学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ28P118

理由で解く 柔道整復師

QJ28P118 柔道整復理論

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午後 問118
問題
20歳の男性。自転車のタイヤ交換のためレバーを強く握った際、左示指MP関節部に突然の痛みを自覚した。以降、MP 関節の完全伸展が不能となり来所した。初検時、関節部に軽度の腫脹と中手骨頭橈側に圧痛を認めた。示指MP 関節は ー30度まで伸展は可能であるが、それ以上の他動的伸展は不能であった。外観写真(別冊 No.8)を別に示す。他指の関節運動は正常である。最も考えられるのはどれか。
図
選択肢
1 示指基節骨が背側に転位している。
2 MP 関節内に掌側板が嵌入している。
3 橈側側副靱帯が中手骨頭に乗りあげている。
4 指伸筋腱が橈側に脱臼している。
解答
正解3(橈側側副靱帯が中手骨頭に乗りあげている。)
解説

別冊No.8の外観写真では、他指がほぼ伸展しているのに示指だけがMP関節で軽度屈曲位にとどまり、脱臼に特徴的な著明な変形や過伸展位はみられない。この所見と、伸展の途中(−30度)で他動的にも動かなくなること、中手骨頭橈側の圧痛から、橈側側副靱帯が中手骨頭橈側の骨隆起に乗りあげて嵌頓した示指MP関節のロッキングが最も考えられる。

MP関節のロッキングは示指に最も多く、中手骨頭の橈側に骨性の隆起や骨棘があると、強く握る動作をきっかけに橈側側副靱帯(あるいは掌側板の副靱帯線維)がその隆起を乗り越えて引っかかり、元に戻れなくなって起こる。所見の特徴は、腫脹や変形が軽度であるのに、ある角度から先へ他動的にも伸展できないこと、そして中手骨頭橈側に限局した圧痛があることで、本例の記載と外観写真の見え方はいずれもこれに合致する。脱臼であれば著明な変形と弾発性固定が前面に出るため、この区別が診断の分かれ目になる。対応としては、まずMP関節をいったん屈曲させて軽く牽引しながら中手骨頭に対する基節骨の位置をずらし、乗りあげを解除する徒手整復を試みる。局所麻酔下でないと筋緊張で解除できないこともあり、徒手で戻らない場合は無理に反復せず、観血的整復も含めた判断のため医師へ紹介する。

✓ 3. 正しい
橈側側副靱帯が中手骨頭に乗りあげている。
中手骨頭橈側の骨隆起に橈側側副靱帯が引っかかって嵌頓した状態で、示指MP関節ロッキングの典型的な病態である。同部の限局性圧痛と、外観写真のとおり軽度の腫脹・軽度屈曲位にとどまる外見であるにもかかわらず一定角度から先の他動伸展が不能という所見が合致する。
✗ 1. 誤り
示指基節骨が背側に転位している。
MP関節背側脱臼であれば、基節骨が中手骨頭の背側に乗り上げて指が過伸展位をとる著明な変形と、弾発性固定を認める。写真では:示指は軽度屈曲位にとどまり、過伸展位の変形も段差もみられない。−30度までは伸展できることとも合わない。
✗ 2. 誤り
MP 関節内に掌側板が嵌入している。
掌側板が関節内へ嵌入するのは複雑性(垂直性)MP関節脱臼の病態で、徒手整復が不能となり観血療法を要する。あくまで脱臼が前提であり、外観写真にも本文にも脱臼を示す変形・弾発性固定・掌側の皮膚陥凹といった所見がない。
✗ 4. 誤り
指伸筋腱が橈側に脱臼している。
MP関節での指伸筋腱脱臼は、橈側の矢状索が損傷して腱が中手骨頭間の尺側へ落ち込むのが典型で、方向が逆である。また腱脱臼では自動伸展が困難でも他動伸展は可能であり、他動的にも伸展できない本例の所見と合わない。
ポイント
  • MP関節ロッキングは示指に多い。中手骨頭橈側の骨隆起に橈側側副靱帯が乗りあげて嵌頓する。
  • 特徴は「変形・腫脹は軽度なのに、ある角度から先は他動的にも伸展できない」こと。外観写真でも軽度屈曲位にとどまるだけで著明な変形はない。
  • 中手骨頭橈側の限局性圧痛が診断の手がかり。強く握る動作が誘因になる。
  • 脱臼との鑑別は変形と弾発性固定の有無。指伸筋腱脱臼は尺側へずれ、他動伸展は可能。
  • MP屈曲+軽い牽引で乗りあげの解除を試み、徒手で戻らなければ無理に反復せず医師へ紹介する。
比較表
病態外観・変形自動伸展他動伸展圧痛部位
MP関節ロッキング(本例)軽度腫脹と軽度屈曲位のみ途中まで可途中から不能中手骨頭橈側
MP関節背側脱臼著明な変形・過伸展位不能弾発性固定関節全体
複雑性(垂直性)MP脱臼変形は軽度に見えることも不能整復不能掌側の皮膚陥凹を伴う
指伸筋腱脱臼(尺側へ)屈曲時に腱の逸脱困難可能MP背側・矢状索
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