・後脛骨動脈の拍動、皮膚色、皮温、毛細血管再充満時間を健側と比べ、異常があれば肢位を保って固定したうえで直ちに救急搬送する。靱帯の不安定性や神経障害の評価はその後でよく、急性期に不用意なストレステストを行うと血管や神経をさらに損なうおそれがある。なお本問は所見の正誤ではなく「何を先に確認するか」という優先順位を問うている。選択肢1〜3はいずれも所見としては妥当で記録すべきものだが、本問で選ぶ答えではない、という読み方をする。

✓ 4. これが答え(最優先の所見)
末梢側の循環障害
膝窩動脈損傷は時間との勝負で、阻血が続けば肢を失う。拍動の消失・減弱、皮膚の蒼白や冷感、毛細血管再充満の遅延を確認したら、その場で最優先に扱い、固定して速やかに搬送する。拍動が触れても内膜損傷が遅れて血栓化することがあるため、経過の再評価も伝えておく。
✗ 1. 答えではない(所見としては妥当だが優先度が下がる)
膝関節の不安定性
脱臼している時点で複数の靱帯が破綻しており、不安定性があること自体は当然で、緊急の判断材料としての情報量が小さい。加えて徒手でストレスを加える評価は血管・神経をさらに傷める危険があり、急性期の優先度は低い。
✗ 2. 答えではない(所見としては妥当だが優先度が下がる)
足関節の運動障害
総腓骨神経損傷を示す所見で、下垂足として現れる。記録すべき重要な情報だが、神経障害は時間経過のなかで回復の余地があり、数時間で不可逆となる阻血より優先度は下がる。
✗ 3. 答えではない(所見としては妥当だが優先度が下がる)
足背部の感覚障害
同じく腓骨神経領域の障害を示唆する所見。診断上の価値は高いが、これ単独で肢を失うことはない。循環の確認を済ませたうえで、神経所見として併せて記録する。
ポイント
  • 膝窩動脈は内転筋腱裂孔とヒラメ筋腱弓で固定され逃げ場がないため、膝の脱臼で損傷しやすい。
  • 膝関節脱臼、とくに前方脱臼では「まず循環」。足背動脈・後脛骨動脈の拍動、皮膚色、皮温、毛細血管再充満時間を左右で比べる。
  • 優先順位は 循環 > 神経 > 不安定性。時間で不可逆になるものから確認する。
  • 選択肢1〜3の所見はいずれも誤りではない。本問が問うているのは正誤ではなく確認の順序である。
  • 急性期に徒手ストレステストを行わない。血管・神経の二次損傷を招く。
  • 拍動が触れても内膜損傷から遅れて閉塞することがあるため、医療機関での評価を必ず勧める。
比較表
所見示す損傷緊急度
末梢側の循環障害膝窩動脈損傷最優先。数時間の阻血で不可逆、肢の切断につながる
足関節の運動障害(下垂足)総腓骨神経損傷高いが循環に次ぐ。回復の余地がある
足背部の感覚障害腓骨神経領域の知覚障害記録は必須だが単独では肢を失わない
膝関節の不安定性複数靱帯の断裂脱臼なら当然。急性期の徒手評価は避ける
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