学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ28P111

理由で解く 柔道整復師

QJ28P111 柔道整復理論

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午後 問111
問題
20歳の男性。サッカーで相手選手と接触し、地面に左手の手掌を強く衝き、手関節部に強い疼痛を感じた。当日は自分で患部を冷やし、テーピングで固定した。1週経過しても症状が改善されなかったので来所した。初検時、手関節部の腫脹は著明で、背屈制限、母指および示指からの軸圧痛、スナッフボックス部の圧痛が認められた。専門医の診断を仰いだところ、骨折と診断された。単純エックス線写真(別冊 No. 3)を示す。この骨折の特徴で正しいのはどれか。2つ選べ。
図
選択肢
1 受傷直後のエックス線像で骨折を確認できないことがある。
2 手関節部の変形が著明である。
3 固定期間は比較的短期間である。
4 骨癒合が遷延しやすい。
解答
正解1(受傷直後のエックス線像で骨折を確認できないことがある。)、4(骨癒合が遷延しやすい。)
解説

手掌を衝いた後にスナッフボックスの圧痛と母指・示指からの軸圧痛がそろえば、手の舟状骨骨折。その特徴として正しいのは1と4の2つ。

舟状骨骨折を難しくしている要因は2つある。1つは「見つけにくさ」。手根骨列の中にあるため外観上の変形が現れず、受傷直後のエックス線写真では骨折線が写らないことがあるため、捻挫として扱われ本例のように1週後に来所する例が後を絶たない。もう1つは「治りにくさ」。舟状骨は表面の大半が関節軟骨に覆われ、栄養血管は主に遠位(結節部側)から入って近位へ向かうため、腰部より近位の骨折では近位骨片の血行が断たれ、遷延治癒・偽関節・阻血性壊死に至りやすい。実務上は、スナッフボックス圧痛や軸圧痛があれば骨折がないと言い切らず、母指を含めた固定を行ったうえで医師の画像評価につなぎ、初回で写らなくても後日の再撮影を勧めるという流れが安全である。

✓ 1. 正しい
受傷直後のエックス線像で骨折を確認できないことがある。
骨片の転位が小さいと初回の撮影では骨折線が判別できないことがある。数日から2週ほど経つと骨折部の吸収により骨折線が明瞭になるため、所見が疑わしければ固定を続けたうえで再撮影を依頼する。
✗ 2. 誤り
手関節部の変形が著明である。
舟状骨は手根骨列の中にあるため、骨折しても外観上の変形は生じない。本例のように腫脹が著明であっても変形は伴わないのがこの骨折の特徴で、裏を返せば「変形がないから骨折ではない」と判断できないところが落とし穴になる。橈骨遠位端部骨折のようなフォーク状変形と対比して覚えたい。
✗ 3. 誤り
固定期間は比較的短期間である。
血行に乏しく癒合しにくいため、固定は長期に及ぶ。血行の良い結節部でもおおむね6週前後、腰部から近位部ではさらに長期を要し、母指を含めた固定を継続する必要がある。
✓ 4. 正しい
骨癒合が遷延しやすい。
栄養血管が遠位から近位へ入るという血行の向きが理由。骨折線が近位にあるほど近位骨片が阻血に陥り、遷延治癒・偽関節・阻血性壊死のリスクが高まる。発見の遅れはこのリスクをさらに上げる。
ポイント
  • 手掌を衝いた+スナッフボックスの圧痛+母指・示指からの軸圧痛=舟状骨骨折を疑う。
  • 手根骨列の中にあるため腫脹の程度によらず外観上の変形は出ない。だから捻挫と誤られやすいのが最大の注意点。
  • 栄養血管は遠位から近位へ入る。だから近位ほど阻血性壊死・偽関節になりやすい。
  • 初回のエックス線で写らないことがある。固定を続けて後日の再撮影につなぐ。
  • 固定は母指を含めて長期に。骨折部位によって必要期間が大きく変わる。
比較表
骨折部位血行骨癒合固定期間の目安
結節部(遠位)栄養血管の入口側で良好比較的良好おおむね6週前後
腰部(中央)近位側の血行が乏しくなる遷延しやすい8〜12週程度
近位部血行に乏しい偽関節・阻血性壊死のリスクが高いさらに長期。手術が選択されることも
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