学習トップ理由で解く 柔道整復師整形外科学 ▸ §15 部位別各論 体幹 / QJ29P057

理由で解く 柔道整復師

QJ29P057 整形外科学

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問57
問題
側弯症に伴う体幹変形はどれか。
選択肢
1 亀背
2 円背
3 鳩胸
4 肋骨隆起
解答
正解4(肋骨隆起)
解説

側弯症のうち構築性(器質性)側弯は、前額面の側方弯曲に水平面での椎体回旋を伴う三次元的な変形である。この回旋の結果、凸側の肋骨が後方へ押し出されて生じるのが肋骨隆起(rib hump)で、側弯症に特徴的な体幹変形である。一方、疼痛や脚長差による機能性(非構築性)側弯は椎体回旋を伴わないため、肋骨隆起はみられない。

構築性側弯では、椎体は弯曲の凸側へねじれるように回旋し、棘突起は逆に凹側を向く。肋骨は椎骨と肋椎関節・肋横突関節で連結しているため、椎体が回旋すればそのまま肋骨も引き回される。凸側の肋骨後方部は後外側へ押し出されて背部に盛り上がりをつくり、反対に凹側では肋骨が前方へ移動して前胸部が突出する。立位では肩の高さの左右差、肩甲骨の突出、ウエストラインの非対称として現れ、体幹を前屈させると背部の左右差が強調されて肋骨隆起がはっきり見える(前屈テスト)。前屈テストは構築性と機能性の鑑別にも用いられ、構築性側弯では前屈しても弯曲が残って肋骨隆起が明瞭になるのに対し、疼痛性側弯や脚長差・骨盤傾斜による機能性側弯では前屈や臥位で弯曲が消失し、椎体回旋がないため肋骨隆起も現れない。一方、亀背と円背はいずれも矢状面(横から見たときの後弯)に現れる脊柱の変形、鳩胸は脊柱ではなく胸郭前壁そのものの形成異常で、側方から見て前胸部の突出としてとらえる矢状面方向の変形である。いずれも椎体回旋を機序とする側弯症の体幹変形とは成り立ちが異なる。「脊柱の変形か胸郭壁の変形か」「どの面に現れる変形か」の2軸で整理すると迷わない。

✗ 1. 誤り
亀背
脊椎カリエス(結核性脊椎炎)や椎体圧迫骨折などで椎体が楔状につぶれ、限られた高位で鋭角に後方へ突出した角状後弯を指す。横から見て確認する矢状面の変形であり、椎体回旋によって肋骨が押し出される側弯症の変形とは別物である。
✗ 2. 誤り
円背
胸椎の後弯が広い範囲でなだらかに増強した状態で、骨粗鬆症による多発椎体骨折、Scheuermann病、加齢に伴う姿勢変化などでみられる。これも矢状面の変形であり、前額面の弯曲と椎体回旋を本態とする構築性側弯症の所見ではない。
✗ 3. 誤り
鳩胸
胸骨・肋軟骨の過成長により胸骨が前方へ突出する胸郭前壁の形成異常で、漏斗胸と対をなす。横から見て気づく矢状面の変形であり、結合組織疾患などに合併してみられることはあるが、椎体回旋の結果として二次的に生じる変形ではないため、側弯症に伴う体幹変形としては選べない。
✓ 4. 正しい
肋骨隆起
構築性側弯では、椎体が凸側へ回旋することで、それに連結する凸側の肋骨後方部が後外側へ押し出されて背部に盛り上がりをつくる。これが肋骨隆起で、構築性側弯症に特有の体幹変形である。体幹を前屈させると左右差が強調されるため、前屈テストで観察し、必要なら側弯計(スコリオメーター)で傾斜角を測って評価する。前屈で隆起が残れば構築性、弯曲ごと消失すれば機能性と判断でき、学校検診でも側弯のスクリーニングとして用いられる所見である。
ポイント
  • 構築性(器質性)側弯=前額面の側方弯曲+水平面の椎体回旋の三次元変形。回旋があるからこそ肋骨隆起が出る。機能性(非構築性)側弯は回旋を伴わず、肋骨隆起もみられない。
  • 椎体は凸側へ回旋し棘突起は凹側を向く。その結果、凸側の肋骨が後方へ押し出されて肋骨隆起となる。
  • 前屈テストは肋骨隆起を見やすくすると同時に鑑別法でもある。構築性では前屈で弯曲が残り肋骨隆起が明瞭になり、機能性では前屈や臥位で弯曲が消失する。
  • 機能性側弯の背景は疼痛(疼痛性側弯)、脚長差・骨盤傾斜、姿勢など。原因が除かれれば弯曲は改善するので、側弯をみたらまず原因の有無を確認する。
  • 亀背は角状の後弯、円背はなだらかな後弯で、いずれも矢状面に現れる脊柱の変形。鳩胸は脊柱ではなく胸郭前壁の変形で、側方から見てとらえる。「脊柱か胸郭壁か」「どの面に現れるか」で整理すると区別できる。
  • 思春期特発性側弯症は構築性で成長期に進行しうるので、変形に気づいたら経過を追い、装具や手術の適応判断のため整形外科へつなぐ。
比較表
変形変形が現れる面成り立ち代表的な背景
肋骨隆起水平面(椎体回旋が背部の体表に現れたもの/前屈で明瞭)脊柱由来:椎体回旋に伴い凸側の肋骨が後外側へ押し出される構築性側弯症(思春期特発性側弯症など)
(参考)機能性側弯前額面のみ(水平面の回旋なし)脊柱由来:疼痛や脚長差への代償で側方に傾くだけ。前屈・臥位で弯曲が消失し、回旋がないので肋骨隆起は生じない疼痛性側弯、脚長差・骨盤傾斜、姿勢性
亀背矢状面(側面視で限局した鋭角後弯)脊柱由来:椎体が楔状につぶれ、限局した高位で鋭角に後方突出脊椎カリエス、椎体圧迫骨折
円背矢状面(側面視でなだらかな後弯)脊柱由来:胸椎後弯が広範囲になだらかに増強骨粗鬆症性椎体骨折、Scheuermann病、加齢
鳩胸矢状面(前胸部を側方から見る)胸郭壁由来:胸骨・肋軟骨の過成長による胸郭前壁の前方突出で、脊柱そのものの変形ではない胸郭の発育異常、結合組織疾患に合併することがある
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