学習トップ理由で解く 柔道整復師リハビリテーション医学 ▸ §2 リハビリテーション医学の対象 / QJ29P013

理由で解く 柔道整復師

QJ29P013 リハビリテーション医学

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午後 問13
問題
脳卒中患者にみられる障害のうち WHO 国際障害分類の能力低下にあたるのはどれか。
選択肢
1 片麻痺
2 失語症
3 書字障害
4 趣味の喪失
解答
正解3(書字障害)
解説

WHO の国際障害分類(ICIDH, 1980)は障害を三つの階層でとらえる。「字を書く」という行為そのものが行えない 3 の書字障害が、個人レベルの能力低下(disability)にあたる。

ICIDH では、病気やけがが臓器・器官レベルの変化として現れるものを機能・形態障害(impairment)、そのために人としての行為が遂行できなくなった状態を能力低下(disability)、さらに社会での役割を果たせなくなった状態を社会的不利(handicap)と呼ぶ。脳卒中でいえば、脳の損傷による片麻痺や失語症という機能障害があり、その結果として字が書けない・歩けないという能力低下が生じ、そこから仕事や趣味を失うという社会的不利へつながる、という一本の流れで並ぶ。迷ったときは「体の部品の故障か(機能・形態障害)/その人が動作を行えるか(能力低下)/社会の中での立場か(社会的不利)」の三段で仕分けると速い。なお1980年のICIDHは2001年にICF(国際生活機能分類)へ改訂され、それぞれ心身機能・身体構造/活動/参加に対応し、そのマイナス面が機能障害/活動制限/参加制約と表現される。

✓ 3. 正しい
書字障害
「字を書く」という個人の行為が遂行できない状態であり、能力低下(ICFでいう活動制限)にあたる。書字ができない原因は上肢の運動麻痺・失行・失書などさまざまだが、分類上は「動作・行為のレベルで困っている」ことが決め手になる。
✗ 1. 誤り
片麻痺
中枢神経の損傷によって運動機能そのものが失われた状態で、機能・形態障害の層に入る。能力低下を引き起こす原因側であって、能力低下そのものではない。
✗ 2. 誤り
失語症
言語という心身機能が損なわれた状態で、機能・形態障害にあたる。「そのために会話が成立しない」という部分は能力低下だが、失語症という症候名自体は機能障害の層に位置づける。
✗ 4. 誤り
趣味の喪失
生活の場や社会的な役割を失った状態で、社会的不利(ICFでいう参加制約)にあたる。個人の動作能力ではなく、その人と社会との関係のレベルの問題である。
ポイント
  • ICIDH(1980, WHO)は 機能・形態障害 → 能力低下 → 社会的不利 の三階層で障害をとらえる。
  • 能力低下=「その人が動作・行為を遂行できない」レベル。書字・歩行・食事・更衣・入浴などが代表。
  • 片麻痺・失語症・関節可動域制限・感覚障害などの症候名は機能・形態障害の層。
  • 趣味・仕事・地域活動の喪失は社会的不利の層。「社会での役割」が判断の目印。
  • ICF(2001)では 心身機能・身体構造/活動/参加 に対応し、マイナス面は機能障害/活動制限/参加制約と呼ぶ。
比較表
ICIDH(1980)の階層とらえる視点脳卒中での例ICF(2001)の対応
機能・形態障害
(impairment)
臓器・器官・心身機能のレベル片麻痺、失語症、感覚障害、嚥下障害心身機能・身体構造/機能障害
能力低下
(disability)
個人が行為を遂行できるかのレベル書字障害、歩行障害、更衣・食事が行えない活動/活動制限
社会的不利
(handicap)
社会での役割・立場のレベル趣味の喪失、失職、地域活動からの離脱参加/参加制約
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