学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ28P112

理由で解く 柔道整復師

QJ28P112 柔道整復理論

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午後 問112
問題
30歳の男性。屋根の修理中バランスを崩し、落下した際に踵を強打し負傷した。腫脹は踵骨部に強く、足関節まで波及している。限局性圧痛も著明である。また疼痛のため、患側肢で立つことは出来ないが、足関節の屈伸運動は可能である。続発症として起こりにくいのはどれか。
選択肢
1 慢性浮腫
2 ズデック(Sudeck)骨萎縮
3 無腐性骨壊死
4 腓骨筋腱鞘炎
解答
正解3(無腐性骨壊死)
解説

高所から落下して踵を強打し、踵骨部に強い腫脹と限局性圧痛、荷重不能だが足関節の屈伸は可能——踵骨骨折の典型像である。踵骨は血行に富む海綿骨のかたまりなので、無腐性骨壊死は起こりにくい。

この設問は「起こりにくいものはどれか」を選ぶ形式なので、正答の3以外はすべて実際に起こりやすい続発症である。踵骨骨折は屋根や脚立からの転落で踵に軸圧が加わって生じ、腫脹は踵から足関節周囲まで広く波及し、皮下出血斑が足底へ回り込むこともある。足関節(距腿関節)そのものは壊れていないため底背屈は可能で、この所見が足関節骨折との区別に役立つ。壊死が問題になるのは、表面の大部分が関節軟骨に覆われて栄養血管の入る面積が小さく、しかも血流が末梢から中枢へ逆行性に入る骨——距骨、大腿骨頭、手の舟状骨、月状骨などである。踵骨はこれと対照的に、周囲の広い非関節面から多数の栄養血管が入る海綿骨で、骨折しても骨片が阻血に陥りにくい。踵骨骨折で実際に長く患者を困らせるのは、遷延する腫脹、足部のこわばり、外側壁の膨隆による腓骨筋腱の障害、そして踵部の幅が増し扁平足化することによる靴の不適合である。だからこそ受傷直後から挙上と足趾の自動運動を続け、痛みを我慢させたまま不動を長引かせない方針が要る。

✓ 3. 起こりにくい(これが答え)
無腐性骨壊死
踵骨は海綿骨に富み、広い非関節面から多数の栄養血管が入るため、骨折しても骨片への血行が絶たれにくい。無腐性壊死を警戒するのは距骨・大腿骨頭・手の舟状骨・月状骨など、関節軟骨に覆われて血管の入口が限られる骨のほうである。
✗ 1. 起こりやすい(答えではない)
慢性浮腫
受傷時の強い腫脹に加え、荷重再開の遅れと足関節の運動不足が重なると、静脈・リンパの還流が滞って浮腫が慢性化する。受傷直後からの挙上、足趾の自動運動、可能な範囲での足関節底背屈が予防になる。
✗ 2. 起こりやすい(答えではない)
ズデック(Sudeck)骨萎縮
強い疼痛と腫脹、長期の不動が続くと、皮膚の色調変化や発汗異常、灼けるような痛み、まだらな骨萎縮を伴う複合性局所疼痛症候群へ移行することがある。踵骨骨折は下肢での代表的な発生母地。疼痛管理を丁寧に行い、固定していない関節は動かし続けることが予防につながる。
✗ 4. 起こりやすい(答えではない)
腓骨筋腱鞘炎
踵骨体部が圧潰すると外側壁が外方へ膨隆する。その直上を長・短腓骨筋腱が走っているため、外果との間で腱が挟み込まれ、腱鞘炎や腱のインピンジメントを生じる。外果後下方の痛みと、足の外がえし抵抗運動での疼痛が手がかりになる。
ポイント
  • 踵骨骨折は高所からの落下による軸圧が典型。同じ外力による脊椎圧迫骨折や反対側の下肢損傷の合併を必ず確認する。
  • 荷重不能でも足関節の底背屈が可能なら、距腿関節そのものは保たれている=踵骨部の損傷を示唆する。
  • 踵骨は血行が豊富な海綿骨で無腐性壊死は起こりにくい。壊死を警戒するのは距骨・大腿骨頭・手舟状骨・月状骨。
  • 実際に多い続発症は、慢性浮腫、ズデック骨萎縮、腓骨筋腱鞘炎、踵部の幅増大・扁平足化による靴の不適合、距骨下関節の可動域制限。
  • 予防の柱は、早期からの挙上と足趾・足関節の自動運動、痛みを放置しない疼痛管理、段階的な荷重再開。
比較表
無腐性壊死のリスク理由
踵骨低い広い非関節面から多数の栄養血管が入る海綿骨
距骨(体部)高い表面の大半が関節軟骨、血流が逆行性で骨折により遮断される
手の舟状骨(近位骨片)高い栄養血管が遠位から入るため近位骨片が阻血になる
月状骨高い関節軟骨に覆われ血管の入口が限られる(キーンベック病)
大腿骨頭高い頸部を回る血管が骨折で断たれる
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