学習トップ理由で解く 柔道整復師一般臨床医学 ▸ §21 臨床実地問題 / QJ29P045

理由で解く 柔道整復師

QJ29P045 一般臨床医学

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問45
問題
26歳の女性。3日前から排尿時痛に気づいていたが、悪寒、発熱が出現したため受診した。体温 39.4°Cで右肋骨脊柱角に叩打痛が認められた。血液検査で白血球数増多と CRP 高値が認められ、尿は混濁しており、鏡検で多数の白血球が認められた。考えられるのはどれか。
選択肢
1 胆嚢炎
2 虫垂炎
3 腎盂腎炎
4 慢性糸球体腎炎
解答
正解3(腎盂腎炎)
解説

排尿時痛という下部尿路症状が先行し、そこへ悪寒を伴う 39.4°C の発熱と右肋骨脊柱角(CVA)の叩打痛が加わっています。膀胱から腎盂・腎実質へ感染が上行した急性腎盂腎炎の典型像です。

女性は尿道が短く外尿道口が肛門に近いため、腸内細菌が上行して尿路感染を起こしやすく、起炎菌は大腸菌が最も多くなります。感染が膀胱にとどまる急性膀胱炎では、排尿時痛・頻尿・残尿感は出ても、原則として高熱は出ません。ここに悪寒戦慄を伴う 38℃以上の発熱、血液中の白血球増多と CRP 高値という全身性の炎症反応が加わったら、腎実質まで炎症が及んだ=上部尿路感染と読み替えます。CVA(第 12 肋骨と脊柱がつくる角)の叩打痛は、炎症で腫大した腎の被膜が伸展されていることを示す所見で、片側性に出るのが特徴です。尿の混濁と鏡検での多数の白血球(膿尿)は、感染の場が尿路であることを裏づけます。「3 日前の排尿時痛 → 発熱」という時間経過そのものが、上行性感染の道筋を語っています。急性腎盂腎炎は抗菌薬による治療が必要な病態なので、施術所でこうした所見に出会ったら施術は行わず、その日のうちに医療機関を受診するよう伝えます。

✗ 1. 誤り
胆嚢炎
急性胆嚢炎の痛みは右季肋部で、脂肪食後に増悪し、右季肋部を圧迫しながら深呼吸させると痛みで吸気が止まる Murphy 徴候が特徴です。発熱と炎症反応上昇は共通しますが、排尿時痛や膿尿は説明できず、痛みの部位も右肋骨脊柱角(背側・腎の高さ)とは一致しません。
✗ 2. 誤り
虫垂炎
急性虫垂炎は心窩部・臍周囲の痛みで始まり、数時間から半日ほどで右下腹部(McBurney 点)へ移動するのが典型で、限局した圧痛・反跳痛(Blumberg 徴候)・筋性防御を伴います。本症例は 3 日前からの排尿時痛が先行しており、痛みの部位も腹壁ではなく右背側の肋骨脊柱角です。膿尿が主体の尿所見も虫垂炎では通常みられません。
✓ 3. 正しい
腎盂腎炎
排尿時痛(膀胱炎症状)の先行、悪寒を伴う 39.4°C の発熱、右 CVA 叩打痛、白血球増多と CRP 高値、混濁尿と鏡検での多数の白血球(膿尿)—— 急性腎盂腎炎を構成する所見がすべてそろっています。とくに「膀胱刺激症状+高熱+片側 CVA 叩打痛」の三つ組は、下部尿路感染と上部尿路感染を分ける決め手になります。20 歳代女性という好発年齢である点も合致します。
✗ 4. 誤り
慢性糸球体腎炎
慢性糸球体腎炎は糸球体の慢性炎症で、健診などで見つかる無症候性の血尿・蛋白尿が主体です。細菌感染症ではないため悪寒・高熱や白血球増多・CRP 高値は伴わず、尿所見も膿尿ではなく血尿・蛋白尿(変形赤血球や赤血球円柱)が中心となります。急性発症の発熱と CVA 叩打痛という本症例の経過とは一致しません。
ポイント
  • 膿尿+膀胱刺激症状=尿路感染。そこに 38℃以上の発熱と片側 CVA 叩打痛が加われば上部尿路感染(急性腎盂腎炎)と判断する。
  • 発熱を伴わず排尿時痛・頻尿・残尿感だけなら急性膀胱炎(下部尿路感染)。高熱の有無が上下を分ける最大の分岐点。
  • 女性は尿道が短く肛門に近いため上行性感染を起こしやすく、起炎菌は大腸菌が最多。
  • CVA(肋骨脊柱角)=第 12 肋骨と脊柱がなす角。ここの叩打痛は腎の腫大・被膜伸展を示し、腎盂腎炎では患側に出る。
  • 急性腎盂腎炎は抗菌薬治療を要する。施術所では腰背部痛として訴えられることがあるため、発熱・悪寒・排尿時痛・混濁尿を確認したら施術を控え、当日中の医療機関受診を勧める。
比較表
疾患主な痛みの部位発熱尿所見決め手になる所見
急性膀胱炎下腹部・排尿時痛なし〜微熱膿尿・細菌尿全身症状に乏しい
急性腎盂腎炎(本症例)側腹部・腰背部(患側 CVA)38〜40℃、悪寒戦慄膿尿・細菌尿・白血球円柱膀胱刺激症状の先行+片側 CVA 叩打痛
急性虫垂炎心窩部 → 右下腹部へ移動微熱〜38℃通常は正常McBurney 点の圧痛、反跳痛、筋性防御
急性胆嚢炎右季肋部38℃前後正常Murphy 徴候、脂肪食後の増悪
慢性糸球体腎炎痛みは原則なしなし血尿・蛋白尿(膿尿なし)健診で見つかる無症候性の尿異常
この問題の解説の修正を依頼する

解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。