学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §3 外科的感染症 / QJ29P046

理由で解く 柔道整復師

QJ29P046 外科学概論

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問46
問題
外科的感染症で正しいのはどれか。
選択肢
1 ガス壊疽では痛みを伴わない。
2 挫滅創は切創に比べて感染しやすい。
3 抗菌薬を全身投与すれば感染は生じない。
4 破傷風トキソイドの接種歴があれば破傷風に罹患しない。
解答
正解2(挫滅創は切創に比べて感染しやすい。)
解説

創感染が起こるかどうかは「どんな菌がどれだけ入ったか」だけでなく「その創が菌にとって育ちやすい場所か」で決まります。組織が広くつぶれた挫滅創は、鋭利な切創よりはるかに感染しやすい創です。

挫滅創では、押しつぶされた筋・脂肪が失活組織となって残り、そこに血腫が加わって細菌にとって格好の培地ができます。同時に微小血管が破綻するため局所の血流が乏しく、白血球も血流に乗って運ばれる抗菌薬も創の中心まで届きません。血流が乏しければ酸素分圧も下がり、嫌気性菌が増えやすい環境になります。さらに受傷機転の性質上、土砂・衣類片・アスファルトなどの異物を巻き込みやすい点も加わります。一方の切創は刃物などで組織が鋭く切り離されただけなので、創縁の血流が保たれ、生体側の防御と薬剤の両方が届きます。したがって挫滅創では、十分な洗浄と、失活組織を確実に切除するデブリドマンが治療の中心になります。

✓ 2. 正しい
挫滅創は切創に比べて感染しやすい。
挫滅創は失活組織と血腫という培地をもち、微小循環が破綻して白血球も抗菌薬も届きにくく、異物も混入しやすいという条件が重なります。創縁の血流が保たれ組織損傷の少ない切創と比べ、感染率は明らかに高くなります。処置としては、大量の生理食塩水による洗浄、異物除去、失活組織のデブリドマンを行い、汚染が強い場合は一次縫合を避けて開放創とし、遅延一次縫合を検討します。
✗ 1. 誤り
ガス壊疽では痛みを伴わない。
ガス壊疽は逆で、激烈な疼痛が特徴です。クロストリジウム属などの嫌気性菌が産生する毒素で筋組織が急速に壊死し、外から見える創の所見に比べて不釣り合いなほど強い痛みが出ることが、早期に気づくための重要なサインになります。皮下にガスがたまるため触れると握雪感(捻髪音)があり、悪臭のある滲出液を伴います。進行が速いので、疑った時点で緊急の広範なデブリドマンと抗菌薬投与に進みます。
✗ 3. 誤り
抗菌薬を全身投与すれば感染は生じない。
抗菌薬は血流に乗って運ばれるため、血流が届かない場所には作用しません。膿瘍の内腔、壊死組織の内部、異物の表面(バイオフィルム)などは典型的な「薬が届かない場所」です。外科的感染症の原則は感染源の制御(切開排膿、ドレナージ、デブリドマン、異物除去)であり、抗菌薬はこれを支える位置づけになります。膿がたまっていると判断したら、抗菌薬の追加ではなく排膿路の確保を優先します。
✗ 4. 誤り
破傷風トキソイドの接種歴があれば破傷風に罹患しない。
トキソイドで得た抗体価は年月とともに低下するため、過去に接種していても発症しうると考えます。基礎免疫があってもおよそ10年を目安に追加接種(ブースター)が必要とされ、外傷時には接種歴と創の汚染度に応じて、トキソイドの追加接種や、必要な場合は抗破傷風ヒト免疫グロブリンの併用を検討します。深く狭い創、土壌汚染、挫滅、受傷から時間が経った創は破傷風のリスクが高いため、創処置とあわせて接種歴を必ず確認します。
ポイント
  • 感染しやすさは創の性状で決まる。失活組織・血腫・血行障害・異物を伴う挫滅創は、組織損傷が少なく血流の保たれる切創より感染しやすい。
  • ガス壊疽は「見た目に不釣り合いな激痛」+握雪感(皮下気腫)+悪臭ある滲出液。痛みがないどころか、痛みが最初の手がかり。
  • 抗菌薬は血流で運ばれる。膿瘍腔・壊死組織・異物には届かないため、切開排膿とデブリドマンによる感染源の制御が基本。
  • 破傷風トキソイドの抗体価は経年低下する。接種歴があっても、汚染創では追加接種や免疫グロブリンの併用を検討する。
  • 挫滅創の実務手順は「大量洗浄 → 異物除去 → デブリドマン → 汚染が強ければ開放創とし遅延一次縫合」。
比較表
比較項目切創(鋭的損傷)挫滅創(鈍的損傷)
受傷機転刃物・ガラスなどで鋭く切離強い圧迫・轢過などで押しつぶされる
創縁整、直線的不整、挫滅して境界が不明瞭
失活組織ほとんどない多い(細菌の培地になる)
創部の血流保たれる微小循環が破綻し乏しい
白血球・抗菌薬の到達良好不良
異物混入少ない多い(土砂・衣類片など)
感染リスク低い高い
治療の要点洗浄後に一次縫合しやすい洗浄・デブリドマンが必須、開放創+遅延一次縫合も選択
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