学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ28P119

理由で解く 柔道整復師

QJ28P119 柔道整復理論

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午後 問119
問題
20歳の男性。剣道部に所属している。半年前から竹刀を振る際に右手関節の違和感を自覚していた。その後、徐々に疼痛が出現したため来所した。手関節背側に腫脹と圧痛および可動域制限と握力低下がみられた。手指の運動痛はない。写真(別冊 No. 9)に圧痛部位を示す。考えられるのはどれか。
図
選択肢
1 月状骨軟化症
2 月状骨脱臼
3 尺骨茎状突起骨折
4 長母指伸筋腱腱鞘炎
解答
正解1(月状骨軟化症)
解説

竹刀の素振りという反復性の軽微な外力で、半年かけて徐々に進行した手関節背側中央の痛み・腫脹・握力低下。月状骨軟化症(キーンベック病)の典型像である。

月状骨は近位手根骨列の中央、橈骨と有頭骨に挟まれた位置にあり、手関節に加わる荷重が集中する。表面の大部分が関節軟骨で覆われているため栄養血管の入口は掌側・背側のわずかな部分に限られ、繰り返す圧迫や微小外傷で血行が障害されると阻血性壊死に陥る。20〜30代の手を酷使する男性に多く、剣道の素振りのように手関節に衝撃と背屈が繰り返し加わる動作は典型的な背景になる。経過は緩徐で、初めは「違和感」程度にとどまり、進行につれて手関節背側中央の腫脹と圧痛、背屈制限、握力低下が明らかになる。手指そのものには病変がないので手指の運動痛がない——この一点が腱由来の疾患を遠ざける決め手になる。圧痛点は手関節背側の中央、橈骨遠位端のすぐ遠位で、第3中手骨の延長線上に押し込むと再現される。単純エックス線で早期には変化が乏しく、MRIで初めて血行障害がとらえられることがあるため、疑ったら画像評価のため医師の診察につなぎ、それまでは手関節への衝撃動作を減らすよう具体的に助言する。

✓ 1. 最も考えられる
月状骨軟化症
反復する軽微な外力、緩徐な発症、手関節背側中央の腫脹・圧痛、可動域制限と握力低下、手指の運動痛なし——キーンベック病の像がそろっている。写真の圧痛部位が手関節背側中央(第3中手骨の延長線上)に一致するかを触診で確かめる。
✗ 2. 考えにくい
月状骨脱臼
月状骨脱臼は、手をついて手関節が強く過伸展されるといった明らかな一回の外傷で急激に発症する。月状骨が掌側へ転位して手関節掌側が膨隆し、手根管を通る正中神経が圧迫されて母指から環指橈側にしびれが出ることが多い。半年かけて徐々に進むという経過と合わない。
✗ 3. 考えにくい
尺骨茎状突起骨折
これも外傷性で、橈骨遠位端骨折に伴うことが多い。圧痛は手関節の尺側、尺骨茎状突起部に限局し、背側中央ではない。半年かけて進行する慢性経過とは合致しない。
✗ 4. 考えにくい
長母指伸筋腱腱鞘炎
長母指伸筋腱は橈骨背側のリスター結節を滑車のように回り込むため同部で摩擦を受け、腱鞘炎を起こすと母指の自動伸展で痛みが出て、軋轢音を触れることがある。本例は「手指の運動痛はない」と明記されており、腱由来の病態は考えにくい。
ポイント
  • 月状骨軟化症(キーンベック病)=月状骨の阻血性壊死。20〜30代の手を酷使する男性に多い。
  • 反復する軽微な外力が背景。剣道の素振り、大工仕事、削岩機など手関節に衝撃が繰り返し加わる動作。
  • 圧痛点は手関節背側の中央(第3中手骨の延長線上、橈骨遠位端のすぐ遠位)。腫脹・背屈制限・握力低下を伴う。
  • 手指の運動痛がないことが、腱鞘炎など腱由来の疾患を遠ざける手がかりになる。
  • 早期は単純エックス線で変化が乏しい。疑った時点で医師へつなぎ、それまでは手関節への衝撃動作を減らすよう具体的に助言する。
比較表
疾患発症様式圧痛部位特徴的所見
月状骨軟化症緩徐・反復外力手関節背側中央背屈制限、握力低下、手指運動痛なし
月状骨脱臼急性・過伸展強制手関節掌側の膨隆部正中神経症状(母指〜環指橈側のしびれ)
尺骨茎状突起骨折急性・外傷手関節尺側橈骨遠位端骨折に合併しやすい
長母指伸筋腱腱鞘炎緩徐・使いすぎリスター結節周囲母指の自動伸展で疼痛、軋轢音
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