学習トップ理由で解く 柔道整復師必修問題 ▸ §17 肩関節烏口下脱臼の診察および整復 / QJ29A016

理由で解く 柔道整復師

QJ29A016 必修問題

出典:第29回柔道整復師国家試験(2021)午前 問16
問題
肩関節烏口下脱臼の整復直後の確認で誤っているのはどれか。
選択肢
1 運動痛の有無
2 血管損傷の有無
3 神経麻痺の有無
4 弾発性固定の有無
解答
正解1(運動痛の有無)
解説

整復直後に確かめるべきは「整復されたか」と「合併症がないか」の二つ。運動痛の有無は整復の成否を判定する指標にならず、直後に痛みを誘発する運動をさせるのも適切でない。設問が求める誤りは1。

肩関節烏口下脱臼が整復されると、弾発性固定(バネ様固定)が消え、肩峰下の空虚(陥凹)が消失し、上腕軸が正常に戻って肘が体側につくようになる。脱臼時に骨頭で埋められて消失していた前方の三角筋胸筋三角(モーレンハイム窩)も、整復されれば元のくぼみに戻る。これらを視診と触診で順に確かめて整復完了を判断する。合併症では腋窩神経麻痺(肩外側の知覚低下、三角筋の収縮不良)と腋窩動脈損傷(橈骨動脈拍動の減弱、手指の蒼白・冷感・しびれ)が代表で、整復前と整復後の両方で確認して記録に残すことが重要である。確認が済んだらただちに上腕内転・内旋位で固定に移り、運動痛や可動域の評価は固定期間が終わってから段階的に行う。整復直後に無理な運動を加えると、再脱臼や関節唇・関節包の損傷の悪化を招くため避ける。

✓ 1. これが誤り(正解)
運動痛の有無
運動痛は脱臼が整復されていても残るため、整復の成否を判定する指標にならない。しかも整復直後は関節包・関節唇・靱帯が傷んでおり、痛みを誘発する自動・他動運動は再脱臼や損傷悪化のもとになる。直後は固定を優先し、運動時の痛みは固定解除後の経過観察の中で評価する。
✗ 2. 必要な確認(設問の答えではない)
血管損傷の有無
腋窩動脈は脱臼した骨頭に圧迫・牽引されうる位置にある。橈骨動脈の拍動、手指の色調・温度・毛細血管再充満を整復前後で比較し、異常があれば直ちに医師へつなぐ。
✗ 3. 必要な確認(設問の答えではない)
神経麻痺の有無
烏口下脱臼で最も多い合併症が腋窩神経麻痺である。肩外側(三角筋部)の知覚と三角筋の収縮を整復前後の両方で確かめ、記録しておくことで、麻痺が整復操作によるものかどうかの判断にもつながる。
✗ 4. 必要な確認(設問の答えではない)
弾発性固定の有無
脱臼に特有の所見で、整復されれば消失する。弾発性固定が消え、肩峰下の空虚(陥凹)がなくなり、肘が体側につくことをもって整復完了と判断する、最も直接的な指標である。
ポイント
  • 整復直後の確認は(1)整復されたかの確認(2)合併症の確認の2本立て。
  • 整復完了のサイン:弾発性固定の消失肩峰下の空虚(陥凹)の消失、上腕軸の正常化、肘が体側につく(内転可能)。
  • 脱臼時の変形は「肩峰が角状に突出し、その下が空虚(三角筋部の膨隆消失)」+「前方では三角筋胸筋三角(モーレンハイム窩)が骨頭に埋まって消失」。肩峰下の空虚と前方のモーレンハイム窩は別部位で、整復されればいずれも元に戻る。
  • 合併症チェック:腋窩神経麻痺(肩外側の知覚・三角筋の収縮)と腋窩動脈損傷(橈骨動脈拍動、手指の色・温度)。整復前後の両方で確認し記録する。
  • 運動痛は整復されていても残るため成否の判定に使えない。直後は上腕内転・内旋位で固定し、運動・可動域の評価は固定解除後に段階的に行う。
  • 整復後は原則として画像診断で整復位と骨折の有無を確認する流れにつなげる。
比較表
項目整復直後に確認後日・固定解除後に評価
弾発性固定の消失○(整復完了の指標)
肩峰下の陥凹・上腕軸○(視診・触診)
腋窩神経(知覚・三角筋)○(前後で比較)○(回復の経過)
末梢循環(橈骨動脈拍動など)○(前後で比較)
運動痛・可動域×(誘発しない)○(段階的に)
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