学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ28P117

理由で解く 柔道整復師

QJ28P117 柔道整復理論

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午後 問117
問題
25歳の男性。草野球の試合中にボールが右示指の指尖に当たり、PIP関節が過伸展強制され受傷した。PIP 関節部の自発痛と腫脹が著明である。 PIP 関節の運動は不能であるが、DIP 関節の屈曲は可能である。受傷時の単純エックス線写真を示す。正しいのはどれか。
図
選択肢
1 掌側板の損傷を伴っている。
2 ボタン穴変形の危険性がある。
3 深指屈筋腱の断裂がある。
4 PIP関節伸展位での固定が必要である。
解答
正解1(掌側板の損傷を伴っている。)
解説

PIP関節の過伸展強制で受傷。この機転では掌側板が必ず傷んでいる。DIP関節が屈曲できることは、深指屈筋腱が切れていない証拠になる。

掌側板はPIP関節の掌側にある線維軟骨性の板で、中節骨基部の掌側に強く付着し、関節が過伸展するのを止める最後のストッパーとして働く。指尖にボールが当たってPIP関節が限界を超えて反らされると、まず掌側板が中節骨基部の付着部から剥がれ(しばしば小さな裂離骨片を伴う)、その先で中節骨が背側へ転位して背側脱臼となる。したがって「PIP関節の過伸展強制」と書かれた時点で、掌側板損傷は避けて通れない。整復後の固定はPIP関節を軽度屈曲位(およそ20〜30度)に保つ。剥がれた掌側板を緩めて治癒しやすくし、背側への再転位も防げるからである。その後は伸展を制限する装具を用いながら早期に自動屈伸を始め、指全体の腫脹と拘縮を防ぐ。掌側板の治癒が不十分だと過伸展変形(スワンネック変形)が残るため、経過中は他動的な過伸展の有無を確認する。

✓ 1. 正しい
掌側板の損傷を伴っている。
掌側板はPIP関節の過伸展を止める構造であり、過伸展が強制されればまずここが破綻する。中節骨基部掌側の裂離骨片として画像に写ることも多い。整復後に軽度屈曲位で固定するのは、この掌側板を治すためである。
✗ 2. 誤り
ボタン穴変形の危険性がある。
ボタン穴(ボタンホール)変形は、PIP関節背側を通る中央索が切れ、側索が掌側へ滑り落ちてPIP屈曲・DIP過伸展位に固まる変形で、原因はPIP関節の屈曲強制や掌側脱臼、背側の直達外力である。本例は背側ではなく掌側の構造が壊れる機転なので、警戒すべきは逆に過伸展変形(スワンネック変形)と屈曲拘縮のほうになる。
✗ 3. 誤り
深指屈筋腱の断裂がある。
深指屈筋は末節骨底に停止してDIP関節を屈曲させる。本例はDIP関節の屈曲が可能と記載されており、これは深指屈筋腱の連続性が保たれていることを示す。逆に、DIP関節だけが自動屈曲できない場合は深指屈筋腱の断裂(ジャージーフィンガー)を疑う。
✗ 4. 誤り
PIP関節伸展位での固定が必要である。
伸展位で固定すると、剥がれた掌側板に緊張がかかり続けて治癒が妨げられ、中節骨が背側へ再転位しやすくなる。固定は軽度屈曲位(およそ20〜30度)とし、その後は伸展制限装具を使いながら早期に自動運動を開始して拘縮を防ぐ。
ポイント
  • PIP関節の過伸展強制=掌側板損傷。背側脱臼(骨折)ではこれが必発と考える。
  • 固定肢位はPIP関節の軽度屈曲位(およそ20〜30度)。伸展位固定は掌側板の治癒を妨げ再転位を招く。
  • DIP関節の自動屈曲が可能=深指屈筋腱は連続している。腱断裂の否定に使える所見。
  • ボタン穴変形は中央索の断裂(屈曲強制・掌側脱臼)で起こる。過伸展強制で警戒するのはスワンネック変形。
  • PIP関節は拘縮しやすい関節。固定期間を最小限にし、伸展制限装具を用いて早期に自動運動を開始する。
比較表
項目PIP関節背側脱臼PIP関節掌側脱臼
受傷機転過伸展強制屈曲強制・回旋を伴う外力
主な損傷部位掌側板(中節骨基部掌側の裂離を伴うことがある)中央索(伸筋腱中央部)
残りやすい変形スワンネック変形(PIP過伸展)ボタン穴変形(PIP屈曲・DIP過伸展)
固定肢位PIP軽度屈曲位PIP伸展位
この問題の解説の修正を依頼する

解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。