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理由で解く 柔道整復師

QJ29P035 一般臨床医学

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問35
問題
虫垂炎で正しいのはどれか。
選択肢
1 発熱を認めない。
2 白血球数は正常である。
3 初期に上腹部痛を認める。
4 右季肋部に圧痛を認める。
解答
正解3(初期に上腹部痛を認める。)
解説

虫垂炎の痛みは心窩部〜臍周囲で始まり、数時間から半日かけて右下腹部へ移動する。正しいのは「初期に上腹部痛を認める」である。

虫垂の内腔が糞石やリンパ濾胞の腫大でふさがると、内圧が上がって虫垂壁が伸展する。この段階の痛みは内臓痛で、虫垂からの求心線維が入る髄節(およそT10)に対応して心窩部から臍周囲にぼんやり感じられ、患者自身も指1本で場所を示せない。悪心・嘔吐・食欲低下を伴うのもこの時期である。炎症が虫垂壁を越えて壁側腹膜に及ぶと痛みは体性痛に変わり、右下腹部のMcBurney点付近に限局して圧痛・反跳痛(Blumberg徴候)・筋性防御が現れる。この「痛みの移動」こそが虫垂炎らしさを最も強く支える病歴所見である。炎症を反映して発熱(多くは37℃台)、白血球増多、CRP上昇を伴う。急性腹症を疑ったときは施術や腹部への温罨法・下剤の使用は避け、状態と経過を記録したうえで速やかに医療機関へ紹介する。

✗ 1. 誤り
発熱を認めない。
急性の炎症性疾患であるため、通常は37℃台の微熱を認め、穿孔して腹膜炎に至れば高熱となる。ただし発症ごく初期や高齢者では発熱が目立たないこともあり、「熱がないから虫垂炎ではない」とは判断できない。痛みの移動と右下腹部の圧痛所見を合わせて評価する。
✗ 2. 誤り
白血球数は正常である。
急性炎症を反映して白血球(とくに好中球)が増加し、CRPも上昇する。これらは診断を裏づける補助所見として用いられる。血液検査は医療機関で行われるものであり、柔道整復の現場では痛みの経過と腹部所見から急性腹症を疑って紹介につなげる判断が求められる。
✓ 3. 正しい
初期に上腹部痛を認める。
発症初期の痛みは虫垂壁の伸展による内臓痛で、心窩部から臍周囲に鈍く、場所のはっきりしない痛みとして現れる。その後、炎症が壁側腹膜へ及ぶにつれて右下腹部へ移動し限局する。この移動のパターンを問診で拾えるかどうかが鍵になる。
✗ 4. 誤り
右季肋部に圧痛を認める。
圧痛の中心は右下腹部で、McBurney点(臍と右上前腸骨棘を結ぶ線の外側1/3)やLanz点(左右の上前腸骨棘を結ぶ線の右1/3)が代表的な圧痛点である。右季肋部の圧痛でまず想起するのは胆嚢炎で、吸気時に右季肋部を圧迫すると痛みで息が止まるMurphy徴候が知られる。圧痛の部位で鑑別を切り分ける習慣をつけたい。
ポイント
  • 最大のヒントは痛みの移動:心窩部・臍周囲(内臓痛)→ 右下腹部(体性痛)
  • 内臓痛の時期は場所がぼやける。壁側腹膜に炎症が及んで初めて痛みの場所が定まる
  • 圧痛点はMcBurney点・Lanz点。反跳痛(Blumberg徴候)や筋性防御は腹膜刺激を示す
  • 発熱・白血球増多・CRP上昇を伴うが、初期や高齢者では軽度のこともあり、それだけで否定しない
  • 右季肋部の圧痛+Murphy徴候なら胆嚢炎を考える。部位が鑑別の分かれ目になる
  • 急性腹症を疑ったら施術・腹部の温罨法・下剤の使用は控え、経過を記録して速やかに医療機関へ紹介する
比較表
時期痛みの性質痛みの部位主な所見
発症初期(内臓痛)鈍く、場所をはっきり示せない心窩部〜臍周囲悪心・嘔吐・食欲低下
進行期(体性痛)鋭く限局する右下腹部(McBurney点)圧痛・反跳痛・筋性防御、発熱、白血球増多
穿孔・腹膜炎持続する強い痛み腹部全体へ拡大板状硬、高熱、全身状態の悪化
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