学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §10 移植 / QJ29P053

理由で解く 柔道整復師

QJ29P053 外科学概論

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問53
問題
移植で使用されない臓器はどれか。
選択肢
1 小腸
2 副腎
3 腎臓
4 肝臓
解答
正解2(副腎)
解説

臓器移植の対象となるのは、心臓・肺・肝臓・腎臓・膵臓・小腸と眼球(角膜)です。副腎はこの中に含まれず、移植は行われません。

ある臓器が移植の対象になるかどうかは、二つの条件で決まります。一つは「その臓器の機能が失われると生命が維持できない、あるいは生活の質が著しく損なわれる」こと、もう一つは「薬などで機能を代替できない」ことです。心臓・肺・肝臓は機能を完全に代替する方法がなく、腎臓は透析という代替手段はあるものの移植で生活の質が大きく改善します。膵臓は重症の糖尿病に対して、小腸は短腸症候群などに対して行われます。角膜移植は歴史も古く件数も多い移植です。これに対し副腎は、失われる機能が主に副腎皮質ホルモン(コルチゾールやアルドステロン)と副腎髄質ホルモンの分泌であり、ヒドロコルチゾンやフルドロコルチゾンといった薬剤で確実に補充できます。免疫抑制薬を生涯にわたって使い、拒絶反応のリスクを負ってまで移植する理由がありません。「薬で代替できるかどうか」——この視点で見ると、副腎だけが他の三つと性格を異にすることがはっきりします。

✓ 2. これが答え
副腎
副腎は移植の対象となる臓器ではありません。副腎不全で不足するのは副腎皮質ホルモンであり、ヒドロコルチゾンやフルドロコルチゾンの内服で生理的な範囲に補充できます。ホルモン補充で日常生活が送れる以上、免疫抑制薬の生涯投与と拒絶反応のリスクを伴う移植を選ぶ理由がありません。副腎不全の患者では、感染や外傷など強いストレスがかかったときにステロイドを増量する(シックデイ対応)といった管理が治療の中心になります。
✗ 1. 答えではない
小腸
小腸は移植の対象となる臓器です。広範囲切除後の短腸症候群などで、静脈栄養に依存せざるを得ず、かつ静脈栄養の合併症(肝障害やカテーテル感染)が問題となる場合に検討されます。ただし小腸は腸内細菌とリンパ組織を多く含むため拒絶反応や感染の管理が難しく、実施件数は他の臓器に比べて少ないのが実情です。
✗ 3. 答えではない
腎臓
腎臓は移植の対象となる臓器で、しかも実施件数が最も多い臓器です。末期腎不全に対しては透析という代替療法がありますが、移植が成功すれば通院や食事制限の負担が軽くなり生活の質が大きく改善します。生体腎移植(血縁者などからの提供)と献腎移植の両方が行われています。
✗ 4. 答えではない
肝臓
肝臓も移植の対象となる臓器です。肝不全や肝硬変、一部の肝癌などが適応となります。肝臓には強い再生能力があるため、生体からドナーの肝臓の一部を切除して移植する生体部分肝移植が可能で、日本ではこの方式が多く行われてきました。人工肝臓による長期の機能代替がまだ確立していない点も、移植が必要とされる理由です。
ポイント
  • 移植の対象となる臓器は心臓・肺・肝臓・腎臓・膵臓・小腸と眼球(角膜)。副腎は含まれない。
  • 移植が選ばれる条件は「機能喪失が生命や生活の質を大きく損なう」かつ「薬などで代替できない」こと。
  • 副腎不全はヒドロコルチゾンなどのホルモン補充で管理できるため、移植の適応にならない。
  • 腎移植は実施件数が最多。肝臓は再生能力を活かした生体部分肝移植が可能。
  • 移植後は拒絶反応を抑えるため免疫抑制薬を継続する必要があり、感染症リスクの管理が欠かせない。
比較表
臓器移植の対象主な適応/代替手段
心臓重症心不全。機能を完全に代替する方法がない
末期呼吸不全
肝臓肝不全・肝硬変。生体部分肝移植も可能
腎臓末期腎不全。透析という代替はあるが QOL が大きく改善
膵臓重症の糖尿病(腎移植との同時が多い)
小腸短腸症候群など。件数は少ない
眼球(角膜)角膜混濁による視力障害
副腎×ホルモン補充(ヒドロコルチゾン等)で代替できる
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