学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §24 臨床実地問題 / QJ28P109

理由で解く 柔道整復師

QJ28P109 柔道整復理論

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午後 問109
問題
2歳の男児。公園の滑り台から転落し肩部を衝いたため来所した。患側の肩は下垂し、上肢は挙上不能。両腋窩を持って抱き上げたところ号泣した。最も考えられるのはどれか。
選択肢
1 上腕骨顆上骨折
2 肘内障
3 鎖骨骨折
4 橈骨遠位端部骨折
解答
正解3(鎖骨骨折)
解説

2歳児が滑り台から転落して肩部を衝き、患側の肩が下がり上肢を挙げられない。両腋窩を持って抱き上げると号泣する——小児の鎖骨骨折を強く示唆する所見で、正解は3

小児の鎖骨骨折は、転倒・転落で肩を衝いた際の介達外力で生じる、小児に多い骨折の代表である。骨折すると近位骨片は胸鎖乳突筋に引かれて上方へ、遠位骨片は上肢の重みと大胸筋・小胸筋の牽引によって前下方(内下方)へ転位するため、患側の肩が落ち、頭を患側に傾けて顔を健側に向ける特有の姿勢をとる。なお僧帽筋(上部線維)は鎖骨外側1/3に付着して肩甲帯を挙上する側に働く筋であり、遠位骨片を下げる力ではなく、むしろ下方転位に抗する側に位置づけられる。乳幼児は痛みの場所を言えないが、両腋窩を持って抱き上げると鎖骨に体重が伝わって強く痛むため泣き出す。この「抱き上げると泣く」という反応が、部位を訴えられない年齢での有力な手がかりになる。若木骨折のことも多く、腫脹・変形が目立たない例もあるので、鎖骨に沿って左右差を比べながら愛護的に触診し、限局性の圧痛と軋轢音の有無を確認する。

✗ 1. 誤り
上腕骨顆上骨折
肘関節伸展位で手を衝いて生じる骨折で、腫脹・変形・圧痛は肘部に出る。本例は肩部を衝いた受傷で所見も肩に集中しており合わない。なお顆上骨折を疑う場合は、神経麻痺と前腕のコンパートメント症候群を念頭に、末梢の循環と手指の動きを確認して速やかに医師へつなぐ。
✗ 2. 誤り
肘内障
上肢を使わなくなる点は似ているが、肘内障は前腕回内位で手を急に引かれることで橈骨頭が輪状靱帯から亜脱臼するもので、転落して肩を衝く機序とは異なる。肢位も肘軽度屈曲・前腕回内での下垂が典型で、腫脹はほとんどみられない。
✓ 3. 正しい
鎖骨骨折
肩を衝いた介達外力、患側肩の下垂、上肢挙上不能、そして腋窩から抱き上げたときの号泣がそろっており、小児鎖骨骨折として矛盾がない。固定は8字帯やクラビクルバンドなどで肩を後方に引き、皮膚障害や上肢の循環を毎回確認しながら管理する。
✗ 4. 誤り
橈骨遠位端部骨折
手を衝いて生じ、腫脹・変形・圧痛は手関節部に限局する。肩が下垂して上肢全体を挙げられないという本例の所見とは部位が一致しない。
ポイント
  • 小児に多い骨折の代表=鎖骨骨折。転倒・転落で肩を衝く介達外力が典型。
  • 転位は近位骨片=胸鎖乳突筋で上方へ/遠位骨片=上肢の重みと大胸筋・小胸筋の牽引で前下方へ。僧帽筋上部線維は鎖骨外側部を挙上する側に働く。
  • 特徴的な姿勢は患側肩の下垂+頭を患側に傾け顔は健側へ(胸鎖乳突筋の牽引を軽くする肢位)。
  • 言葉で訴えられない乳幼児では、両腋窩を持って抱き上げると泣くことが有力な手がかり。
  • 小児は若木骨折が多く変形が目立たないことがある。左右差を比べる触診で限局性圧痛を拾う。
  • 鑑別は受傷機転と圧痛部位で切る——肩=鎖骨、肘=顆上骨折・肘内障、手関節=橈骨遠位端部。
比較表
疾患典型的な受傷機転肢位・外観決め手になる所見
鎖骨骨折転倒・転落で肩を衝く患側肩が下がる/頭は患側に傾き顔は健側鎖骨部の限局性圧痛、腋窩から抱き上げると号泣
上腕骨顆上骨折肘伸展位で手を衝く肘部の高度な腫脹・変形肘部の圧痛、神経・血行障害の合併に注意
肘内障前腕回内位で手を引かれる肘軽度屈曲・前腕回内で上肢を下垂腫脹なし、橈骨頭部の痛み、上肢を使わない
橈骨遠位端部骨折手を衝く手関節部の腫脹・変形手関節部に限局した圧痛
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